既存住宅流通、ストック対策が進む!? 2017年度の動きを探る

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首都圏の契約数は中古マンションが新築マンションを上回った


既存住宅流通市場の整備、拡大が大きな課題とされる中で、2016年は一つのエポックを画する年になったのかもしれない。既にいくつかのメディアで取り上げられているため目にした人も多いだろうが、首都圏において中古マンション契約戸数(東日本不動産流通機構調べ)が、新築マンション新規販売戸数(不動産経済研究所調べ)を上回ったとする結果だ。

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における新築マンション新規販売戸数は、直近のピークだった2000年に9万5千戸を超えていた。同年の中古マンション契約戸数は2万5千戸あまりに過ぎず、4倍近くの差があったのだ。マンション市場では、新築が圧倒的なシェアを誇っていたのである。

ところが2016年は新築が前年比11.6%減の35,772戸にとどまり、中古は同6.9%増の37,189戸だった。その結果、比較可能な1996年以降で初めて逆転したのである。近年は価格の高騰などもあり、マンションデベロッパー各社が販売数を絞り込んだことで2016年の新築販売戸数は24年ぶりの低水準だった。実売戸数はもう少し少なくなることにも注意が必要だろう。

その一方で、中古マンション契約戸数は年々伸び続けているが、あくまでも不動産会社からの「成約報告」に基づくものであることに留意しておきたい。成約後の報告義務が十分に履行されているとは言い難い状況であり、実際の成約戸数はさらに多いことが予想される。また、統計上で示される中古マンションの成約戸数の伸びは「成約報告率の向上」の要因もあるため、必ずしも「既存住宅市場が伸びている」とは言えないのだ。

したがって、「史上初の逆転」を額面通りに受け止めることはできない側面(主要因は新築マンションの減少であること、実数では2009年頃に逆転していた可能性も高いことなど)があるものの、住宅市場のあり方が大きく変わりつつあることは確かだろう。この流れをしっかりと根付かせるためには、これから先どのような施策がとられるのかも大きく影響する。

そこで2017年度に実施される既存住宅が対象の制度、措置などについて主なものをまとめておくことにしよう。


新築マンション新規発売戸数は株式会社不動産経済研究所、中古マンション成約戸数は公益財団法人東日本不動産流通機構による



「長期優良住宅化リフォーム減税」制度を創設


2017年度の税制改正で注目されるのは「長期優良住宅化リフォーム減税」の創設だ。

既存住宅をリフォームした場合における長期優良住宅の認定基準が2016年2月に制定され、2016年度に実施された「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、2017年度も引き続き行われる(一部要件の見直しあり)。だが、この事業はあらかじめ採択された事業者、または事業単位で個別に申請をした事業者に対して一定額の補助をする(事業者から購入者などへ還元される)ものだ。

それに対して、新たに創設される「長期優良住宅化リフォーム減税」は個人が対象となり、住宅ローン(返済期間5年以上)を利用する場合は最大62万5千円、住宅ローンを利用しない場合(現金購入など)は最大50万円の所得税控除を受けることができる。また、固定資産税についても工事翌年の税額が3分の2減額される。従来からある耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修、三世代同居改修における減税制度に「長期優良住宅化リフォーム」が加わったと考えればよいだろう。

ただし、減税を受けるためには「増改築による長期優良住宅の認定」を受けることが必要であり、耐震性や省エネルギー性を確保するほか、劣化対策や維持管理・更新の容易性の確保など「耐久性向上改修」も行わなければならない。

「投資型」における最大控除額は耐震改修やバリアフリー改修などを単独で実施するときよりも拡充されるが、「長期優良住宅化リフォーム」の促進にどれくらい寄与するのかは楽観できない。2016年10月に注目されながらスタートした「フラット35リノベ」は、きわめて低調な滑り出しであることも報じられている。その状況を踏まえて考えれば、金銭面以外での「性能強化のメリット」を訴求していくことも重要である。


既存住宅のリフォームにおける税の特例措置(国土交通省説明資料をもとに作成)



「住宅ストック循環支援事業」はいったん終了


2016年度の補正予算でスタートした「住宅ストック循環支援事業」は、2017年度予算による延長措置が図られず、当初の予定どおり2017年6月30日(前倒しされる場合あり)までの補助金交付申請でいったん終了することになるようだ。

住宅ストック循環支援事業は、「住宅のエコリフォーム」「良質な既存住宅の購入」「エコ住宅への建替え」の3類型について国がその費用の一部を負担するものだが、とくに「良質な既存住宅の購入」は「既存住宅の流通」のみに対象を絞った唯一の制度だっただけに、今後の復活にも期待したいところだ。半年ほどの実施期間では十分な実績が望めないだろうが、既存住宅流通市場の拡大のためには、さらに踏み込んだ内容での制度恒久化も必要だろう。


既存住宅流通市場の整備、拡大へ向けた動きが目立つようになってきた。新築偏重から既存住宅、ストック重視へと流れが変わりつつある中で、2017年度はどのよう対策がとられるのだろうか。主な制度、措置を確認しておくことにしよう。



「住宅ストック維持・向上促進事業」は引き続き実施


2016年度に始まった「住宅ストック維持・向上促進事業」は、2017年度も引き続き実施される。良質な住宅ストックによる市場の循環を促すため、維持向上・評価・流通・金融などの一体的な仕組みの開発や周知に対して国が支援するものだ。新たな仕組みを利用した個々の住宅への補助も行われる。

建築士、工務店、宅地建物取引業者、不動産鑑定士、インスペクション事業者、住宅履歴の管理業者、金融機関などが連携して協議会を設立し、開発、普及、試行など既存住宅の資産価値向上に向けたモデル的な対策に取組む。2016年度は一般社団法人リノベーション住宅推進協議会をはじめとして39団体が採択されていたが、2017年度は継続分のほか、4月頃に新たな公募が実施される予定だ。

また、「住宅ストック維持・向上促進事業」とは別に、2017年度は「消費者の相談体制整備事業」「リフォームの担い手支援事業」も実施される予定となっている。


既存住宅流通市場の整備、拡大へ向けた動きが目立つようになってきた。新築偏重から既存住宅、ストック重視へと流れが変わりつつある中で、2017年度はどのよう対策がとられるのだろうか。主な制度、措置を確認しておくことにしよう。



「優良な既存住宅の認定制度」は2017年度中にスタートの見込み


国土交通省に設置された「流通促進に寄与する既存住宅の情報提供制度検討会」により、一定の水準を満たす既存住宅の認定制度づくりが進められている。具体的な日程は未定だが、2017年夏頃には本格的な運用がスタートする見込みだ。

既存住宅における長期優良住宅の認定と紛らわしいがまったく別の制度であり、一定の品質について要件を満たし、情報提供を行う既存住宅に「認定マーク」を付与するなどして、その流通をバックアップしていこうとするものである。

新耐震基準に適合していることや、建物状況調査(インスペクション)を実施し、構造上の不具合や雨漏りが認められないこと、既存住宅売買瑕疵保険またはそれに代わる保証があること、事業者団体が定める基準に適合していること、一定の情報開示をすることなどが要件となる。

検討開始当初、認定住宅の名称は「プレミアム既存住宅」(仮称)とされていたが、さすがにこれは取り下げられたようだ。その後は「新しいイメージの既存住宅」と表記したうえで、「安心住宅」「適格住宅」「納得住宅」「保険付き住宅」「基本スペック住宅」などが候補に挙げられていたが、2017年2月28日に開催された検討会で「安心R住宅」とする案が示された。この「R」はreuse、reform、renovationに由来するようだ。

なお、建物状況調査(インスペクション)のあっせんや説明の義務付けをした改正宅地建物取引業法は、2018年4月1日に施行される。それに伴う調査技術者講習制度の登録規定や調査方法基準もこの2月に制定されたところだ。まだ途中段階ではあるが、2017年度は「既存住宅流通の土台づくり」が大きく進むことになるだろう。


新築から既存住宅、ストック重視へと住宅市場のあり方が大きく変わりつつある。既存住宅流通市場の整備、拡大に向けた今後の動きに注目したい



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