交野市「おりひめ大学」の取り組み。地域らしい市民主体のまちおこし 

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それは同窓会から始まった


地方都市再生の機運が高まり、市民主導のまちおこしが各地に広がっている。中でも年齢、性別、資格を問わずにさまざまな学びを提供する「市民大学」は、その草分けともいえるシブヤ大学を始め全国に数十校存在し、多分野におけるまちおこしに取り組んでいる。
その一つが、大阪府交野市を拠点とする交野おりひめ大学。市民が主体となって活動しており、そば学科、しぜん農法学科、おさけ学科、酒づくりの会、きかく学科、てがみ学科、里のしぜん学科、カンヴァス学科と、多岐にわたる学びを実施しているので、総合プロデューサーの甲斐健氏にお話を聞いてきた。甲斐氏は「じゃがりこ」や「Supli」などのCMも手がけた広告マンでもある。

交野おりひめ大学の開校は2013年。中学校の同窓会で、交野に役立つことをしたいと盛り上がったのがきっかけだ。
「交野市は自然も多く、歴史もあるまちだが、市外の人にはあまり知られていない。もっと交野市の良さをPRし、発信していけないか」と、メンバーの人脈で当時の市長ともディスカッションし、交野市の事業として始まったという。
おりひめ大学のネーミングは、交野市に七夕伝説が残ることから。市内には天棚機比売(あめのたなばたひめ)大神を祀る機物神社も鎮座する。
当時、甲斐氏自身は東京から戻ってきたばかりで、正直なところ、地元に対する愛着がさほどあったわけではなく、ボランティアもしたことがなかったが、市民協働を重んじる市長とつながったことにより、一気に動きが加速したとか。

現在、活動に参加している学生が300人。スタッフは、学科リーダー7名、運営委員が10名、理事15名が内訳で、スタッフは全員ボランティアだそうだ。


おりひめ大学総合プロデューサーの甲斐健氏



活動はそば作りから


おりひめ大学の特徴は、「誰もが大学生になれる」「自分のために楽しむことが半分の新しいカタチのボランティア」「事業化も視野に入れ、進化し続ける交野市活性化プロジェクト」「オール交野でひとつになっての活動」「摂南大学による交野市活性化プロジェクトを全面的に支援して、連携」「営業や企画、社長、アーティスト、大学教授など市民は誰でもプロフェッショナル」「交野市人口の約1%が参加する多世代交流」の7つ。
交野市の休耕田の活用と、農業のプロに教わりながらそば栽培をし、プロのそば打ちを視野に入れ、最初にできたのがそば学科だ。開講準備の一年の間に無農薬で実験栽培をしたところ、おいしいそばができた。自分たちでそばを打って楽しむだけでなく、人気のそば屋で商品化してもらったところ、評判が良く、一気に盛り上がったという。
「そのおそば屋さんは、日本中のそば粉を使用してらっしゃって、毎日『本日のそば粉は福井産』『北海道産』と木札が出るんです。それが『交野市産』になっているのを見たときは、うれしかったですね」と、甲斐氏。

交野には休耕田が多いのでそば畑の確保は難しくなかったが、水はけが悪いので、砂地を好むそばにはマイナス。畝を作って筋蒔きにするなど、手間がかかるという。

学生は高齢者が多いが、そばの栽培とそば打ちの両方ができるので、小さな子供のいる家族は、土に触れる体験として楽しんでいるとか。

年間最大のイベントは、大阪市立大学の植物園を会場とする「かたのカンヴァス」。市民アーティストの作品を森の中に飾ったり、音楽のステージを開催したりと、「大人の文化祭」といった趣だが、市内すべての小中学校にサポーター募集のちらしを配るので、多くの子供がスタッフとして参加するイベントでもある。子供たちは大人とチームになり、アイデアだしから、準備の工作、当日の運営などに加わる。松ぼっくりで人形を作って、入場者にプレゼントしたり、植物を使った工作のワークショップを開催したりと、子供ならではのアイデアが飛び出しているそうだ。

このイベントも学生が提案して始まったもの。植物園が好きな学生たちが、「植物園でイベントをしたい」と、依頼しにいったのがきっかけなのだそうだ。


そば畑は水はけをよくするため畝を切っている



交野市からの独立


しかし市長が変わると、市の方針も大きく変わり、行政からの独立を余儀なくされる。助成金だけでなく、会議室など活動場所の提供や各地域・団体との調整など、行政にしかできないサポートも打ち切られたため、苦境に立たされることとなった。
学生やスタッフたちに「ここでやめようか」と相談したが、「せっかく良いことを始めたのだから続けたい」という声が大きく、学生それぞれが自立心を持って頑張ることで、マイナスをプラスに変えようと、自転車操業で続けてきたのだという。

「今はスタッフにはまったく報酬を支払えていませんが、10月から一般社団法人にして、事業を始めようと考えています。また、法人格を持つことで、助成金の応募資格を得られますから、スタッフに何かしらの形で還元できるのではないかと期待しているのです」

しかし、助成金に依存するつもりはない。活動は、半分は自分たちの楽しみのため、残りの半分が社会貢献だから、社会貢献になる分野のみ、助成金に応募していきたいと考えている。


かたのカンヴァスは、植物園が舞台となる



今後は他団体との連携も


交野市の魅力は、大阪市内から電車で30分の立地と、ほどよく自然が残る「とかいなか」であること。
しかし甲斐氏は、「田舎でもない、都会でもないという魅力はありますが、本来隣の市との境はなく、地図上に線を引いているだけ。実際はどのまちもそんなに変わりません。でも、同じ魅力があるなら、磨いたもの勝ちです。交野市の素晴らしいところは、熱心に活動する市民が多数いらっしゃることでしょう。もともとあまり連携が進んでいなかったようですが、おりひめ大学がハブ組織となれれば素晴らしいとおもっています。また、日本中で市民大学や、地域活性のための活動が行われていますから、連携を模索していきたいですね」と、土地の魅力だけに依存する気はない。

実際に活動している学生は300人前後だが、登録だけなら1000人以上。交野市人口の1%を超えるスケールがあり、マスコミに取り上げられることもあるため、交野で市民が活動していることが少しずつ知られてきた。それがきっかけで、工業会や商業連合会、観光協会のイベントのお手伝いをさせてもらうなど、いろいろな団体と連携が生まれつつある。
市民や企業からの「こんなことがしてみたい」という声を学科にしているため、他の自治体行政からの関心も高く、連携を結びやすい素地もできつつあるそうだ。

そのためか、本来市役所に出されるべき陳情が、おりひめ大学に届くこともある。たとえば、「プラネタリウムが壊れたままなので、おりひめ大学でなんとかできないか」という相談があった。修理には3000万円かかる見積もりで不可能だったが、現在、連携している摂南大学が、小さな機械と取り替えて運用できないかと検討中だ。

また、交野市在住の若手が立ち上げた農業法人とも連携予定。農業法人の「都市農業を守りたい」という思いと、おりひめ大学の「地元で雇用を生み出したい」という思いが合致したため、農業法人は栽培について教える一方、人集めや情報発信をおりひめ大学が担うのだ。

「存続の危機もありましたが、地道にでも続けることが大事です。運営スタッフを増やしたり、事業から少しでも収入を得たりして、持続できる仕組みを作っていきたいと思っています。また、いつまでも私が総合プロデューサーを務めていられるわけではありません。次の代にバトンタッチして、代々続いていく形にしなければなりませんから、次の人が引き受けられるような体制作りをせねばと思っています」

交野おりひめ大学のコンセプトは、交野を学んだり遊んだりしながら、人もまちも元気になっていくこと。市民でなくても活動に参加できるので、興味のある人はぜひ一度覗いてみてほしい。

交野おりひめ大学 https://www.orihime-univ.com/


蕎麦畑で農作業をする学生たち



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