BCP(事業継続計画)で災害に強い企業を作るために。物流・電力・製造企業各社の取組み

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熊本地震では多くの企業が営業・操業停止に


2016年4月に発生した熊本地震では、地域の経済を支える多くの企業や工場が被災し、営業・操業停止になった。熊本には半導体関連の工場が多く、営業停止から操業開始までに数ヶ月を要したり、復旧できずに再開を断念し他の地域へ工場を移す企業もあった。
企業においてBCP(事業継続計画)※の策定は、大規模な自然災害の発生時に早期に復旧するために重要なことである。また、地域の産業・雇用が安定すれば、結果的に被災地の復旧の後押しにもなる。

※BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)
災害時などに企業が業務を中断せず、また中断した場合も迅速に復旧し損害を最小限に抑え、事業の継続を図るための経営戦略

2017年3月8日、内閣官房国土強靭化推進室主催による国土強靭化シンポジウム「強靭な製造業サプライチェーン構築のための企業とインフラ事業者との連携構築に向けて」が名古屋で開催された。シンポジウムでは製造業や物流業、またライフラインとなる電力会社のBCPについて講演がされた。

日本で発生した大規模地震について挙げれば、1995年の阪神・淡路大震災、2004年新潟県中越地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震と相次いで発生している。災害リスクの高い日本において企業はどうBCPを策定し運用しているのだろうか。


シンポジウムは中部経済産業局共催で開催された。中部経済産業局は、災害に強いものづくり中部の構築を目指し地域連携BCPを推進している



10年前からBCPに着手。東日本大震災、タイ洪水の経験を活かす


「東日本大震災が発生する以前の2006年からBCPの構築を進めていました。備品や棚などの身の回りの徹底した転倒防止対策を12,000ヶ所実施、全体の25%を占めた旧耐震基準の建物へ耐震補強工事を施し新基準への補強が完了しました。災害への備えがある程度整ってきたと考えていたところに東日本大震災が発生しました。ある程度の成果はあったものの、対策の不足も明らかになりました。」とは、株式会社ケーヒンのBCM推進室 室長 原田氏。

ケーヒンは自動車用燃料の供給、制御システムなどの製造を手掛け、全国に13ヶ所、14ヶ国に拠点を設けている。それまで、BCP構築と訓練を進めていたが、2011年に東日本大震災、さらにタイの大洪水が発生した。東日本大震災ではインフラの長期停止の影響を受け、サーバ停止による生産管理機能の麻痺などが起こった。

「想定を超えた2大災害を力づくで対応したものの、次は想定外と言うことはできない。事業継続を阻害するリスク全体をカバーする、BCM(マネジメント)への進化が必須であると捉え、『BCM推進室』を設置しました。」
14ヶ国の国別にカントリーリスクを洗い出し、危機対応規定の策定や、リスクごとの訓練も行っているという。国によってはデング熱などの病気、デモなど過去のトラブルを踏まえ対応策のアラート情報を発信するなど、平時からあらゆる情報を入手・データベース化し対応を図っているという。


ケーヒンは現在、グローバルなBCMの取組みを推進している。2015年の株式会社電通パブリックリレーションズ企業広報戦略研究所の調査による危機管理総合力評価では、Aランクの高い評価を受けた



運輸業・郵便業でレジリエンス認証取得"第1号"の佐川急便


佐川急便株式会社は、2016年に「レジリエンス認証」(内閣官房国土強靭化推進室創設の国土強靭化貢献団体の認証制度)を、物流業界で初めて取得した。東日本大震災の経験を基に2013年にBCP(事業継続計画)を策定している。
熊本地震の本震が発生した4月16日には、政府緊急災害対策本部からの要請により緊急支援物資の輸送を開始。さらに4月18日には宅配業界でいち早く条件付きで被災地での集荷・配達を再開している。

「佐川急便は、原則として宅配便の業務を中断させないこと、24時間以内に緊急支援物資輸送体制を確立することをBCP目標として掲げています。」と、佐川急便株式会社 取締役兼CSR推進部長の内田氏。熊本地震では前述の対応に加えて、企業や団体、自治体、各避難所への支援物資の対応も行っている。
ソフト対策としては、自社内での訓練・教育に加え、国や自治体との共同訓練、災害対応や被害額などをまとめた佐川急便株式会社防災白書を年1回発行している。
物流を素早く復旧するために欠かせないハード対策については、全国129ヶ所に自社給油スタンドを設置している。燃料のBCP化も進めており天然ガストラックを3,834台保有と、これは世界一の保有数である。衛星携帯や情報システムの二重化など、情報インフラの整備も進めている。

緊急で必要となる物資を届けるために物流インフラの維持は鍵となる。佐川急便のこういった取組みが評価され、2017年3月15日に「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2017」において「企業・産業部門」で最優秀レジリエンス賞(エネルギー)を受賞している。


佐川急便では、異業種の企業と企業交流会や研究会を開催し、BC(事業継続)連携を図っている



南海トラフ地震における中部電力のBCP


中部電力では、愛知県・三重県・名古屋市による南海トラフ地震の被害予測から、電力設備の被害想定を作成している。地震(レベル1)では、伊勢湾周辺の火力発電設備の全ての地点で震度6弱を超え、主要設備が被害を受け発電に支障が出ると想定。津波(レベル1)発生時は三重県沿岸部の変電設備や送電設備で多数の被害を受けると予測している。これらの被害想定より、被災後の需給想定を検証し、設備対策や復旧計画を作成した。対策として、火力設備の補強や水力設備の耐震性向上、変電設備の嵩上げなどを順次進めており、平成32年度までに完了予定である。
2015年には、大規模災害により孤立した地域への応急送電を可能にするため、空輸型高圧発電車を配備。陸上自衛隊と訓練を実施するなど連携を進めている。

被災後の供給について、中部電力株式会社 総務部防災グループ長 柴田氏は、「南海トラフのような巨大地震が発生した場合、高圧発電機車のみに供給を頼ることは難しい。病院や消防、防災拠点など、どこを優先して復旧・送電していくのか、事前の合意形成を今後進めていきたい。企業や施設でそれぞれ、非常用電源の準備など自助を進めるなど協力をお願いしたい。」と話した。


中部電力では、火力・水力・変電設備の防災対策と同時に、防災拠点および電力共供給用建物の耐震補強・津波対策や、無線鉄塔の耐震補強なども進めている



企業のBCP策定状況は?


内閣府の平成27年度「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、BCPの策定状況については、大企業では60.4%が「策定済み」と回答。平成25年度と比較し6.8ポイント増加した。中堅企業では、29.9%が「策定済み」と回答し、こちらも前回調査より4.6ポイント増加している。中堅企業は大企業の半分ほどではあるものの、年々、BCPの策定を進める企業は増えているようである。

大規模震災により、企業や工場が被災し操業が出来なくなれば大損害を受けることは当然ながら、地域にとっては重要な雇用を失うことにもなりかねない。シンポジウムは180名の定員に対して満席と、BCP策定への強い意向が参加者から窺えた。

「もし今、想定外の緊急事態が発生したら?」「大規模な災害が発生したら?」一体どれほどの損害を受けるのかという疑問や不安を感じた人もいたかもしれない。熊本地震から1年が経とうとしているが、災害を教訓とし活かせるよう、継続した対応が求められている。


内閣府による「平成27年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」を参照して作成



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