若手建築家による「U-35」展。世界で活躍する建築家とのシンポジウムをレポート

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若手の登竜門、公募型の建築展「U-35」。2017年は建築史家の五十嵐太郎氏が選んだ若手7組が出展


若い建築家たちが飛躍のきっかけをつかむ登竜門として、2010年から開催されている「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会」。第8回目となる今年は、10月20日から30日まで、JR大阪駅前のうめきたシップホールで展示が行われた。今年のテーマは「若さが、問うもの。若さに、問うもの。」

2017年の出展者は7組8人。うち2人は昨年の受賞によるシード組で、ほかの5組は公募によって選ばれた。審査を担当したのは建築史家・建築批評家の五十嵐太郎氏。選出に当たっては、地域や性別にこだわらず「異なるタイプのデザインを選ぼうと考えた」と語る。展示作品には新築もあれば改修もあり、なかには“まちおこし”的な活動もあって、テーマも展示手法も7組7様だ。前年までと比べて、計画案より実作が多いのも特徴という。

会期2日目の21日には、出展者8人と五十嵐氏に加え、出展者よりひと世代上の40代の建築家6人をゲストに迎えてシンポジウムが開かれた。司会を担当したのは建築史家の倉方俊輔氏。出展者によるプレゼンテーションを聞いたあと、全員で議論を闘わせ、最終的にGold Medalを選ぶ。


(上2点)うめきたシップホールで行われた展示風景。大勢の来場者で賑わっていた(左下)展示会場近くのナレッジシアターで開催されたシンポジウム(右下)シンポジウムに登壇したゲスト建築家、建築史家・建築批評家。左から芦澤竜一氏、谷尻誠氏、平沼孝啓氏、五十嵐太郎氏、平田晃久氏、五十嵐淳氏、石上純也氏、倉方俊輔氏、吉村靖孝氏



新築、改修、まちづくりなど展示作品もコンセプトも各人各様


昨年のGold Medal受賞者、酒井亮憲氏が出展したのは竣工間近の和菓子の店舗だ。フラットな屋根を、何本もの斜めの柱で支えている。柱を斜めにすれば、構造は弱くなりかねない。先輩建築家のひとり、五十嵐淳氏は「ありえない」と断じながらも「変な色気があってオリジナリティを感じる」と評価。ただ「酒井くんは去年取ったし、もういいでしょう」とシンポジウム会場を笑わせた。

新築住宅を出展したのは、もう1人のシード組である前嶋章太郎氏と、初出展の安田智紀氏。前嶋氏の作品は、元農地の広い敷地の余白を活かすシンプルなプランの2階建て住宅。安田氏は、高低差のある外部テラスと屋上を階段でつなぐ「ダイチノイエ」と増築「ミカンノイエ」を発表。それぞれ「巧い」と評価する声が複数上がったが、会場で大きな話題を呼ぶまでには至らなかった。

齋藤隆太郎氏は新築と改修、合わせて3つのプロジェクトを出展。作品もさることながら「多様化した価値観をいかにカタチにするか」という設計コンセプトを強調したことが印象に残った。先輩建築家からは「コンセプトに囚われて作品が魅力を失っていないか」という厳しい批判も受けたが、いくつものスタディーを繰り返す根気強い設計姿勢が評価された。

野中あつみ氏と三谷裕樹氏のユニット、ナノメートルアーキテクチャーは、今回の出展者の中で唯一、実作ではなく、医師と連携してのまちづくり「志摩ドクタープロジェクト」を展示した。医療関係者の交流や活動のための拠点づくりに継続してかかわっている。「プロジェクトのこれまでの経緯や未来を表現した年表も、作品のうち」と語る。建築の姿はまだ見えないものの、自分たちで仕事をつくっていこうとする独自の取り組みを買う声が多かった。


展示作品の一部。(左上)酒井亮憲「ひと繋がりの視線」(左下)前嶋章太郎「周辺の主体性-O夫妻の家の巡る物語-」(右上)安田智紀「ダイチノイエ」(右中)齋藤隆太郎「価値観の多様性とカタチ」(右下)野中あつみ+三谷裕樹「志摩ドクタープロジェクト」



印象に残った2つのプレゼン。先輩からの批判の声は期待の表明


シンポジウムで議論を巻き起こしたのは、千種成顕氏と三井嶺氏のプレゼンテーションだ。2人とも、改修作品を展示した。

千種氏は「空間は身体が生み出すのか?」という問いを立てて建築を考える、と語る。披露した改修2例は、照明の内側や窓枠に鏡のリングを埋め込んだり、天井の高低差による遠近の錯覚を利用するなど、インスタレーション的な印象を受けるもので、空間というより視覚の操作のようにも見える。先輩建築家の芦澤竜一氏は議論の冒頭で「身体性を求めるのはいいが、具現化されてない」と厳しい言葉を投げたが、最終的に誰を推すかと問われて千種氏を選んだ。批判は期待の裏返しなのだ。

三井氏の作品は、昭和3年に建てられた、いわゆる「看板建築」の店舗を耐震改修したもの。補強に用いたのは鋳物でつくった装飾的な門型フレームで、実物が会場に展示されているのが目を惹いた。プレゼンテーションで三井氏は「建築を支える骨と、装飾に興味がある」と語り、さらに「空間や光はよく分からない」と言ってのけて耳目を集めた。


(左)千種成顕「月島の改修」(右2点)三井嶺「日本橋旧テーラー堀屋」



若手建築家たちの今後の飛躍に期待しGold Medalを授与


6人の先輩建築家がそれぞれ評価する1~4組の名を挙げたあと、五十嵐太郎氏によってGold Medalを決定。選ばれたのは三井氏だ。五十嵐氏は「建築史家として、空間よりモノのほうが強いと感じることがある。時代を経ると建物の間取りは変わるが、モノは変わらないからだ。三井氏がその強さを信じていることに感銘を受けた」と評した。

絵画や彫刻と違って、建築は実物を展示することができない。今回の出展作品は実作が多かったとはいえ、審査に当たった五十嵐太郎氏を除けば、誰も現場を見ていない。建築を展示だけで評価されるのは酷かもしれないが、倉方氏は、このU-35は「“いい建築”を決める賞ではない。賞をあげる賞。今後への期待を表明する賞」という。

Gold Medalを受賞した三井氏も「今の自分や作品がいいと言われているわけではないと自覚している」と挨拶し、今後の成長を誓った。

来年はシードで出展する三井氏はじめ、7組8人の将来に期待したい。

■取材協力
特定非営利活動法人(NPO法人)アートアンドアーキテクトフェスタ
http://www.aaf.ac/

Under 35 Architects exhibition
http://u35.aaf.ac/


Gold Medalを受け挨拶する三井嶺氏(中央)



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