福岡市の健康先進都市に向けた新プロジェクト「福岡100」。人生100年時代の”健寿社会”の実現に向けた取組みとは?

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福岡市で始まった保健医療福祉分野における新戦略プロジェクト「福岡100」


世界でも例を見ない急速な少子高齢化が進む日本。医療技術の進歩や、生活環境の改善などによって、平均寿命は、男女ともまだまだ伸び続けると推計されている中、私たちにとっては100歳を迎えることが特別でなくなる時代、「人生100年時代」の到来もあながち遠い未来ではないかもしれない。
高齢者の医療・介護・年金の問題が取り上げられない日はなく、また、団塊の世代が75歳以上となる2025年まで残り10年を切っている今、誰もが心身ともに健康で自分らしく生きていける持続可能な社会を創ろうとする挑戦が福岡市で始まっている。それが保健医療福祉分野における新プロジェクト「福岡100」である。

福岡市によると、平成27年国勢調査の結果では、直近5年間の人口増加数は政令市中1位だが、人口増7万5,000人のうち、生産年齢人口(15~64歳)の増加は5,000人に過ぎない。そして、次世代を担う14歳以下の人口増は1万人にも満たず、逆に65歳以上の人口増は6万1,000人と突出しているそうだ。また、2025年、福岡市における要介護高齢者は約10万人、認知症高齢者は約5.5万人になると推計されている。これは2014年の2倍近い水準であり、2025年以降も増加し続けると予測されているという。

同じ課題を抱える地方都市が多い中、なぜこのような構想が福岡市で生まれのか、そして将来的にどのような姿を目指しているのか。プロジェクトを推進する福岡市保健福祉局の二人にお話を伺った。


福岡市の人口と高齢化率の推移。福岡市の人口は2013年に150万人を突破したものの、2035年をピークに緩やかに減少。<BR />そして福岡市の高齢者の人口は、2010年の25万4000人が30年後の2040年には約2倍の49万7000人に増加する見込み<BR /> 出典:「国勢調査」《総務省》、「福岡市の将来人口推計(平成24年3月)」《福岡市》



100のアクションに挑むことができる福岡市の"強み"とは?


「福岡100」は、超高齢社会に対応する新たな社会システムをつくるための、"チャレンジ"だ。例えば、介護の負担軽減や質の向上という課題に対して、体系化された認知症コミュニケーション・ケア技法を活用し、より少ない担い手で介護のニーズに応えられるようにするプログラム教材の開発や、これまで断片的に管理されていた市民の健康・医療・介護の情報などを集約し、関係者間で共有することによって、個人ごとにカスタマイズされた様々なサービスの提供を目指す仕組みなど、2025年までに100のアクションを実践していこうというもの。

福岡市がこのような保健医療福祉問題に対して、全国の地方都市に先駆けて着手できた背景については、福岡市が持ついくつかの"強み"があると福岡市保健福祉局の仲野さんは語る。
「幸いなことに、福岡市は他の地方都市に比べて高齢化が約10年遅れているほか、政令市の中では10代・20代という若者の割合が最も高いなど、『都市としての若さ』があります。また福岡市の開業率は政令市と東京23区を合わせた21大都市中、3年連続で1位なのですが、開業をサポートする取組みの1つスタートアップカフェなど『チャレンジを応援する環境』が整っています。日本が直面する超高齢化と人口減少という問題は、世界のどの国も経験したことがないものです。つまり、これからは、これまでのやり方が通用しない、やってみないとわからない時代なのです。「福岡100」の取組みによって得られた知見については、日本だけに留まらず同じように高齢化に直面する都市と共有していきたいと考えています」。


「福岡100の取組み」のイメージ図



ICTを活用した地域包括ケアの実現「care4 FUKUOKAプロジェクト」


「care4 FUKUOKA(ケアフォーフクオカ)」とは、行政の持つ健康、医療、介護情報を集約・活用するための情報通信基盤「地域包括ケア情報プラットフォーム」の構築を中心としたプロジェクトだ。これまで各行政機関で断片的に管理されていた市民一人ひとりの病歴や健康診断結果、介護サービスの利用状況などの各種データを集約したデータベースを構築。これらのビッグデータを元に、地域のニーズや課題の見える化を行ない、科学的根拠に基づく最適な施策の企画・立案の実現を目指す取組みだ。様々なデータが個人に紐づくことにより出生から死亡までにかかる医療費や介護費の将来推計、主病別の介護認定状況など相関分析が可能となり、新たな仮説を見出す気づきや発見を促すことにもつながるとしている。

この「care4 FUKUOKA プロジェクト」が発足した背景として、同局の中田さんは「医療や介護の重症化の予防においては、その原因となる疾患や生活習慣を特定し初期段階で改善することが重要です。そのためには過去の疾患状況に加え、喫煙や飲酒、メタボの状況など、普段どのような生活を送っているのかといった行動履歴(ライフログ)を把握する必要がありますので、まずはこれらの情報を集約するための器を作りましょうというのが、そもそもの発想の原点でした」と話す。

また、高齢となり重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、高齢者本人や家族の同意のもと、行政の持つ介護情報や健診結果、普段の生活状況などをインターネット上で共有し、家族や担当医、介護従事者、ケアマネージャーなどの関係者が連携できる環境を整備することで、在宅での医療・介護を支える関係者の負担軽減を図るととともに、ケアサービスの質の向上を目指している。
さらに、各地域における医療機関や介護施設の状況、民間の提供する生活支援サービスなどをWeb上で集約・公開し、生活をする上で必要となるサービスや資源を誰もが簡単に照会できる環境を実現するなど、地域包括ケアシステムの実現に向けICTを積極的に活用している。


「care4 FUKUOKAプロジェクト」のイメージ図。大きく、1)ビックデータを管理するcareBASE、2)科学的根拠に基づく施策の企画・立案を支援するcareVISION、3)ケア対象者の生活状況を関係者間にリアルタイムに共有するcareNOTE、4)生活していく上で必要となるサービスや資源を幅広く提供するcareINFOの4つから成り立つ



市民参加型健康プラットフォーム「福岡ヘルス・ラボ」とは


市民の健康寿命延伸を目的に、市民や企業、大学、行政による共働・共創のもと、健康づくりや介護予防などにおいて市民ニーズや社会課題の解決に役立つサービスモデルの創出を促進する仕組み「福岡ヘルス・ラボ」。市民のニーズや課題からビジネスアイデアを磨き上げ、健康の維持や増進、介護予防に役立つ新製品やサービスの開発などの実用化検証及び社会への実装を目指すほか、開発されたサービスが市民の健康づくりにどの程度効果があったのかを評価し、エビデンスとして蓄積することを目指しているそうだ。

2017年6月にはキックオフとなるワークショップが開催され、19歳~54歳の男女約40名の市民が参加。「セカンドライフ」をテーマに、福岡市が迎えたい未来とそのために生活に潜む課題の掘り下げを行なった。
そこで出された課題をもとに、現在は認知症と介護をめぐる現状を直に体験してもらいながら、毎回30名程度の多様な市民とともに、「自分らしく在りたい・働きたい」「食事と薬」「介護者への支援」「予防・早期発見」など6つのテーマについて、事業コンセプトやアイデアを考えているそうだ。

また、2017年9月には、市民の健康づくりへの効果検証を目的として、市民参加型実証実験を公募し、11月に5事業者が実施予定者として選ばれている。そのうちウォーキングをテーマとする実証実験はすでに始まっていて、160名ほどの市民が参加しているそうだ。その他の提案も、準備が整い次第、福岡市内で実証実験を始める予定とのこと。


市内の老人福祉施設へ見学に行き、行ったワークショップの様子。実際に認知症の方と一緒に昼食や活動などをして過ごした。「個人の趣味嗜好に合った施設があるといいな」「当事者でなくても認知症や介護施設のことを知る機会が必要」などの声が上がり、職員の方とともにアイデアを出し合った



個人と社会、どちらも幸せになれる社会を目指して


今回は、地域包括ケアや市民の健康づくりを中心に「福岡100」の取組みの一部を紹介したが、このプロジェクトは“100のアクション”を実践していこうというだけあってまだまだある。
例えば、40~50代の現役世代やシニアが地域デビューできるきっかけづくりや、コミュニティの中で性別や世代を問わずゆるやかにつながり合い、地域の困りごとの解決に力を合わせて取り組む環境づくりなどがある。またシニアに関しては、これまで培った経験や技能などを活かし、シニア自らが中心となって、世代を問わず参加できるプログラムやイベントを行なう「R60倶楽部」の活動を活発化させたいそうだ。

「人生90年時代を迎え、いよいよ人生100年時代も視野に入ってきました。福岡市内にも2017年9月末時点で100歳を超える人が590名いらっしゃって、100歳を迎えることが以前に比べて特別ではなくなってきています。このような中、健康で過ごせる時間をいかに増やすか、そして、いかに長い人生を楽しみ喜びながら過ごせる社会をつくっていくか、この『福岡100』の取り組みを通じて、たくさんの皆さんと一緒に考え、動いていきたいです」と仲野さんは語る。

個人と社会の両方が幸せになれる健寿社会の実現に向けたプロジェクト「福岡100」。都市の高齢化問題に果敢に取り組む今後の動きに注目をしていきたい。


今回お話を伺った福岡市保健福祉局の中田和広さん(左)と仲野雅志さん(右)



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