国産材の魅力を喫茶文化で発信。全国47都道府県産の木材を使ったカフェが名古屋に誕生

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木材自給率は30年ぶりの高水準


林野庁に発表によると、2016年の木材自給率は34.8%の30年ぶりとなる高水準。
木材チップなどを燃料材とするバイオマス発電所の増加に加え、木造住宅の新設着工戸数が8%増加したことや、住宅用合板の原料に国産スギの利用などが進んでいることも要因となっているようだ。
今後も国産材の利用が拡がりをみせるであろう今、国産材をもっと身近に、肌でその良さを感じてもらおうと、47都道府県すべての木材を内装に使用したカフェが名古屋にオープンしたと聞いて訪ねてみた。


フローリングはクリ、机はケヤキを使用。全国47都道府県から集めた各地の木材を内装に使用したカフェ【moriwaku cafe】



国産材や山林に興味を持ってもらおうと「山の日」にオープン


場所は名古屋市中心部の伏見エリア。
ここは、御園座をはじめビルの建て替えが相次ぐオフィス街であり、戦後賑わいをみせた全国有数の繊維問屋街としての顔も持つ地区だ。現在では、昔ながらの問屋とインテリアショップや飲食店など洒落た店舗の新旧が共存している。
そんな街の一角、地下鉄「伏見」駅徒歩1分の場所に誕生した【moriwaku cafe】は、新築ビルの1-2階が店舗で、1階がカフェスペース、2階が国産材を使った文具やインテリアグッズなどを取り扱うセレクトショップという構成。どちらのフロアも柱や内装、テーブル・イスに国産材が用いられ、店内に足を踏み入れると一面の無垢材が放つあたたかな色味と、ふわりと漂う木の香りが身体を包む。

上写真からもお分かりのように、店内の通路や壁には木立のように狭い間隔で柱が立っている。
これが全国各地から集まった木材で、数えると48本(岐阜産は「岐阜」「高山」の2本)。それぞれが木目も色も違う表情で、その一本一本に産地・種類を記したシールが貼られているため各木の“身元”が分かる。また、そこにはQRコードも載っており、無料登録後にアクセスするとその木の情報も取り出せる工夫がされていた。
「自分が暮らす県の木は?」「ふるさとの木は?」「この滑らかな木肌はどこが産地?」と、店内の柱材を探して、見て、撫でて、嗅いで…興味深く木に触れる機会もつくられている同店は、2017年8月11日の『山の日』にオープンしたというのも木への想いが感じられる。


2階にはさまざまな国産材製品が並ぶショップと打合せスペースにも適した半個室のテーブル席が。</br>また、注文住宅やリノベーションの際に参考になるよう紹介コーナーも設けられている



山の資源活用を目指す、木材の商社が進める事業の一環


どうしてこのような形態のカフェが誕生したかを共同店長の廣瀬さんに訊いた。

同店を手掛けたのは、日本一の面積を誇り、その93%が森林という岐阜県高山市の【飛騨五木】。同社自体はまだ3年ほどの新しい会社だが、地元で半世紀以上「山から木を切って家を造る」その全工程を自社で行う木材の商社、株式会社井上工務店を母体としている。

飛騨五木とは、昔から高山・飛騨地方の暮らしの中で大切に生かされてきた五種の木『ヒノキ・スギ・ケヤキ・クリ・ヒメコマツ』のこと。
同社グループでは、工務店での家づくりをベースとして、木製品の企画開発・小水力発電の木質バイオマス・林業への就職支援・宿泊施設運営・森林資源育成の信託など…恵まれた飛騨の森林資源を活かすべくさまざまな事業を行っており、飲食店運営もその一つ。
国産材の家の魅力をどう拡げるかを考えた時に、例えば、木の家を検討中の人が、天然木を多用したモデルハウスやショールーム等を体感しに出かけて木の良さに触れることはできても、その空間で“ゆっくり寛ぐ”ことはなかなか難しい。そこで、もっと気軽に『国産材を体験』してもらうことを目的として、カフェ文化が根付く名古屋に同店をオープンさせることになったそうだ。


“木の香り漂うくつろぎのカフェ”としてこだわりある同店はスペシャリティコーヒーや人気のカレー、チーズケーキをはじめとするスイーツなどメニューも充実。モーニングとランチも含め、朝7時~夜9時までいろいろなシーンで立ち寄れる



十人十色ならぬ“十木十色”!全国47の街から厚意で集まった木材たち


店内の柱材を見ても、やはり国産材ではスギやヒノキが多いのだが、同じ種類の木でも育った場所や環境で微妙な(時には大きな)違いがあるのが興味深い。珍しいものでは、長野のカラマツや香川のカイヅカイブキ、化粧用として使われることが多い木材で柱材が取りにくい沖縄のイヌマキなども。また、東京都などは産材自体が少ないために集めるのに苦労したのだとか。

ともあれ全国津々浦々から集結することになった県産材だが、これら全てが(送料のみ店側負担で)各産地が快諾し“厚意で”柱材を届けてくれたことにも注目したい。

木材自給率が上がってきたとは言え、1955年には96%だったものが輸入自由化で70年には50%を切り、いま3割という現状がある。
廣瀬店長によると、“健全な森林”というのは0~100才ほどの木が樹齢・量ともにバランス良く生えている状態らしいが、戦後の植林で50~60才ほどの木が多く、人手不足で山の管理が行き届いていない今は森の均衡が崩れがちなのだとか。また、各産地での発信手法はあるものの、点が線となる繋がりはまだ強くなく、一丸となった全国的な活動や展開は林業の課題の一つにもなっているよう。
そんな状況にあって各産地が抱いている「林業の活性化」や「国産材の魅力を発信したい」という共通の想いが賛同を生み、カフェ開設を叶えたのだと感じた。


スギとヒノキが多いが、産地によって色合いや節の出方などが変わるので表情の違いを見比べられる。店内それぞれの県産材にはQRコードが添付され、無料登録して読み込めばその木の情報を得られるのも面白い



「やっぱり日本の木ってイイね!」と感じてもらえる場所を増やし、国産材の需要をもっと上げたい


国産材体験と名古屋の喫茶文化を融合させた同店は、木の香りあふれるカフェとして人が集うだけでなく、イベントなどを通してコミュニティの場としても展開。
例えば、11月末までは『飛騨高山の森まつり』として森にまつわるイベントを開催し、高山の歴史を語るパネルや高山の魅力ある風景を撮った写真展示、木工ワークショップや着物体験、畜産トークセッションや地酒ナイトと銘打った催しなど地域の魅力発信も進めている。

同イベントでも住宅相談会や家具相談会が開催されるのだが、日本各地から国産木製品を集めたセレクトショップでもある2階の一角が住宅・リノベーション紹介スペースになっているように、来店をきっかけに国産材の家づくりに興味を抱く人が増えるかもしれない。
また、カフェに拘らず国産材に触れられる場所の提供であったり、住まいに限らず国産材製品の開発なども進めていくそうだ。

「やっぱり国産材っていいね!」をじわじわと実感できる場や機会が増えれば、国産材の需要がさらに上がり、森や家づくりに関わる良いループが生まれる…そうなったら素敵だ。

 



■森のポータルサイト「日本の森がもっとワクワク」https://moriwaku.jp/


今回お話を伺った【moriwaku cafe】共同店長の廣瀬さん。ウッドライフアドバイザーでもあり、飛騨五木の新入社員ながら木材や山林への知識と愛情いっぱいなのが印象的!



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