災害発生時のトイレの確保に向けたガイドラインの制定も。普及が進む「マンホールトイレ」とは?

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災害時は数時間以内にトイレの整備が必要


日本は常に震災の心配があるうえに、夏季は豪雨による水害の危険性も増す。災害といえば自宅の倒壊や火事、さらに避難場所などを危惧する人が多いだろう。しかし、忘れてはならないのがトイレの確保だ。
特定非営利活動法人日本トイレ研究所が東日本大震災後に行った調査によると、被災から3時間以内にトイレに行きたくなった人の割合は31%。6時間以内では67%だった。排せつは我慢ができないため、災害時は数時間以内にトイレの整備が必要ということになる。

一方で、同震災では仮設トイレが避難所に設置できるまでに4日以上要した地方公共団体が66%あった。災害によってトイレが流せなくなることで不衛生な状態になったり、使用できるトイレが遠い、寒い、暗いといった場合は、トイレに行く回数を減らすために水分や食事をとることを控えてしまいがちになる。これが脱水症状やエコノミー症候群など、命にかかわる問題を引き起こす可能性があることからも、災害時のトイレの確保は非常に重要だ。


発災から何時間でトイレに行きたくなったのか(回答36人)調査:日本トイレ研究所<BR />(調査:NPO法人日本トイレ研究所『東日本大震災 3.11のトイレ 現場の声から学ぶ』)



各地方公共団体で導入が進むマンホールトイレ、その特徴とは?


そんな中、災害時に備えて各地方公共団体で導入するケースが増えているのが、下水道に直結するマンホールを活用した「マンホールトイレ」である。
日本大震災の際には宮城県東松島市内の2箇所、熊本地震の際には避難所となった4箇所の中学校に設置された他、スポーツ大会の会場等で使用されるトイレとして活用の幅が広がっており、平成27年度末の時点で、340の地方公共団体、合計で約24,000基が整備されている。

マンホールトイレは、下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やテントなどを設置し、井戸水や学校のプールの水、河川水などを利用して排泄物を下水道管に直接流すものだ。そのため従来の仮設トイレとは異なり、臭気も軽く衛生的で、排泄物の抜き取りも軽減される。また、入口の段差が少ないので高齢者や車いすを必要とする要介護者でも使用しやすく、その整備には被災地外からの調達が必要ないことも大きな特徴の一つといえる。
東日本大震災の下水道管路の被害状況は全体の1%程度(国土交通省調べ)にとどまるなど、近年では地震に強い下水道管路の整備が進んでいることもあり、地震災害発生後でもほとんどの場所でマンホールトイレから、し尿を下水道管路に流すことができると考えられている。


(写真左上)東日本大震災(2011年)後、宮城県東松島市に設置されたマンホールトイレ<BR />(写真中央上)マンホールトイレの様子<BR />(写真右上)熊本地震(2016年)後、避難所となった 4箇所の中学校に設置されたマンホールトイレ<BR />(下イラスト)マンホールトイレの構造イメージ。下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やテントなどを設置し、<BR />井戸水などを利用して、排泄物を下水道管に直接流すトイレ。<BR />災害用トイレとしてトータルバランスに優れている(出典:「マンホールトイレとは」(国土交通省))



「防災基本計画」では、防災トイレの組み合わせによる充実度確保も


政府が定める「防災基本計画」でのマンホールトイレの位置づけは、指定避難所において要配慮者にも配慮した施設の整備につとめるもの、とされている。また、災害応急対応においては避難所の生活環境を確保するために、必要に応じマンホールトイレ等を早期に設置するものとされており、地方公共団体が地域防災計画に位置付けて取組むべき事項の一つとなっている。

そこで国土交通省では、マンホールトイレの整備に対して様々な支援策を行っている。例えば、2009年度より「下水道総合地震対策事業」が創設され、一定の条件を満たした防災拠点または避難地に整備するマンホールトイレは財政支援を受けることができる。また、地方公共団体等に対し、マンホールトイレの有用性や整備の基本的な考え方などを示す『マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン』を作成している。

同ガイドラインのポイントは下記の5つ。

1.災害時のトイレの確保の基本的な考え方
2.マンホールトイレの必要数の算定等
3.快適なトイレ環境の確保に向けて配慮することが望ましい事項
4.事前準備と訓練
5.マンホールトイレの整備・運用における7箇条

このうち、災害時のトイレの確保の基本的な考え方として、時間経過と被災状況に応じた防災トイレ利用の組み合わせによる良好なトイレ環境を提供する必要性を掲載している。
防災トイレには、1)携帯トイレ・簡易トイレ、2)マンホールトイレ、3)仮設トイレの3タイプに分けることができる。

携帯トイレ・簡易トイレは、各住民があらかじめ備蓄しておくことで、災害発生後すぐに利用可能である。そのため防災基本計画においては、地方公共団体等は住民に対して「最低3日間、推奨1週間」分の携帯トイレ・簡易トイレの備蓄を行うよう普及啓発を図るものとしている。一方、マンホールトイレは、備蓄が容易で日常使用している水洗トイレに近い環境を迅速に確保できる。仮設トイレは、日常的に建設現場やイベント等で利用されているが、備蓄が比較的難しく、調達までに時間を要する場合がある。
これらの特徴を組み合わせることで、例えば、初動対応として、携帯トイレ・簡易トイレを用いた後、マンホールトイレを迅速に設置し、さらにその後、調達した仮設トイレ等を設置することにより、避難所等におけるトイレの充足度を確保することが考えられる。

これらは地方公共団体向けとなっているが、一般市民でも快適な災害用トイレなどを理解するうえで十分役立つ内容だ。一読する価値はあるだろう。


発災からの時間経過とトイレの充足度のイメージ図(出典:国土交通省『マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン』)



今のうちに災害用トイレの情報収集を


また、4)の「事前準備と訓練」に関しては、いざという時のために私たちもぜひ学んでおきたいことだ。細かな内容は各地方公共団体によって異なるが、例えば東京都世田谷区では、ホームページで『災害用トイレ取扱説明書』を公開している。20ページにわたってマンホールトイレの使用手順などをカラー写真入りで解説しており、他の地域に住む人でも同トイレの構造などを詳しく知ることができる。また千葉市では、マンホールトイレの使用手順のホームページ上での公開に加え、町内会等への説明会の実施もしているので参考にして欲しい。
災害時に慌てないために、今のうちから自分の住む地域の取り組みを確認してはいかがだろうか。


東京都世田谷区の『災害用トイレ取扱説明書』。区民でなくてもマンホールトイレの構造などをくわしく知ることができる(出典:世田谷区ホームページ)



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