日本橋再開発のキーを握るのは神社だった!? 福徳神社・福徳の森にみる日本橋の心意気

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由緒正しき神社がビルの屋上に!?


再開発で変貌を遂げる街「日本橋」。商業施設コレドの登場などで街は大きく様変わりしているが、ビル群とは一線を画したランドマークが誕生しているのをご存じだろうか。それがコレド室町1の脇から中央通りを1本入った「福徳神社」「福徳の森」だ。

福徳神社は、貞観年間(859~876年)には既にこの地に鎮座していたという由緒ある稲荷神社。芽吹稲荷の呼び名で昔から村の鎮守として人々の崇敬を集めていた。神徳高く、かつては源義家、徳川家康も参詣したという。にもかかわらず、戦後の都市化の進展の中で、この福徳神社は敷地が縮小され、ビルの屋上やなんと一時は居酒屋の店内に神殿を構えていた時期もあった。

この地区の再開発を主導した三井不動産では、地元の方々と協議を重ね、福徳神社の社殿再建を実現すべく敷地を確保。また神社の隣接地にも地域の交流拠点となる広場「福徳の森」を完成させた。

日本橋という都心の一等地で実現した「福徳神社」の再建と「福徳の森」の新設。どのような思いからこうした再開発計画がつくられ、実行されたのだろうか。日本橋再生計画の全体像を含め三井不動産でお話しをうかがってきた。


日本橋室町に鎮座する「福徳神社」。徳川家康からも崇敬されたが、時代とともに境内が縮小されビルの屋上などに祀られていた。日本橋再開発にともない、地域住民の悲願でもあった社殿再興が実現した



「金太郎アメ」のような街づくりはしたくない


「福徳神社」の再建は、地元の方々と思いを共有化して進めたものであるが、それは三井不動産自体の街づくりコンセプトにも合致するものであったという。三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部 事業グループ グループ長の中原 修氏は次のように語る。

「当社が目指す街づくりは、単に建物(ハード)をつくるだけでなく、街が持つ固有の歴史・文化・伝統・コミュニティなどを活かすことを目指しています。特に日本橋再生計画のコンセプトは『残しながら 蘇らせながら 創っていく』。敷地いっぱいに建物をたてて、どこをとっても金太郎アメのような街にはしたくない。『余白を残しながら、賑わいと潤いを醸成し、そして収益性も確保していく』そんな街をつくりたいと私たちは考えています。街としての大切なもの、地域コミュニティの創出につながるものが神社社殿の再建にはあると考えました」

神社の前には「コレド室町1」と「コレド室町2」が並んでおり、その間の「仲通り」は参道という位置づけでそぞろ歩きを楽しめる仕掛けがされている。江戸桜通りからこの仲通りに通じる入口には、提灯も掲げられ確かに参道といった趣き。コレド室町に入った店舗も江戸から続く「くず餅」老舗『船橋屋』や『今半』など、ついついお店を覗きたくなる。

「通常の商業施設の場合、建物の中のお客様を外に逃さないような空間構成を意識するのですが、参道に位置づけた仲通りでは、通り沿いをオープンなしつらえにし、通りから直接出入りできる形にしています。神社につながる参道として街の中に人の流れを起こすこと、エリアへの回遊性を向上させる工夫として、地元の方々とも意見を交換しながら計画を立てました」(中原氏)


コレド室町1と2の間の仲通りは「福徳神社」の参道という位置づけ。老舗店舗を覗きながらそぞろ歩きが楽しめる



老舗の旦那衆のDNAを大切にした街づくり


福徳神社の横に“森”を形成したのも、賑わいと潤いを創出する街づくりを三井不動産が行おうとした心意気の表れだ。

「神社というのは、いわば多様な人々が集いコミュニティが生まれる場であると我々は考えました。人々が交流することで産業が芽生え、賑わいが醸成され、地域全体が活性化する。オフィスビルや商業施設だけをぎちぎちにつくるのではなく、神社の隣に未来に向けての憩いの場となる福徳の森をつくり、さらに単なる“場”としてではなく、イベントなども実施し情報発信をすることで魅力的な街の輪郭を形成したいと考えたのです」(中原氏)。

「日本橋再生計画」では、三井不動産はハードの整備だけでなく、ソフト面での活動にも積極的に参入している。その一例となるのは、神社横の「福徳の森」でのイベントへの注力だ。
ここでは、地元の町会、商店街と協力体制を組みながらお祭りなどを活性化させるほか、外部企業を誘致し情報発信の場として活用することも計画されている。

「日本橋には、江戸の頃からの老舗が数多くのれんを守られています。何代にもわたってのれんを守ってきた旦那衆のみなさんは、ただ古いものを守っているだけではありません。大切な伝統の中に革新を取り込むことでのれんをつなげているわけです。そもそも江戸約5年に1回は大火に見舞われまっさらになっていた場所。古きを守ることと新たなものを生み出すDNAをみなさんお持ちなのですね。私たちの考える街づくりとベクトルは同じ。創造性を共有しながら街づくりをご一緒させていただいています」(中原氏)

だからだろうか、福徳の森の活用についても地域から色々と新しいアイデアが生まれているという。昨年、日本橋で開催された金魚をモチーフにした「アートアクアリウム2016 ~江戸・金魚の涼~&ナイトアクアリウム」は1日に平均9,000人近くもの集客をする一大イベントに成長しているが、今年はこうしたイベントともコラボレーションをしながら福徳の森でのイベントを計画しているそうだ。

「さらに、私たちは、機能性の向上も念頭に置いています。例えば、福徳神社の社殿の地下には駐輪場、そして防災用の備蓄倉庫設備を備えました。日本橋はビジネス街でもあるので、帰宅困難者用に3日間(72時間分)1800人相当を想定した水や食料の備蓄を可能にしています。文化や歴史を大切に残しながらも、街の機能を向上させる取り組みを実現しています」(中原氏)


「福徳神社」「福徳の森」の位置を示したエリア図。情報発信の場としてや防災拠点としての新たな機能も備える



日本橋が“東洋のベネチア”に戻るのを目標に


このほかにも、夜になれば福徳神社、福徳の森では、仲通り、浮世小路と一体的なライトアップもなされ、一層幻想的な雰囲気を醸し出す。これは、景観づくりへの配慮でもあるが、日本橋の街をより魅力的に生まれ変わらせるための意気込みの一つでもある。

「現状の日本橋はまだまだ夜になると人通りが少なくなってしてしまいます。また、百貨店や老舗店舗を訪れる顧客の年齢層も比較的高く、若い人々をもっと街に呼び込むことが必要だと思っています。もちろん、この街の品格を損なうような飲み屋街にしようとも思いません。ただ課題意識としては確実に存在し、夜の賑わい創出と顧客層の拡幅にも力を入れていく予定です」(中原氏)

そんなこととも連動するのが、日本橋がポテンシャルとして持つ「水都」という魅力のアピールだ。かつて舟運都市であった日本橋では、各地から物産が集まり、魚河岸が並びその様子は「東洋のベニス」と言われたほど。残念ながら現在は「日本橋」上空には首都高速道路が架かり、美しい水都の魅力を十分に生かしきれていない。

「私たちは日本橋再生計画の中で、水都再生も打ち出しています。この水辺の景観は日本橋地域の持つアイデンティティであり、他のエリアにはない大きな魅力でもあります。2011年には日本橋のたもとに行政が『日本橋船着場』を整備し、舟運観光も復活させています。今後ももっと魅力ある水都を再生させていきたい。水辺エリアにもオープンスペースを登場させ、バルやカフェなどが立ち並ぶ景観も創り出していきたいですね」(中原氏)


「福徳神社」「福徳の森」の照明計画は、金閣寺や平等院鳳凰堂を手掛けた内原智史(さとし) 氏が監修。神社と森とを一体的に暖かく美しい光で象徴的に包む。季節感も大切にされており、春の桜、秋のもみじなど季節を象徴する植栽には、移動可能な照明装置でライトアップが施されている



産業創造も積極的に


日本橋の再開発では、「界隈の創生」「地域共生」そして「水都再生」からさらに、「産業創造」も目指しているという。産業創造の一つでは「日本橋ライフサイエンス構想」を打ち出している。

日本橋には、江戸時代には「薬の街」として薬問屋が軒をつらねていたことから、現在でも製薬企業が数多く集まる。歴史的にみても、このエリアは「古いもの」と「新しいもの」が共存することで新しい価値を創造してきた街だ。既に医薬をはじめとした広範なライフサイエンス分野において、世界的大手企業からスタートアップ企業に至る様々な企業や団体、海外機関、大学、学会、公的機関などが集い交わり、刺激しあうことで新たな価値を創造することを目指して活動を開始している。

このように日本橋は、機能性を新たにプラスしながら、そこかしこから感じられる江戸情緒を手放していない。

取材を終えて「福徳神社」を訪れてみると、平日の夕方だというのにひっきりなしに人が訪れていた。幕府公認の富くじが盛んだったとされる「福徳神社」は宝くじ当選にご利益があると、今では都内有数のパワースポットとなっているようだ。老若男女がこの神社に手を合わせると隣の福徳の森で一休みをしたり、参道に見立てた小路で買い物を楽しんでいた。まさに人が集い、新たな人の流れをこの街に与えているのだった。


三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部 事業グループ グループ長の中原 修氏



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