中古住宅の流通促進を目指す「住宅ファイル制度」。普及の鍵は、買主のメリットの周知?

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既存住宅市場を活性化を目指す「住宅ファイル制度」とは?


『既存住宅市場を活性化し、国民生活をさらに豊かにすることに貢献すること。』

住宅ファイル制度は、その開発と普及を通じて上記の目的を達成するために創設された制度だ。主体となるのは近畿各府県の宅地建物取引業協会や、同じく近畿各府県の不動産鑑定士協会などが16の団体が参加(2017年7月現在)する「近畿圏不動産流通活性化協議会」(以下、協議会)だ。同制度の定義は「建物診断およびシロアリ点検の報告書を基に、既存住宅の経済的残存年数を把握し、住宅の適正価格を示す、第三者たる専門家の統一された調査報告スキーム」とある。わかるようなわからないような感じだ。もう少し具体的に見てみよう。

住宅ファイル制度の肝は「住宅ファイル報告書」。これは宅地建物取引士による物件調査書/重要事項説明書、建築士(インスペクター)による建物診断、防蟻業者のシロアリ点検、それらを基にした不動産鑑定士による住宅価格調査がセットとなったものだ。

さて、この住宅ファイル報告書を作成することでどのようなメリットがあるのか? それは誰が享受するのであろうか?
今回は、住宅ファイル制度の詳しい内容と普及に向けての課題について、協議会の目黒經敏氏への取材内容を元に紹介したい。


住宅ファイル制度の仕組み。宅地建物取引士や不動産鑑定士など、住宅のスペシャリスト達によって既存(中古)住宅をあらゆる観点から公正に診断。その住宅の品質や適正価格などの情報をまとめた報告書を作成し、「売主」「買主」の双方に開示することで円滑な取引を促す(画像提供:近畿圏不動産流通活性化協議会)



住宅ファイル報告書の作成による売主と買主のメリットとは?


「住宅ファイル報告書」の作成によって、買主にメリットが生じることは想像に難くない。建物の仕様や品質、改修履歴が購入前にわかることは購入検討に際して大いなるメリットだ。

無論、住宅ファイル報告書がなくとも、買主は中古不動産を購入する際に、重要事項説明書で物件についての説明を受ける。そこには法令上の制限や権利関係、水道ガス等のインフラについて詳細な説明が書かれている。また別添資料では給湯器やコンロ等の設備の有無や使用の可否が明記されている。

しかし、重要事項説明の際になされる物件についての説明は、十分な情報提供ができているかといえば必ずしもそうではない場合もある。"ガスや水道が使える"、"風呂が付いている"、といった情報は、現況を見れば誰でも簡単にわかる話である。目に見えない部分や素人にはわかりにくい部分、例えば給排水管の状況や梁や柱の傾斜や劣化については触れられず、最低限のことしか言及していないと言えるのだ。

もちろん、売主がそれらの不具合を認知していれば、その現況を報告する義務はあるが、売主が気づいていない場合、その旨を記載していれば問題はない。引渡し後にそれらの不具合が露見した場合は「瑕疵担保責任」の問題として対処方法が記載されてはいるのだが、買主が本当に知りたいのは「不具合があった時の対処方法」ではなく「不具合の有無」だ。

建築士が建物診断を行うことで、「不具合の有無」がわかることは、住宅ファイル報告書の大きなメリットだ。これにより物件購入時に買主が抱く不安が払拭され、円滑な取引が進むことになる。また本制度のオプションとして、買主が保険料を負担すれば瑕疵保険に加入することもできる。保険への加入でさらに安心が増す。

一方、売主にとってのメリットは、「正しい価格設定ができる」ことがあげられる。目に見える設備等はもちろんの事、配管や基礎などの見えない部分も、あらかじめ不具合等がわかるため、売却後のトラブルも減る。不具合の度合いによっては手直ししておいた方が良い場合もあるであろう。一戸建てであれば、築年数が古いというだけで不当に安い価格設定となることもない。


住宅ファイル報告書のサンプル画像。左が住宅ファイル価格報告書。重要事項説明書の一部、建物診断(インスペクション)、シロアリ点検の調査報告書を基に、既存住宅の経済的残存年数を把握し住宅の適正価格を算定する<BR />右はシロアリ点検調査報告書(画像提供:近畿圏不動産流通活性化協議会)



住宅ローン利用と、かし保険への加入は買主にとっての大きなメリットの一つ


また、「正しい価格設定」ができ、事前に不具合の有無がわかるということでさらなるメリットも生まれる。それは住宅ローンが利用しやすくなることと、そして瑕疵保険への加入ができることだ。

住宅ファイル制度を活用したローンは、今のところ扱いがあるのは関西アーバン銀行の「住宅ファイル活用ローン」がある。協議会の資料によれば、利用する特典として、「住宅ファイル制度の評価額が担保評価となる」、「保証会社事務手数料が半額」、「自然災害保証特約無料で付保」、「住宅ファイル制度利用料金が諸費用として借入可能」の四つがある。中でも特筆すべきは一つ目の「住宅ファイル制度の評価額が担保評価となる」こと。これは建築士による建物診断などから不動産鑑定士が住宅価格を調査するというスキームに担保されたものだ。

瑕疵保険は、既存住宅購入者が抱える建物に対する漠然とした不安が解消できる。国土交通省の発表によると、既存住宅の個人間売買で保険期間/保険金額を5年/1,000万円とした場合、一戸建て(120平米)/マンション(75平米)でそれぞれ負担は44,750円/33,420円(保険法人5社の平均値)。わずか数万円の負担で、5年間1,000万円の保証が手に入る。瑕疵担保責任を個人の売主に長期間の負わせることは現実的ではないことからも、瑕疵保険の役割は大きいといえる。


個人間での売買の対象となる住宅の検査を行い、売買後に隠れた瑕疵が発見された場合に「検査事業者」の保証責任について保険金を支払う(画像提供:近畿圏不動産流通活性化協議会)



住宅ファイル制度普及の鍵は「買主への周知」


売主、買主にメリットのある住宅ファイル制度だが、双方の取引を担う仲介会社にとっては、売主から媒介を取る際、売主に対し、不具合の顕在化によって売却価格が下がる可能性や調査の費用負担などを提案する必要があることなどから、いまひとつ普及の兆しが見えてこない現状もある。今後、住宅ファイル制度がより普及していくためにはどのような事が考えられるだろうか。

その一例が「住宅ファイル制度利用物件が不動産ポータルサイトで有利な扱いを受けること」だ。
売主にとっては、報告書によって瑕疵が顕在化したり、調査コストがかかるなどのデメリットがあるのに対し、買主にはデメリットがない。買主からすれば、検討物件が住宅ファイル制度を利用しているに越したことはない。住宅ファイル制度の「買主にとってのメリット」を徹底的にユーザーに訴求した上で、不動産ポータルサイトの検索画面で「住宅ファイル制度を利用している」というチェックボックス等があれば、本制度を利用した物件を探そうと試みる人は確実に増えるだろう。

もちろん「チェックボックスを入れたら物件表示がゼロ」といった状況ではいけない。しかし、同制度を利用した物件が表示上有利になる等の不動産仲介会社へのインセンティブとなる施策を重ねることで利用物件も増加していくのではないだろうか。


■取材協力 近畿圏不動産流通活性化協議会「住宅ファイル制度」
http://jutakufile-seido.com/


既存住宅市場を活性化を目的に創設された「住宅ファイル制度」。これは専門家によって建物を診断し、住宅の適正価格を調査するもの。これにより売主と買主双方にどんなメリットが発生するのだろうか。詳しい内容と普及に向けての課題について見ていこう。



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