大阪市生野区で空き家を購入し生活する“リアルレポート”が話題。生野区空き家活用プロジェクト

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空き家問題には話し合いだけでなく実例を見せることが必要


高齢化社会がもたらす問題のひとつに、各地で増え続ける“空き家”がある。前回のレポート「政令指定都市の中で空き家率日本一の大阪市。官民一体で取り組む生野区の活動とは」でも紹介したように、日本全体での空き家は820万戸以上(平成25年度の総務省発表「土地統計調査」)にのぼり、空き家問題に向けて対策を講じる行政も多い。そのようななか前回のレポートで大阪市生野区にクローズアップしたのは、生野区役所のアクションをきっかけに地元の方、つまり民間主導の空き家対策に波及しているという点だ。

そして今回は、生野区在住で空き家問題に体当たり的に活動している方を紹介したい。橋爪大輔さんは【生野区空き家活用プロジェクト】のスタートメンバーのひとり。そして、自身で空き家を購入し、リフォームして、実際に空き家に住み始めている。なぜ、橋爪さん自身が空き家に住むことになったのか。

「活動を通じて知り合った不動産業者の方から、空き家の所有者は賃貸や売買の必要性を感じていない方も多く、所有者を説得する手間がかかるため不動産業者で扱っていない物件が多く存在すると聞きました。それだと、空き家を借りたいと思っても、普通の方には空き家を見つけることができません。また、プロジェクト自体も話し合うだけでなく、事例を見せることで課題やメリット、デメリットも具体的に見えるだろうし、空き家に興味を持つ方への説得力も増すはず。そこで、橋爪家が実験台になり、プロジェクトを見える化して生野区以外の方にも広く認知してもらおうと決断したのです」。


(上)リビングダイニングにて。左が橋爪さん、右が橋爪さん宅を手掛けた建築士の伊藤千春さん。(下)照明シェード、洗面ボウルとも生野区の伝統技術「へら絞り」で製作された世界でひとつだけのもの。



リフォーム費用を抑えるDIYのポイントなど細かな情報を発信


プロジェクトメンバーの協力のもと橋爪さん自身で空き家をめぐり、昨年11月、借地権付きの空き家を約200万円で購入した。その物件は、隣家と壁一枚でつながる長屋。生野区には、昭和初期に建てられた長屋が数多く残り、空き家の多くも長屋だ。
「僕も妻も、隣家とくっついていることにそれほど抵抗はなく、かえってご近所とのつながりが感じられる温かい場所だと思ったんです。購入を決めた時点で隣家にご挨拶にうかがうと、『若い方に来てもらえたら、ありがたい』とまで言っていただき、快く迎えてくださいました」。

購入した物件はそのまま住むには難しく、一部をリフォーム。2017年4月に完成し、すでに橋爪さん家族は住み始めている。そして、それまでに経験したことすべてを情報発信している。たとえば、空き家をどうやって探すのか、リフォームをどうやってお願いすればいいのか、リフォーム費用を安くするためにどこまでDIYできるのかといった内容から、解体で出た廃材を安く処分するには、といった細かな情報まで。「空き家や古い家屋に住みたいと思っても、何かしらの不安があってはアクションへとつながりません。実際に体験したことをそのまま伝えることが、必ず役に立つ情報になると思っています」。

橋爪さん宅はプライベート空間と、1階の一部を「まちのえんがわ~橋爪事務所」として地域に開いた“住みびらき”空間で構成されている。プライベート空間は、家事動線を考えたキッチン、北向きでありながら光や風が差し込む開放感などに配慮。浴室や洗面、トイレなどは最新設備のものにすべてリフォームした。

「まちのえんがわ~橋爪事務所」は、フリーランスで仕事をする橋爪さんのオフィスや打ち合わせスペース。さらに、多彩なセミナーを開催したり、【生野区空き家活用プロジェクト】の【空き家カフェ】を開催したり、地域の方の憩いの場所でもいいし、子どもが大きくなれば友達と一緒に勉強するスペースなど。街とつながる活用法を構想している。

「生野区は、昔ながらの下町風情が残る地域。地域をもっともっと元気あふれる街にするため空き家対策の活動をしているわけです。だからこそ、自分の家も地域のために、地域のにぎわいにつながる拠点にしなければなりません。ただ家族で過ごすプライベート空間と分けるため、玄関とは別にえんがわへの入り口を設けました」。


リフォームでも、自分たちでできることはやろうと決めた橋爪さん家族。解体の一部、壁の塗装、床下や壁裏の断熱材などDIYで行った。



古い空き家も世代によっては魅力的に見える


橋爪さんの情報発信を機に、同じように生野区の空き家を店舗や住居として活用する人とのネットワークも広がっている。「空き家に魅力を感じる“共通認識”を持つ人々がつながり、界隈を形成することで、生野区のエネルギーはさらに高まり、新たな魅力として発信できるはずです」。

さらに、ウェブサイトを見た方から、「生野区って良いかも」「私も生野暮らしをしたい」というコンタクトも増えている。そこで「区役所の協力を得ながら、空き家情報をデータベース化するとともに、空き家活用事例の紹介、生野区の空き家に興味を持つ方のインタビュー掲載なども行っています。所有者と空き家に住みたい方とのマッチングにつながればと考えています」。

橋爪さんは、具体的なアクションを始めて気づいたことがあると言う。「生野区の空き家に興味を持たれる方は、若い世代が多いんです。空き家と聞けば古くて暗いイメージを思い浮かべるかもしれませんが、世代が変われば古さこそオシャレで、下町風情が残る街並みに人とのつながりや温もりを感じるのかもしれません」。つまり、空き家の活用はPRの方法次第で、いかようにも可能性は広がっていくと言える。橋爪さんを始め、若い世代が中心メンバーとなり活動を続ける【生野区空き家活用プロジェクト】に、今後も注目していきたい。


家の西側部分、格子状の扉をひいて路地から直接入れる【まちのえんがわ~橋爪事務所】



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