空き家対策は「個」から「連携」へ。全国版空き家バンクなど注目される動きをみる

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空き家対策は幅広く実施されている


全国各地で取組みが始まっている空き家対策について「空き家対策は進んでいるのか?国土交通省がまとめた調査結果をみる」で現状を紹介した。そこで取り上げたのは主に空き家対策特別措置法にもとづく自治体の対応状況だったが、空き家対策はそれだけではなく幅広いものだ。

数多い空き家対策の中で、とくに注目しておきたい2つの動きがある。対策推進強化を目指した全国組織となる「全国空き家対策推進協議会」の設立と、国土交通省・民間事業者による「全国版空き家バンク」の構築だ。今回はこの2つについてみていくことにしよう。

まず初めに、国土交通省による空き家問題解消に向けた主な取組みを整理しておく。同省の分類によれば、空き家対策は次の9種にまとめられている。

□ 空き家対策推進のための基礎整備
□ 空き家の発生防止
□ 空き家の適正な管理
□ マッチング・媒介機能の強化
□ 空き家の再生・リノベーション
□ 地域における空き家の活用
□ 除却
□ 空き地の活用
□ 空き家に係る調査・分析や政策研究の充実

これらのうち「空き家対策推進のための基礎整備」に含まれるのが「全国空き家対策推進協議会」の設置であり、「マッチング・媒介機能の強化」の1つとして挙げられるのが「全国版空き家バンク」の構築である。


取り壊すことだけが空き家対策ではない。使える空き家を流通させることも大切



全国空き家対策推進協議会が8月31日に設立された


2017年6月29日に公表された社会資本整備審議会産業分科会不動産部会による「空き家対策等に係る中間とりまとめ」において、空き家対策推進のための基礎整備の一環となる「地方自治体の首長で構成する空き家対策全国協議会の設置」が提言された。

その2ケ月後の8月31日に「全国空き家対策推進協議会」の設立総会が開催され、会長に岡山県総社市市長を選出、副会長には京都府井手町町長を指名している。設立時点の正会員は47都道府県および907市区町村、協力会員は関連する各士業団体、不動産業界団体など22組織だ。

空き家対策特別措置法による「空家等対策計画」の策定が、施行からおよそ3年となる2017年度末(2018年3月31日)までの策定予定を含めても891市区町村となっていることを考え合わせれば、それを上回る数の市区町村による推進協議会への参加は、かなり積極的な印象も受ける。情報交換の場としての期待も高いのだろう。

空き家対策推進協議会には「企画・普及部会」「所有者特定・財産管理制度部会」「空き家バンク部会」の3つが設けられ、それぞれ活動を進めていくようだ。具体的な成果が表れるまでにはそれなりの時間もかかるだろうが、これまで各市区町村による個別の対応になりがちだった空き家対策について、課題を共有したりアイデアを出し合ったりする「連携」を深めることで、より良い方向に進むことを期待したい。


さまざまな空き家対策が進められる中で、「全国空き家対策推進協議会」の設立と「全国版空き家バンク」の構築という新しい動きがある。この2つがどのような役割を果たすのか、「空き家バンク」の現状も含めて確認しておくことにしよう。



現状の空き家バンクは低調なケースが多い!?


その一方で、2016年8月4日にとりまとめられた国土審議会土地政策分科会企画部会による「土地政策の新たな方向性2016」の中で示されたのが、「ITを活用した『空き家・空き地バンク』の標準化・一元化などを通じた効果的なマッチングの実現」だ。

空き家・空き地バンクは、かなり以前から運用している市区町村も多いのだが、期待するような成果を得られていないケースのほうが多いだろう。株式会社うるる 空き家手帳事務局がまとめた「平成28年 空き家バンク運営実態調査」結果報告書をみると、1ケ月の物件登録数が1件未満のところが全体の69.0%、1ケ月の物件成約数が1件未満のところが全体の89.0%にのぼる。

調査対象となった「空き家バンクを運営する760自治体」のうち、回答をしたのは「219自治体(回収率29.2%)」にとどまるため、すべての事例を網羅できているわけではないが、1ケ月の平均成約数が最も多いところでも3.3件にすぎない。なお、全体の平均では売買物件が66%、賃貸物件が34%という構成比のようだが、賃貸物件の割合が多いところほど成約率が高い傾向にあるようだ。空き家の売却には、ハードルが高い地域も多いのだろう。

また、全体の78.6%では「空き家の売主(貸主)が集まらない」、27.6%では「空き家の買主(借主)が集まらない」という悩みを抱えているようだ。多くの市区町村ではホームページや広報誌を使って周知に努めているほか、固定資産税納税通知書に案内を同封する取組みも少なからずあるようだ。

だが、ホームページや広報誌などによる周知は、地域住民に対して「登録を呼びかける内容」が中心だと考えられる。他の地域に居住する買主(借主)候補者に対する周知はかなり手薄に感じられるが、「買主(借主)が集まらない」という悩みを抱える市区町村が比較的少ないのは、前提となる登録物件数自体が少ないことに起因しているのかもしれない。

なお、株式会社うるる による調査結果では、「あまり成果が出ていない」と回答した市区町村のほうが、「補助金・助成金の拡充」を求める割合が高いというデータも示されている。今後の空き家バンクのあり方を考えるうえで、補助金などに頼らない方策を探ることも必要だろう。


手入れをすれば十分に使える空き家は多いが、その情報をどうするのかが課題



空き家バンクの情報を統一フォーマットに集約し、利便性の向上へ


全国各地で開設された「空き家バンク」をまとめたサイトは、既に数年前からいくつか存在している。だが、それらはすべて「リンク集」であり、利用者は一つひとつ異なるフォーマットのwebページを順に閲覧しながら物件を探さざるを得ない。数多くの物件が登録されている場合もあるが、ほんの数件しか登録のない空き家バンクを順に確認していくのはずいぶんと手間のかかる作業だろう。

自分の条件に合った物件に絞り込んで検索するということ自体ができないケースも多いほか、エリアを限定せずに探す場合には物件情報を見落とす可能性も高い。利用者自身の手によって広い地域を対象に情報収集したり、統一性のない物件情報を比較検討したりすることは困難だ。

そこで検討されたのが、統一されたフォーマットで検索、比較できるようにするための「全国版空き家・空き地バンク」の構築である。市区町村が所有者の同意を得たうえで、民間が運営する「全国版空き家・空き地バンク」に物件情報を登録し、利用者は全国の物件をワンストップで検索することが可能となる。

国土交通省による2017年度の「全国版空き家・空き地バンク構築運営に関するモデル事業」として5月26日から事業者の公募が実施され、6月16日に株式会社LIFULLおよびアットホーム株式会社の提案が採択・選定された。そして、LIFULLは9月28日、アットホームは10月25日にそれぞれ試行運用を開始している。


「全国版空き家・空き地バンク」の構築イメージ(国土交通省説明資料より引用)



全国版空き家バンク」はβ版でスタート


国土交通省の事前調査によれば、350の自治体が参加表明(初年度参加して様子を見たい、継続して参加したい)をしているという。株式会社LIFULLは、7月19日より自治体からの参加登録受付を開始し、8月31日には掲載希望自治体へ入稿用テンプレートの配布を始めている。

「LIFULL HOME’S空き家バンク」として、まずは検索導線をシンプルに設計したβ版をリリースした後、掲載物件数の増加と並行して条件検索や他の機能を拡充するなど、年度内に改修を重ねていくという。

「不動産の表示に関する公正競争規約」をふまえたうえで独自のルールを設け、物件登録は原則として自治体(または自治体から空き家バンクの運営を委託された事業者)が行う。代理入稿のシステムも設けるようだ。基本的な物件情報に加えて、自治体の独自性や特色を掲載する「まちのPR情報」項目、空き家の利活用に伴う補助金・助成金や防災に関するデータベース項目なども予定されている。なお、空き家バンクを運営していない自治体の参加も可能となっている。

利活用希望者に対して「最適な検索方法を提案すること」を念頭に、従来の検索軸では絞り込めないような新機軸も検討しているようだ。利用者は、さまざまな条件で物件を検索し、物件ごとの詳細ページを見たうえで、自治体に問合せ、または自治体が運営する空き家バンクなどで詳しい取引条件などを確認することになる。

地域の実情に応じて個々の物件の取引条件などは異なり、これを統一することはできないため、具体的な契約交渉段階においては自治体または自治体から委託された宅地建物取引業者などが関与することは欠かせない。

いずれにしても、空き家を買おう、借りようとする人にとって、格段に利便性が増すことになるだろう。空き家対策全体の中でみれば一部分にすぎないかもしれないが、空き家流通が活性化することで対策の進展に拍車がかかる部分もあるはずだ。

「全国空き家対策推進協議会」による活動への期待と合わせ、「全国版空き家バンク」の動向にこれからも注目していきたい。


さまざまな空き家対策が進められる中で、「全国空き家対策推進協議会」の設立と「全国版空き家バンク」の構築という新しい動きがある。この2つがどのような役割を果たすのか、「空き家バンク」の現状も含めて確認しておくことにしよう。



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