都市計画区域マスタープラン・市町村マスタープランとは?その目的と役割をまとめてみた

LIFULL HOME'S PRESS

都市計画区域マスタープラン・市町村マスタープランとは?その目的と役割をまとめてみたの記事画像

都市計画の指針となるマスタープラン


住宅・建築、不動産、まちづくりの場面では「マスタープラン」という用語がよく使われる。マスタープランとは、全体的な基本計画、基本方針、基本設計などを意味するが、用語の使途が限定されるものではないため、民間企業のプロジェクトなどで使われることもあるだろう。

そのうち都市計画について都道府県や市町村が定めるマスタープランは、人々の生活にも密接に関わるほか影響範囲も広いため、その重要性が高い。だが、自分が住んでいる市町村のマスタープランを理解している人は、はたしてどれくらいいるだろうか。もちろん、住民周知に積極的な取組みをしている市町村もあるだろうが、なかなか分かりづらい面があることも否めない。

そこで、都市計画法によって規定されている「法定マスタープラン」について、主なポイントをまとめてみた。

都市計画には、あらかじめ国が用意した数多くのメニューがある。それを地域の実情に応じて適用し、活用していくのが都道府県や市町村の役割だ。都市計画区域の指定、市街化区域および市街化調整区域の線引き、用途地域やその他の地域地区、地区計画などを重ね合わせていく。近年は容積率の割増などを伴うさまざまな特例制度も導入されている。

それらの都市計画を立案するうえでの指針となるのがマスタープランだが、これはあくまでも「基本計画」であり、建築や土地利用に関する具体的な規制内容を定めるものではないことをあらかじめ理解しておきたい。


都道府県や市町村が定める都市計画についてのマスタープランは、人々の生活にも密接に関わるほか影響範囲も広い



マスタープランの方向性を示す国土交通省の「都市計画運用指針」


都道府県や市町村がマスタープランを策定するうえでの指針として位置づけられるのが、国土交通省による「都市計画運用指針」だ。これは社会動向や関連する法制度などに合わせて毎年のように(多いときは年に数回)改正されており、直近では2017年6月に一部改正された。

最新の「第8版 都市計画運用指針」は、目次を含めて320ページあまりの構成になっており、全体に目を通すことはなかなか難しいが、そのうち「都市計画区域及びマスタープラン」の項目に35ページを割いている。

マスタープラン策定のためのマスタープランともいえる内容だが、その記述をみると「~することが望ましい」「~することも考えられる」といった表現が目立つ。あくまでも最終判断は都道府県や市町村に委ね、その内容については強制しないというスタンスだ。

この「都市計画運用指針」を勘案したうえで、都道府県が「都市計画区域マスタープラン」を策定し、その「都市計画区域マスタープラン」および市町村の「基本構想」に即して「市町村マスタープラン」が策定される。また、2016年から始まった「立地適正化計画」の指定もマスタープランの一つとして位置づけられている。そして、これらのマスタープランに沿った内容で、具体的な都市計画が定められるのである。


都市計画区域マスタープランなどの体系



都道府県が策定するのは「都市計画区域マスタープラン」


都市計画法第6条の2の規定に基づき、都道府県が広域的見地から定める都市計画の基本的な方針が「都市計画区域マスタープラン」だ。正式には「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」といい、「区域マス」などとも呼ばれる。

これは従来の「市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針」が2000年5月の都市計画法改正(2001年5月施行)によって改変されたものだ。また、同改正によって従来は一体だった「都市再開発の方針」「防災街区整備方針」「住宅市街地の開発整備の方針」が、それぞれ独立した都市計画として定められることになった。これらも広い意味でマスタープランの一部として扱われるものだ。

2001年に改正都市計画法が施行されてから数年かけてそれぞれの都道府県で「都市計画区域マスタープラン」が策定された。その目的は、おおむね20年後の都市の姿を展望したうえで「一体の都市として整備、開発及び保全すべき区域として定められる都市計画区域全域を対象として、一市町村を超える広域的観点から、区域区分を初めとした都市計画の基本的な方針を定めるもの」とされている。

「都市計画区域マスタープラン」の主な内容は次のようになっている。
□ 都市計画の目標(都市づくりの基本理念など)
□ 区域区分の方針(市街化区域と市街化調整区域の決定の有無およびその方針)
□ 土地利用に関する主要な都市計画の決定の方針
□ 都市施設の整備に関する主要な都市計画の決定の方針
□ 市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
□ 自然的環境の整備または保全に関する都市計画の決定の方針

なお、「都市計画区域マスタープラン」とは別に都道府県全域や複数の地域を対象にした「広域マスタープラン」もあるが、これは法定ではなく任意であり、策定しているのは16都県(2017年7月現在)にとどまる。


それぞれの地域においてどのような都市計画を適用するのか、その指針となるのは都道府県や市町村が策定するマスタープランだ。その仕組みはどうなっているのだろうか。マスタープランの目的と役割について基本的なポイントをまとめてみた。



地域に密着し独自性が求められる「市町村マスタープラン」


都道府県が策定した「都市計画区域マスタープラン」およびそれぞれの市町村議会の議決を経た「基本構想」に即して定められるのが「市町村マスタープラン」だ。都市計画法第18条の2に規定されており、正式には「市町村の都市計画に関する基本的な方針」という。

都市計画区域マスタープランが「広域的な一体性を確保するうえで配慮すべき事項」について定められるのに対して、「市町村の区域を対象とし、より地域に密着した見地から、その創意工夫のもとに、市町村の定める都市計画の方針を定めるもの」が市町村マスタープランである。都市計画法の改正によって導入されたのは1992年であり、都道府県の「都市計画区域マスタープラン」が規定されるよりも8年早い。

用語として少し紛らわしいが、都道府県が策定する「都市計画区域マスタープラン」に対して、市町村が策定するものは「都市計画マスタープラン」と表されることもある。略して「都市マス」あるいは「市町村マス」などと呼ばれることもあるようだ。国土交通省の集計によれば1,150市町村(2015年3月31日現在)で策定されている。

市町村内においておおむね完結する基本計画が対象となるものの、都道府県による「都市計画区域マスタープラン」とは異なり、定めるべき事項が都市計画法に明記されていない。だが、一般的には次のような項目になるようだ。

□ 市町村としてのまちづくりの理念や都市計画の目標
□ 全体構想(目指すべき都市像とその実現のための主要課題、課題に対応した整備方針など)
□ 地域別構想(あるべき市街地像・地域像、実施されるべき施策など)

いずれにしても「市町村マスタープラン」は、「市町村が主体的に独自性を発揮して住民参加のもとに作成するもの」とされ、その策定にあたっては「必ず住民の意見を反映させるために必要な措置を講じること」が求められている。

なお、改正都市再生特別措置法(2014年8月施行)による「立地適正化計画」もマスタープランの一部として位置づけられている。施行からまだ3年弱だが、具体的な取組みをしているのは全国で348市町(2017年3月31日時点)、計画を作成・公表済みなのは106市町(2017年4月30日時点)にのぼる。今後の住宅・不動産のあり方にも大きく影響していくだろう。

市町村マスタープランはそれぞれの地域の事情に応じた内容とし、画一的なものにならないよう配慮されているが、独自性をどこまで発揮できるのか、あるいはいかに有益な内容にできるのかは、市町村によって大きく異なることもありそうだ。


「市町村マスタープラン」は、「市町村が主体的に独自性を発揮して住民参加のもとに作成するもの」とされる



住民に分かりやすく周知することが大きな課題


都道府県や市町村はマスタープランを策定するだけでなく、「都市の将来像について住民へ分かりやすく周知して理解を得るとともに、その実現に向けてどうしていくのかを明確に示すこと」がたいへん重要だ。

国土交通省の「都市計画運用指針」においても、マスタープランのあり方について「それぞれ住民に理解しやすい形であらかじめ中長期的な視点に立った都市の将来像を明確にし、その実現に向けての大きな道筋を明らかにしておくことが、極めて需要であり、そうした機能の発揮こそマスタープランに求められているといえよう」と記述されている。

しかし、その情報公開の仕組みはどうだろうか。マスタープランに基づいて決定された都市計画の内容については、市町村などのホームページで公開する事例も増えつつあるものの、GIS(地理情報システム)を都市計画の情報提供に活用している市区町村は21.2%(市のみでみると34.1%:いずれも2011年時点)にとどまる。2005年時点の調査に比べれば約4倍に増えているようだが、まだ十分とはいえないレベルだろう。たとえば横浜市では、いち早く1988年に都市計画地図情報の窓口閲覧システムを導入し、2002年にはホームページでの公開を始めた。先行する市町村と遅れている市町村でかなりの差が生じているようだ。

また、マスタープランの内容そのものを「住民に分かりやすく提示する」ことについては、さらなる対策が必要だろう。住宅・建築、不動産、まちづくりなどの関係者なら地域のマスタープランを知っているケースが多いと考えられるものの、仕事で関わることのない住民はマスタープランの存在すらあまり認知していないかもしれない。

市町村ごとに内容が異なるためネット上で話題になることはあまりないが、地域の将来を大きく左右することもあるマスタープランについて、住宅などを購入する際にはよく確認しておきたいものである。


マスタープランは策定だけでなく、「都市の将来像について住民へ分かりやすく周知して理解を得るとともに、その実現に向けてどうしていくのかを明確に示すこと」がたいへん重要となる



[関連記事]
市街化調整区域での用途変更が認められやすくなる? 国土交通省が指針を改正
「都市公園法の改正」で公園内の保育所が可能に。都市公園はこれからどう変わる?
マンションの公開空地はなぜつくられる?その役割と課題
閑静な住宅地でもコンビニ出店が可能に。私たちの生活は便利になるのか
生産緑地の指定解除をめぐる「2022年問題」はどうなるのか?

出発:

到着:

日付:

時間:

test