鹿嶋神社の門前町に再び賑わいを取り戻すまち歩きコース ~「鹿嶋神の道」①

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国内外からのウォーキング愛好者が集まる「鹿嶋神の道」誕生のいきさつ


茨城県鹿嶋市。人口は6万8千人弱。鹿島神宮を中心に歴史ある神社仏閣が点在するまちである一方、現代日本を支える巨大な工業地帯が広がっているまちでもある。西に北浦、東は鹿島灘に挟まれた自然豊かな場所で、東京から約90km、成田空港からは約40kmと、国内外からのアクセスも良好だ。

この鹿嶋市にも、日本で一気に進む高齢化の波が押し寄せ、近年商店街は急速に活力を失っていた。「まちに活気を取り戻し、誰もが住みたいと思えるまちにしたい」。そう考えた市民有志が門前町の空き店舗を活用したチャレンジショップ、「鹿嶋人ギャラリー」をオープンさせたのが2009年3月。手づくり品や鹿嶋の土産品販売などのほかに、地域情報の発信機能も持たせた店だ。

次に行ったのが、地元の人に鹿嶋の魅力を再認識して欲しいと始めた「鹿嶋再発見まち歩きツアー」(2010年)。さらに進化させ、国内外からの観光客を呼び込むためのウォーキングコースとして2014年に誕生したのが「鹿嶋神の道」だ。


上/鹿嶋人ギャラリー外観。鹿島神宮の表参道の一番手前に建つ。門前町に人を呼び戻そうと、一番手前に店を設けた 下/少しずつ活気が戻ってきた鹿島神宮の表参道。休日には多くの観光客が訪れる鹿嶋一の名所



鹿嶋の魅力をもっと地元の人に知ってもらいたい、文化を根付かせたいと「かしま灘楽習塾」を開講


今回お話を伺ったのが、鹿嶋神の道運営委員会 代表の西岡邦彦さん。鹿嶋のまちに活力を取り戻すべく奔走するアクティブな方だ。
「鹿嶋は風光明媚な場所。北浦があり太平洋があり、さらに緑豊かな自然にも恵まれています。海と湖のおかげで冬は東京よりも暖かく、夏は天然のクーラーがあるようなものでそれほど暑くない。とても住み良い場所だと思います。鹿島神宮という文化財もあります。よそのまちと比べても決して引けを取らない価値のあるまちだと思うのですが、地元の人はその価値をあまり感じていないように感じたことも、『鹿嶋神の道』を整備したきっかけになりました」と西岡さん。

西岡さんは九州の出身。仕事の関係で北海道と大阪で勤務後、40年ほど前に鹿嶋にやって来た。しかし、定年まで西岡さん自身仕事で忙しく、鹿嶋というまちに関わることがなかった。お子さんは鹿嶋で育ったものの、いざ鹿嶋から巣立つ時に鹿嶋の魅力を何ひとつ教えてあげられなかったことを後悔したそうだ。

そこで鹿嶋の歴史や文化など、様々な魅力をこのまちで育つ子どもたちにしっかり教えることが必要だという思いにかられ、リタイア後に市から予算を獲得してつくったのが小学校の社会科副読本『かしま』、民話集『鹿嶋の民話』や『鹿嶋ものしりハンドブック』。
さらに行ったのが、「閉校した学校を有効利用できないか」と話を持ち掛けられて開設した生涯学習塾「かしま灘楽習塾」(2006年開講)。開講から6期の間塾長を務めた。

「人口6万8千人弱のまちで塾生が1500人ほど。今年4月で12年目に入ります。遊び心で教養学部、第一文芸学部、スポーツ・健康学部など、大学のような名前を付けています。
遠くから転勤で来た人、また首都圏から移住して来た人などにとって、鹿嶋は住み心地が良いとはいえ読書三昧は続きません。釣りもゴルフもいいけれど同様です。そうするといちばん欲しいのは人とのつながりなんです。会話をしたいと。ご近所に親しい人がいませんから。かしま灘楽習塾は、学ぶことと同様かそれ以上にまた次の機会に仲間と会えることが楽しいという『ふれ合いの場』として、口コミで広がっているようです。

移住などの失敗は、地域にうまく溶け込めなかったということが多いと聞きます。『鹿嶋に来てから寂しかったけれど、ここがあって楽しい』とか『生きがいを持てた』とか、色々な話を聞きます。
ただ、そこまで考えてつくったわけではないんですよ。空いている教室や講堂を何か有効に使う方法はないかと問われ、それなら教えたい人、学びたい人、両方を仲人するような塾をつくればいいと思ったんです。当初は市民有志4人で動かした事業でした」

鹿島灘楽習塾は講座数110、教授数約70名、塾生数約1500名という、鹿嶋市の一大文化拠点として機能。受講料は1回500円と、誰でも気軽に通える価格設定となっているのも魅力だ。


市民が楽しく学べる場としてすっかり定着した「かしま灘楽習塾」。</br>様々な講義が行われているほか、塾生同士のふれ合いの場としても機能している



チェジュオルレ、武雄オルレに触発され、「鹿嶋神の道」をオープン


西岡さんのまちへの想い、取り組んだ事業について簡単に紹介したところで、いよいよ「鹿嶋神の道」の本題に入ろう。現在2コース整備され、2017年5月にルート3がオープンする「鹿嶋神の道」。その着想はどこからだったのか。

「韓国のある企業の研究所で仕事をしていた時、若いスタッフが新婚旅行で済州島(チェジュ島)に行って『チェジュオルレ』を歩いてきたと。オルレとは『裏道』や『小路』みたいな意味の言葉です。帰国後次に韓国に行った時に、『西岡さん、武雄オルレ』を知っていますか。歩いてみたいんです」と聞かれ、そこで初めて興味を持ち調べてみました。するとチェジュオルレを参考につくったウォーキングコースだと知りました。

鹿嶋にも鹿島神宮がありますし、近くには香取神宮、神栖には息栖神社があります※。これらの場所は江戸時代からずっと参拝客が絶えなかった場所。これらを結んで世界遺産にできないかという想いが『神の道』をつくるきっかけになりました。チェジュオルレ、武雄オルレを勉強し、当時行っていた『鹿嶋再発見まち歩きツアー』の延長として2014年に『鹿嶋神の道』をオープンさせたのです」

鹿嶋には年間260万人ぐらいの観光客が訪れるという。その1%でも「鹿嶋神の道」を歩いてくれたらありがたいと西岡さんは話す。
「済州島には年間で1200万人ほど観光客が訪れ、200万人ぐらいがチェジュオルレを歩くといいます。海の孤島と呼ばれる済州島と単純に比較はできませんが、鹿嶋には文化遺産や豊富な自然があるほか首都圏から近く、成田空港もすぐそばという地の利もあると自負しています」

※鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)、香取神宮(千葉県香取市)、息栖神社(茨城県神栖市)を東国三社という


鹿島神宮の楼門。扁額の「鹿島神宮」の文字は、東郷平八郎の揮毫によるもの。</br>楼門をくぐった先の奥参道は、杉などの巨木の間を抜けて行く荘厳な雰囲気が味わえる道



様々な苦労を乗り越えて完成した「鹿嶋神の道」。みんなでつくることで「みんなのもの」になる


「神の道」の各ルートの見どころポイントには、歴史的文化財、自然景観の説明が記載された鳥居型の案内板を設置。また、破魔矢の道しるべが道中あちこちに設置されている。それらの設置だけでも一苦労があると話す西岡さん。
「ルート1だけで案内板が10か所ぐらいあります。設置の際、喜んで協力してくださる方もあれば、『観光客が来たらゴミが散らかるから迷惑』などと断られることもあります。また、案内板などを設置したい場所に人が住んでいればいいのですが、中には土地の所有者がわからず、最終的に行政に協力を仰ぎ地権者を探したこともありました。案内板を設置しても抜かれるとか盗まれるといういたずらもあります」

案内板の説明は、世界中からウォーキング愛好者が来て欲しいと願い、日本語のほか、英語、中国語、韓国語の4か国語で表記。破魔矢は日英の2か国語で表記している。
「途中で案内板を建て替えるのは大変なのではじめから4か国語表記にしました。日本語以外はまちのボランティアの方にお願いして訳文を入れています」

「鹿嶋神の道」をつくる際、西岡さんが意識したことが、「皆でつくる」ということだった。
「うっそうと木が生えている所など、ボランティアの手を借りて整備しました。ただ、『市民のボランティアが勝手にやっているよ』では将来この道を支えきれません。だから地元の公民館に声をかけて、公民館地区からもお手伝いをお願いしました。そうすると『俺たちも関わった』という意識が市民全体に広がっていきます。行政には芝刈り機などの機器を貸していただきました。一部の人だけで盛り上がっても、その人達がいなくなったら存続できません。多くの人の協力を得ながら、皆でつくることを意識しています」

また、ウォーキングに欠かせないのが、見どころを教えてくれるボランティアのガイドさんだ。
「下見をする時に勉強会をして皆で情報交換をしています。ある程度のことは図書館やインターネットで調べられますが、細部は市史や町史で調べて確認しています。ガイドをするには、やはり自分で調べないと身に付かないと考えています」

次回は「鹿嶋神の道」整備のプロセスと実際のルート、今後の課題や展望を中心にお伝えする。


ルートの所々に建つ鳥居型の案内板は、日英中韓の4か国語で表記。落書きなどのいたずらはしないように



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