不動産価格における土地価格は「一物多価」の代表格か~不動産価格指標の現状

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不動産価格は不透明な部分が多い


いろいろな面で分かりづらいことが多いとされる不動産取引だが、物件価格そのものの不透明性も一つの大きな要因だろう。実際に不動産の売却や購入を経験しても、その契約が「適正な価格だった」と自信を持って断言できる人は少ないのではないだろうか。適正かどうかより、「支払いができる価格かどうか」が契約の際の判断材料なのかもしれない。

株式のように毎日の値動きがリアルタイムで表示されるわけではなく、そもそも一つひとつの条件が異なる土地・建物の価格をどう把握するのかは難しい。不動産会社による価格査定に曖昧さが含まれる面も否めないだろう。

不動産会社と消費者の「情報格差」を指摘する声も多いようだが、周辺での売買事例が少ないエリアでは、不動産会社自身が情報不足に悩むこともある。もちろん、消費者がより多くの情報を得られるようにしていくことも今後の課題だが、情報量だけでなく、その情報をどのように活用していくのかも問われる。

そこで、さまざまな不動産価格指標に関する現状と課題、新たな動きなどを確認しておくことにしよう。前編と後編の2回に分けてお送りするが、前編の今回はまず「公的な土地価格」についてまとめてみた。


分かりづらいことが多いとされる不動産取引。物件価格そのものの不透明性も一つの大きな要因である



公示地価は「一般の土地取引価格に対する指標となること」が目的の一つ


国が公表する土地価格の代表的なものが「公示地価」だ。これは地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づいて、国土交通省による土地鑑定委員会がまとめるもので、毎年「1月1日時点」の価格が3月20日前後に公表される。テレビや新聞などでも大きく取り上げられるため、その存在を知っている人は多いだろう。公示地価は公共事業用地を取得する際の価格算定基準とされるほか、「一般の土地取引価格に対する指標となること」「適正な地価の形成に寄与すること」が目的として掲げられている。

2017年3月21日に公表された公示地価では、全用途の全国平均が前年比0.4%のプラスで、2年連続の上昇となったほか、住宅地は0.0%の横ばいで9年ぶりに下げ止まった。ただし、住宅地の変動率は国土交通省が0.0%として公表したのに対し、いくつかの報道機関はより細かく算出したうえで「0.022%のプラス、9年ぶりの上昇」としている。

公示地価の半年後にあたる「7月1日時点」の価格をまとめたのが「基準地価」だ。こちらは国土利用計画法施行令(昭和49年政令第387号)に基づいて、それぞれの都道府県が調査を実施し、毎年9月20日頃に公表される。「都道府県基準地価格」などとも呼ばれるが、基本的な内容は公示地価と同じだと考えて差し支えない。

ただし、公示地価の対象が「都市計画法による都市計画区域」(および国土交通省令で定める区域)なのに対して、基準地価は都市計画区域外も対象とするほか、宅地ではない林地も含む。そのため、都市部における地価の急騰や急落がみられる時期は両者の違いが大きくなりがちである。「全国平均」という場合も、公示地価は主に都市部の全国平均、基準地価は山間部の町村なども含んだ全国平均となるのだ。

調査地点数は公示地価が26,000地点(2017年)、基準地価が21,675地点(2016年)であり、このうち共通地点は1,635地点にとどまる。共通地点では半年ごとの変化を追うこともできるが、大半の地点では1年ごとの値動きを「後追い」で知ることしかできない。「一般の土地取引価格に対する指標となること」などを目的としているものの、現実の取引価格とは大きく乖離する場合もあることに注意が必要だろう。


国土交通省公表資料をもとに作成。3大都市圏では2014年以降、住宅地平均に大きな変化はない



3ケ月ごとにまとめられる地価LOOKレポート


1年ごとに公表される公示地価や基準地価を補完し、「先行的な地価動向を明らかにすること」を目的として2007年第4四半期分から始まったのが「地価LOOKレポート」だ。国土交通省が調査を実施(一般財団法人日本不動産研究所に委託)し、3ケ月ごとに発表している。

これまでに地区数の増減はあったが、現在は全国で100地区(住宅系32地区、商業系68地区)が調査対象となっている。また、具体的な地価や変動率を数字で示すのではなく、上昇、横ばい、下落の度合いを9段階に区分しているのが特徴だ。

2016年第4四半期(2016年10月1日~2017年1月1日)は、2月24日に公表された。公示地価などに比べれば調査時点から公表までの期間は短いものの、対象地区が少なくおおまかな傾向しか分からないのは制度の性格上、仕方のないところだろう。

だが、2017年1月1日時点の公示地価(1年間の値動き)では東京23区のすべての地点が上昇していたのに対し、同時点の地価LOOKレポート(3ケ月の値動き)では東京都心部などでも「横ばい」地区が広がっている。地価LOOKレポートから読み取れることも少なくない。


国土交通省公表資料より一部引用。東京圏での減速が目立ち始めている



調査対象が格段に多い相続税路線価


公示地価と並んで世間の関心が高いのは「路線価」だろう。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があるものの、一般的に「路線価」といえば「相続税路線価」のほうを指すことが多い。これは相続税や贈与税の算定基準となる土地評価額だ。調査は相続税法に基づいて実施され、国税庁(国税局)がそれぞれの価格を決定する。

公示地価や基準地価が敷地そのものの価格(単価)を算定するのに対して、路線価は一定の距離をもった道路(路線)に対して価格(単価)が付けられる。個々の敷地の価格は、この路線価に土地面積を掛け、形状などに応じた補正をする仕組みだ。

調査地点数は約32万8千(2016年)にのぼり、公示地価などの2万数千よりも格段に多い。これは都市部の市街地における大半の路線(公道)が対象になるためだ。そのため、毎年1月1日時点の価格が公表されるのは7月1日となっている。

公示地価などの80%程度が目安とされているが、売買などにおける実勢価格とはそれ以上に大きく乖離している場合もある。だが、都市部における個々の敷地の値動き(変動傾向)を追うときには、公示地価などより路線価のほうが適した指標になることも多いだろう。ただし、直近の値動きは分からないほか、国税庁がweb上で公開する路線価図を調べるのも、慣れていないとなかなか大変だ。


各国税局公表資料をもとに作成。地価は地域による格差も大きい



いちばん身近で、いちばん分かりにくい固定資産税評価額


住宅など不動産を所有すれば、密接に関わってくるのが固定資産税評価額だ。原則としてすべての土地・建物に価格が付けられる。ただし、あくまでも固定資産税をはじめとして各種の税金を算定するための価格であり、実勢価格とは大きく乖離していることが多いだろう。評価の見直しも3年おきであり、地価の変動がすぐに反映されるわけではない。

また、土地の固定資産税評価額は公示価格などの70%程度が目安とされているものの、1994年以前は25%程度の水準だった。それを一気に引き上げたわけだが、税負担の急増を避けるために複雑な負担調整措置も取り入れられている。さらに、固定資産税評価額は原則として非公開であり、所有者本人にしか通知されない。価格を記載した評価証明書も、大半の市町村では本人(または委任状のある代理人)申請によってのみ交付される。

そのため、評価額や税額に間違いがあっても発覚しにくい仕組みになっており、どこかの自治体が30年あるいは40年以上にわたって固定資産税の誤請求をしていたというような「事件」も毎年のように報じられている。いずれにしても、土地の固定資産税評価額を売買価格の参考にすることは困難な状況だろう。

今回は地価について主なポイントをみてきたが、公的な価格だけでも数種類あるうえ、いずれも売買における相場価格、実勢価格とは異なる。まさに「一物多価」の状況だ。それに対して「住宅価格」を分かりやすくしようとする動きも出てきた。次回は住宅価格をめぐる現状や新しい試みについてみていくことにしたい。


物件価格が適正かどうか分かりづらい不動産市場だが、参考となる指標はどうなっているのだろうか。まずは公示地価、路線価など「公的な土地価格」についてそれぞれの特徴をまとめてみた。



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