2017年の不動産・住宅市場におけるさまざまな動きを振り返る

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平成はあと1年あまり。いろいろな出来事があった2017年


アメリカのトランプ大統領就任の話題とともにスタートした2017年。日本も少なからず影響を受け、外交面でいろいろと振り回された印象もある。北朝鮮情勢が緊迫化の度合いを深め、日本上空を通過する弾道ミサイルへの懸念も強まった。そんななかで「モリカケ問題」ばかりが繰り返された国会には、うんざりしている人も多いのではないだろうか。

九州北部豪雨など自然災害、高速道路での煽り運転による事故、アパートから9人の遺体が発見された事件、大相撲力士による暴行事件など、世間の関心を集めた出来事も多い1年だった。その一方で、天皇陛下の退位が決まり時代の大きな転換点を迎えようとしている。

それでは、不動産・住宅市場にとって2017年がどのような年だったのか、主な話題・出来事を振り返ってみることにしよう。


2017年は空き家問題や所有者不明土地問題が大きく取り上げられた一方で、既存住宅流通市場活性化に向けた動きも活発になっている。この1年にどのような動きがあったのだろうか。2017年の不動産・住宅市場を振り返ってみよう。



地価はバブル期の最高価格を超えたが、バブル期とは大きく様相が異なる


2017年3月に発表された公示地価(1月1日時点の価格)では、住宅地の全国平均がわずかながら9年ぶりの上昇となった。商業地は2年連続で上昇したものの、上昇幅は1.4%にとどまっている。7月に発表された路線価(1月1日時点の価格)でも、全国平均は0.4%の上昇だった。

2017年9月に発表された基準地価(7月1日時点の価格)では、全国平均が住宅地は0.6%の下落、商業地は0.5%の上昇となった。住宅地は26年連続の下落だが、下落幅は8年連続で縮小している。公示地価と違いが生じているのは対象範囲などが異なるためであり、傾向としてはほぼ同じだと考えてよいだろう。

公示地価、基準地価、路線価で共通する2017年のトピックといえば、いずれも最高価格がバブル期を超えて史上最高額を更新したことだ。しかし、バブル期と大きく様相が異なるのは、地価上昇の目立つのが大都市中心部の商業地域など、主に投資需要で支えられた一部のエリアに限られることである。「バブル崩壊」を危惧するような雑誌・ネット報道も目立ち始めているが、過去のバブル期と比較して考えるなら、そもそも「いまはバブルではない」といえそうだ。

国土交通省が四半期ごとに発表している「地価LOOKレポート」では、東京都内の住宅系地区の大半において過去1年以上にわたり「横ばい」状態が続いていることにも留意しておきたい。

ただし、マンション価格の上昇は続いている。国土交通省が毎月まとめている「不動産価格指数(住宅)全国」によれば、マンションは2017年7月まで53ケ月連続のプラスとなった。地方別にみると少し違うところもあるが、関東、関西はほぼ同じ傾向でプラスが続いている。


マンション価格だけが際立って上昇する傾向が続いている。国土交通省発表データをもとに作成



2017年に少し前へ進んだ空き家対策


既存住宅の活用を目指す民間の活動は年々活発になっている。一般社団法人リノベーション住宅推進協議会による「リノベーションEXPO JAPAN」は8回目となる2017年、全国8エリア16都市で開催された。

その一方で、法律・制度面でも空き家対策は少しずつ進んでいる印象だ。2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)にもとづく「空家等対策計画」を策定した市区町村は、2017年3月31日時点で20.5%だったが、2017年度中の策定予定見込みを含めれば51.2%とされている。2017年に「空家等対策計画」を策定した市区町村も多いだろう。

また、全国の自治体や関連団体による「全国空き家対策推進協議会」が2017年8月31日に設立されたほか、自治体の空き家バンクの情報を集約・一元化した「全国版空き家・空き地バンク」の試行運用も、株式会社LIFULLが9月28日、アットホーム株式会社が10月25日に始めている。

まだ計画や仕組みが作られた段階であり、それぞれが効果を発揮するのはしばらく先になるかもしれない。対策の進捗が早いのか遅いのかといった評価は分かれそうだが、少しずつ前に進んでいることは確かだといえそうだ。

さらに、2017年10月25日に施行された「新たな住宅セーフティネット制度」では、一戸建て住宅の空き家を活用する仕組みも取り入れられた。また、2017年度の税制改正では「長期優良住宅化リフォーム減税」の制度も創設されている。既存住宅の性能向上や活用、空き家化の予防、空き家の活用など、さまざまな法律・制度を絡めながら空き家対策が進められている。

なお、2015年の相続税課税強化も一因となって増加が続いていたアパートなど「貸家」の着工だが、国土交通省のまとめによれば2017年5月まで19ケ月連続の増加だった。しかし、6月以降は連続して減少となっており、一時の「貸家バブル」は沈静化しつつあるといえるだろう。


少しずつ進んでいる空き家対策



対策が急がれる所有者不明土地問題


2017年は空き家・空き地による「都市のスポンジ化」もクローズアップされた。さらに「所有者不明土地」をめぐる議論も活発になっている。

「所有者不明土地」については2016年3月にも公益財団法人東京財団によって問題提起されていたが、2017年6月26日に「所有者不明土地の総面積が九州より広い約410万ヘクタールに達する」という推計結果を、一般財団法人国土計画協会の所有者不明土地問題研究会(座長:増田寛也元総務相)が公表したことから注目を集めた。

その後、9月12日からは国土交通省内に設置された「国土審議会土地政策分科会特別部会」により、所有者不明土地問題に関する制度の方向性などについて議論が重ねられている。その中間とりまとめによれば、「不動産登記簿上で所有者の所在が確認できない土地」の割合がおおむね20%程度とされるものの、他の資料などを用いたうえで「最終的に所有者の所在が不明な土地」(最狭義の所有者不明土地)は、その50分の1ほどの0.41%とされている。

不動産登記制度に問題があることは明らかだとしても、登記とそれ以外の部分で情報を共有できない行政のあり方にも改善すべき大きな課題があるといえるだろう。

2014年8月1日に施行された改正都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」の作成も全国の自治体で進められている。2017年12月14日時点では114市町で作成・公表済み、30市町(1市4町にまたがる都市圏単位の計画を1つ含む)で作成中(国土交通省調べ)となっている。作成済みの市町を含め、全体では357市町(2017年7月31日時点)が「具体的な取組みをしている」とされ、「立地適正化計画」の作成はこれからも順次進んでいく。

この「立地適正化計画」において都市機能誘導区域または居住誘導区域から外れた区域では、空き家・空き地が適切に管理されないケースが増えることも懸念される。所有者不明土地の問題も含め、総合的な対策が急がれるところだ。


都市に空き地やシャッター商店などが増える「都市のスポンジ化」



不動産・住宅市場のあり方は大きく変わろうとしている


2015年頃から活発になってきた「不動産テック」の動きだが、2017年も「価格推定エンジン」を活用したサービスなど、不動産分野への新規参入が目立った。
この分野で先行した株式会社LIFULLは2017年4月に「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」の公表をスタートさせている。これは国際指針に則って算出される住宅価格指数であり、国内不動産市場の透明化、国際化を目指したものだ。今後も「住宅価格の見える化」は試行錯誤を重ねながら、さまざまな形で進化していくことだろう。

2017年10月1日には「IT重説」が解禁された。契約前の宅地建物取引士による重要事項説明はこれまで対面によることが大原則だったものの、テレビ電話などを用いたオンラインでの説明が認められた。まだ賃貸借契約のみが対象であり、売買契約への適用はいつになるか分からない。だが、将来的には全面解禁されるのが抗うことのできない時代の流れであり、ようやく第一歩を踏み出したというところだ。

既存住宅流通市場の活性化に向けた取組みも徐々に進みつつある。一定の要件を満たす既存住宅に対して、国の関与のもとで事業者団体が標章を付与する「安心R住宅」の仕組みがつくられ、その事業者団体の登録申請受付が2017年12月1日に始まった。

また、既存住宅の売買前に実施する建物状況調査(インスペクション)について、顧客に対しインスペクション業者のあっせんの可否を明示し、実施した場合には買主に対しその内容を重要事項として説明することを義務付けた改正宅地建物取引業法は2018年4月1日に施行される。その運用をめぐってはいくつかの問題点が指摘されているものの、インスペクションに対する消費者の認知は進んでいくことだろう。

さらに、一般住宅地も含めて一定のルールのもとで民泊を解禁する「住宅宿泊事業法」(民泊法)が2017年6月9日に成立、6月16日に公布され、2018年6月15日に施行されることになった。民泊営業に伴う受付は2018年3月15日に始まるため、その前に条例をつくろうとする自治体の動きも活発になっている。

120年ぶりの大改正となる民法(債権法)の改正法案は2017年5月26日に可決・成立した。改正法は2020年4月1日に施行されることになったが、不動産取引に関わる改正点も多いため、さまざまな面で対策が必要だ。宅地建物取引業者が改正内容を理解しなければならないことはもちろんだが、一般消費者も「民法が変わる」ことについて十分に留意しておきたい。


住宅価格の見える化、IT化なども徐々に進みつつある。さて、2018年はどんな年に?



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