建築家との出会いはどこにある?建築家それぞれの取り組み

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選択肢に上がりにくい「建築家との家づくり」


私は本業の1つである防蟻処理を通して、ハウスメーカー、地元ビルダー、工務店、大工、建築家…新築に携わる様々な立場の方とご一緒させて頂く。それぞれに家づくりの特徴や強みがあるが、家を建てたいと思った時に「建築家に相談する」という方法は、パッとは思いつきづらいもののように映る。
ユーザーが家づくりを検討したとき、住宅展示場やモデルハウスに足を運べば、ハウスメーカーや工務店などに出会うことができる。だが、建築家との家づくりとなると、そもそもどうやって出会ったらいいのか、またどう選んだらいいかも分かりにくいと感じる人も多いのではないだろうか。
今回は、未来の施主との接点を広げるべく、イベントの実施や、カフェを運営している建築家の取組みと、建築家と出会って家づくりをした施主にもインタビューしたのでご紹介したい。


家を建てたいと思った時に「建築家に相談する」という想いに至るのはなかなか難しい。一方、建築家もユーザーとのつながりを持ちにくいと感じているようだ。未来の施主との接点を広げるべく、様々な取り組みを行う建築家のみなさんの思いを聞いた。



ライバルであって、仲間。建築家同士のコラボによるイベント


近隣県内で、同じ建築家を生業としている者同士が、家具のショールームを会場に、コラボして相談会&作品展を開催するというので訪れた。今回コラボしている建築家は5人。皆、愛知・岐阜・三重の東海エリアを中心に活動している。ともすれば「競合ライバル」である人たちとのイベントには、どんな経緯、メリット、願いがあるのだろうか。

「ハウスメーカーには規格があるので、土地に段差があったり変形したりしていると建てられないこともありますが、建築家はお施主さんの様々な要望、条件に応じたオーダーメイドのプランが出せます。
また、メーカーに捉われず様々な照明、水周り設備、海外製品のキッチンや暖炉など、無数にと言って良いほど十人十色の組み合わせが可能。もちろん、予算の都合はありますが、想いの9割以上は叶えられると思っており、そこがハウスメーカーにはない強みです。
でも、それを伝える術がなかなかない。今回のコラボイベントは 同じような想いの建築家が集まりはじまりました。今後は開催回数を増やし、一緒に活動する建築家もどんどん増やしていきたいと思っています。建築家と話してもらう場、知ってもらう場、作品や人柄に触れてもらう場を目指しています」(H建築スタジオ 蛭川氏)

「今回のようにコラボすることは確かにある意味ライバルとの協同ですから、自分のお客さんにならないことも出てくるでしょうけれど、それでも<動き続けること>に意味があると思って参加しています」(今井賢悟建築設計工房 今井氏)

「新たな動きをしなければ、思っていたタイミングで声を掛けていただいたので、即参加を決めました。日々の小さな活動の一つ一つが信用に繋がると思っているので、このイベントも「活動の積み重ねの内の一つ」だと捉えています。」(エンピツアーキテクツ 松月氏)

「私たちは多くの広告費をかけることはありませんので、多くの依頼主と出会うことはできませんが、依頼主が希望されればきっと出会うことができると思っています。そのためにも、私たち建築家も出会いのきっかけづくりをドンドン行っていきたいと思っています」(笹野空間設計 笹野氏)

「数名の建築家が一緒にイベントを開催することは、来場される方の選択肢が広がり、安心感にもつながり、自分に合う・合わないを見極めやすくなると思います。
建築家、施主さんのどちらかが無理をして合わせた家づくりは、どこかのタイミングでなんらかのトラブルが生じてしまうことがあります。「合った建築家」「寄り添えるパートナー」と出会えることが大切です。そうした意味からも、今回のイベントは5人ですが、個人的には10人以上は集まるといいなぁと思っています」(MA設計室 眞木氏)

同じエリアで、住宅の建築設計を中心に活動している者同士、ライバルでないわけがない。
しかし、建築家たちにも変化が求められているのは想像に難くない。選択肢が多様化し、情報も多い中、建築家も旧態依然のスタンスでは家を持ちたい、家を建てたいと考える人たちと出会いにくくなっているのだろう。狭いと思われがちなその業界の扉を如何に広く開け放てるか、それぞれの言葉からそんな課題と願いが伝わってきた。

取材前後、輪の中に身をおいていると、雑談の中に実に多くの情報が含まれていることに気づく。材料の向き不向き、過去の使用感、失敗・成功例、工務店さんや大工さんのこと、建築士事務所としての在り方やスタッフ教育についてなどなど…目先の利益や損得だけでなく、ライバルとの繋がりの中でスキルアップしていこうとする皆さんの真摯な姿勢を感じる時間でもあった。


同じエリアで活動する建築家5人によるコラボイベント。 ライバルであり、仲間でもある彼らは、今後メンバー・イベント回数ともに増やしていく予定



「本物」に触れられるカフェを運営する建築家


株式会社SYNC(シンク)代表取締役 山田茂宏さんは、1級建築士事務所の所長であり、so goodというカフェの経営者でもある。

「家づくりはずっと気分の良い暮らしを叶えられるものであり、カフェはそうした暮らしがあることをお伝えする1つのツールだと思っています。品質の良いものを知り、使い出すと、暮らしは必ず豊かになる。1つこだわってみると、モノの1つ1つにこだわりを求めるようになる。興味が広がる。それって心豊かだと思うんですよね。」

so goodで使われている食材は、カフェオーナーである山田氏の奥様が使いたいとこだわったもののみ。置かれている家具、照明、雑貨、カトラリー、紙ナプキン1つにまで山田氏のチェックが入っているという。椅子はウェグナーの1脚10万円するものだそうで、ひとつひとつにこだわりが見られる。
こだわりのカフェオープンから2年あまり。カフェ経営と建築はどんな結びつきをしているのだろうか。

「近くに行きたいカフェがないというストレス、カフェを開きたいという奥さんの夢や、設計事務所である自社を伝える新たなツール、こうした想いは確かにあり、カフェ経営によりその3つの想いは叶いましたが、カフェ単体で考えたら採算は合いませんね。でも、いくら良いものを作ってもオープンハウス情報などだけでは、余程真剣に家づくりを考えてアンテナを張っている方にしか届かない。カフェでのランチやお茶なら、新しい接点やできる体験があると思ったのです」

カフェを通して建築をやっている場所でもあるのだと知り、建築依頼に繋がったのは2年で3件だと言う。

「建築家への依頼料を、高いと思う方が多いことは自覚しています。でも、高いか安いかは【期待値】を超えられるかで意味合いが変わると思うんですよ。設計料を「余分に掛かる費用」と思われてしまうのは、期待値を超えられていない、もしくは期待値を超える家作りができることを伝え切れていないのだと思います。建築家の仕事はデザインだけでなく、コストなど、業者との折衝も大事な仕事です。
例えば、事故やトラブルに巻き込まれたら示談ではなく保険屋さんや弁護士に依頼しますよね。プロに頼むことで示談よりはるかに有利に事を運ぶことができます。工務店さんや大工さんとお客さんが直接話をするのは示談をしているのと一緒で、なかなか思うとおりには行きません。構造的にとか、これは必要なものなのでとか、専門的なことを言われると、そうなのかなとなんとなく流されてしまいます。
『家は3回建てないと理想のものが建たない』などと言われるのは、一般の方が勉強するのに必要な回数なのです。3回も建てられる人はよほどいないので、もし1回で満足のいく家ができるのであれば、設計料を余分に掛かる費用だなんて思われないのではと思っています」

実際に同社で家づくりを依頼した方の感想を聞いたところ、

「ふらっとカフェに行って実際に見られるのは、とても良かった」
「自分の明確なイメージやこだわりがないと、頼んではいけないのでは?という気がしていたが、それは間違っていた。ぼんやりとしたイメージしかないからこそ、プロに頼むべきなのだと分かった。」
「設計事務所は、図面を描いてくれるだけというイメージだったが、デザインは当然のこと、工務店の手配、コスト管理、ライフスタイルの提案など、家に関わる事全ての総合プロデュースをしてもらえた」との声があった。

山田氏に建築家選びのポイントを尋ねた。
「建築家が家づくりに携わる期間は約1年ほどですけれど、お施主さんとのお付き合いは一生です。だからこそ、「この人好きだな」と思える人と出会って欲しいと思います。プランはいくらでも替えられますけれど、その建築家は変わりませんからね。案だけでお金を取るような建築事務所はまずないと思うので、一度会って、お話をしてみて、好きだなと思える人を選んでください」


建築家山田氏が細部にまでこだわったもののみが置かれている カフェso good



田舎へ移住した建築家による自宅ワークショップ


「暮らし」をキーワードにしたワークショップを開催している建築家もいる。一級建築士事務所 So no ieの園田さんだ。
以前取り上げた「粉祭(こなさい)」という食×モノ×音楽イベントに出展、雑貨販売やデザイン・写真撮影を仕事としているcocoromi三宅氏と、「雑貨」「建築設計」という暮らしを中心としている者同士、一緒に何かできないかという思いから「くらしーず」というコラボを発足した。その思いはワークショップという形となり、スパイスケースや真鍮のお皿づくりなど、これまで3回、岐阜県八百津町にある園田さんの自宅で開催されている。

自宅でのイベント開催とは思い切った行動だと思って伺ってみると、「設計士の家を見てもらう機会というのもそうそうないですし、何より生の感想を直接聞けるからいいですよ」と園田さん。

「ボクら家族は2年前に八百津に移り住んで来ました。ここに住みたいという「住まい手としての思い」と、ここに建てたいという「建築士としての思い」が一致した土地でした。自然の豊かさ、ゆっくりと流れる時間、言葉にするのは難しいですが…何かいいなぁと直感で決めました。この町の雰囲気が好きで家を建てたので、他の方にも中距離旅行感覚で八百津に遊びに来てもらいたいと思っています」
多くの建築家が自身の仕事を伝える方法は、作品を見てもらうことになると思うのだが、園田さんは八百津という土地を含め、暮らし・人を見て気に入ってもらいたいと考えている。

「粉祭への来場がきっかけで知り合い、過去3回のワークショップ全てに参加し、自宅にも泊まってもらった方の家づくりが間もなく完成します。この人にだったら自宅に泊まって欲しいなぁと思える人の家を作れるなんて、幸せじゃないですか。
このお施主さんの場合は、子供同士歳が近いこともあり、打合せに子ども同伴で伺ったり、週末に一緒に漆喰を塗ったり。仕事という感覚を忘れるくらいの関係性で家づくりに携わらせて頂けました。家を建てて終わりではなくずっと続く関係でいたいと思っているボクにとって理想的なお仕事です。」

ワークショップ活動も、人との繋がりや 穏やかな楽しさを大切にしていることが伝わってくる。
2年前。ご自身が設計したご自宅の完成お披露目会に、私もお邪魔させていただいたが、小さなお子さんがいて、生活の匂いがあって、縁側の陽だまりや暖炉の温度が感じられ、ご自宅だからと実験的に試みたこともふんだんに見ることができた楽しい時間と空間だった。
模型図や写真集を眺めることもイメージが膨らみ楽しいが、そこでの暮らしを事前に体験してみたいというのは施主の願いではないだろうか。自宅ワークショップは、申込みのちょっとの勇気でそれを味わうことができる柔軟な発想の取り組みだと思った。


岐阜県八百津津町へ移住した建築家の自宅ワークショップ。参加者は田舎でのひと時を、建築家一家は来客の非日常を楽しみにしているという



施主が語る「建築家との家づくり」


最後に、田舎に移住し、自宅ワークショップを開催している園田氏に家づくりを依頼した方のお話をご紹介したい。

■建築家との出会いと、住まいづくりを相談しようと思った<決め手>
出会いは粉祭というイベントで、園田さんがブースを出されていてそこでお会いしました。
園田さんに相談する前に、ハウスメーカーに数件見学に行き、ファーストプランまで出していただきましたが、実際の生活があまりイメージできませんでした。園田さんは、こちらの希望をしっかり聞いてくださり、我が家の実際の生活に寄り添ってもらえ、希望全てを叶えたプランを立てていただけました。決め手は、こちらの想いが伝わり意思疎通ができたと実感した事とお人柄です。

■実際に頼んでみて、良かったこと
本当に、親身になってとことん考えてくださった事です。「一般的に良い事」を前提に、「我が家にとって良い事」を常に考えてくださいました。建築が始まってからも、できる事には対応してくださいました。もしも途中でお怪我やご病気になられたら…という心配がありましたが、もしもの場合の説明もいただき、安心してお願いしました。

■住まいづくり中の思い出
事務所やご自宅にお邪魔して、宿泊体験させていただいた事です。園田さんが設計されたご自宅におじゃましてみて、明るさや温度、外の音、部屋の広さなどが分かり、実際の生活と結びつけて感じることができました。漆喰塗りも一緒に行いました。初めての私達に一から教えてくださったので何とかやりきる事ができました。お陰で住む前から愛着のある我が家になりました。

■これから 住まいづくりを考えている人に向け、「建築家との住まいづくりについて」 
建築家さんにお願いして良かったことは、設計してくださるご本人と最初から直接お会いできることです。双方で気持ちを理解し合い、コミュニケーションが大切になってきます。その建築家さんの事をよく知り、こちらの事もよく知ってもらう事で意思疎通がスムーズになります。また、家ができてからもメンテナンスなどで関係が続いていきます。一生お付き合いしていく方なので、何度もお会いして、お互いの事をたくさん話し、「この方にお願いしたい」と思える建築家さんに出会えると、素敵な住まいづくりになると思います 。

今回、「建築家との出会い」3つの事例をお伝えしたが、建築家に対するあなたのイメージに変化は生まれただろうか?施主の声、建築家の声、双方で共通していたのは「相性」。建築家との家づくりに限ったことではないが、相性が良い人と過ごすのは心地良く、楽しい。
それが家づくりに関することとなれば、一層重要なポイントとなるのではないか。

少しアンテナを張り、周囲をくるりと見渡せば、あなたの家づくりの可能性や選択肢は、思った以上に多いのかもしれない。


<取材協力>
■H建築スタジオ 蛭川氏 http://www.ha-studio.jp/
■今井賢悟建築設計工房 今井氏 http://www.imaiarchi.com/
■エンピツアーキテクツ 松月氏 https://www.enpits-a.com/
■笹野空間設計 笹野氏 http://www.sasanosd.com/
■MA設計室 眞木氏 http://www.ma-atelier.com/
■株式会社 SYNC 山田氏 http://www.i-sync-so.jp/about.html
■一級建築士事務所 So no ie  園田氏 http://www.sonoie.jp/


家を建てたいと思った時に「建築家に相談する」という想いに至るのはなかなか難しい。一方、建築家もユーザーとのつながりを持ちにくいと感じているようだ。未来の施主との接点を広げるべく、様々な取り組みを行う建築家のみなさんの思いを聞いた。



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