わざわざ引っ越しても入りたい。町田自然幼稚園の魅力とは?

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多摩丘陵の雑木林の中に立地。豊かな自然にプラスアルファの魅力


町田自然幼稚園があるのは東京都町田市の、JR・小田急線町田駅から少し離れた住宅地。多摩丘陵の斜面を生かした敷地は約1600坪(5280m2)と広大で、雑木林の緑の中にある。子どもたちはその中を走り回ったり、ドングリを拾ったり、虫を眺めたりとそれぞれが好きなように遊んでいる。走っても、飛び跳ねても怒られかねない都心の公園を考えると、ここはエネルギーに満ち溢れた子どもたちが好きなように身体を動かせる天国のような場所だ。敷地内の高台に位置する木造の建物には大きな窓が取られており、開放的で明るい。園庭だけでなく、建物内も子ども達にとっては楽しい空間のようだ。

空間があるから楽しいというだけではない。この園と、町田市内の認定こども園正和幼稚園を運営する学校法人正和学園は、子どもが主体的にやろうとしていることに対して、あれはダメ、これもダメと言うことをしない。子ども達の主体性を尊重、意欲やチャレンジ精神、友達との協調性などを体感できるよう、アクティブ・ラーニングという体験学習を積極的に取り入れているのである。

アクティブ・ラーニングは幼稚園では平成30年度から(小学校では32年度など子どもの年齢によって時期は異なる)実施される新しい学習指導要領に盛り込まれているもので、文部科学省は「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)」と表現している。日本全体ではこれから力を入れていこうとする学習方法だが、正和学園では昭和30年代に両幼稚園が誕生した時以来、ずっとこのやり方で子どもたちと接してきたという。50年以上も先を行っていたわけである。


園内では子どもたちの元気の良さが印象的だった



10代の夢を20代で実現したおばあちゃん先生


昭和30年代といえば、日本の国土、モノの考え方も大きく変わった時代である。都市化が進み、経済効率が最優先されるようになり、教育の場面でも無駄を排し、指導を強化する、いわゆる管理教育が始まったタイミングだ。そこにあえて子ども中心を謳う幼稚園を作ったのは現理事長の齋藤祐善氏の祖母で、1989年に亡くなるまで「おばあちゃん先生」と慕われた齋藤景子(あきこ)氏。文部省(当時)に勤め、ガールスカウト、少年団、青年団などといった地域における教育・奉仕団体に関する制度を創設した片岡重助氏の長女である。

聞くと、このおばあちゃん先生が並みの人ではない。女学校(旧制の中学、現在の高校に当たる)入学後、14歳でお金がかかるからと学校に行けない人が多くいることを知ると、「お金のかからない学校を作ろう」と思い立ち、22歳(!)でそれを実現してしまったというのだ。そのために女学生時代には休日、弁当を持って土地探しに歩いていたという。そうやって見つけた東京都八王子市の土地1万坪を嫁入り支度の代わりと父を説得して買ってもらうと、さらにそれを売って東京都世田谷区用賀の土地を購入。立退き交渉までを一人でやってのけたという。

最初の学校は1937年に設立された正和家政寮。貧しくて学校に通えない女子工員のための全寮制の学校だった。2年後には玉川女子行学園を設立。これは文部省(当時)に正式に認可された学校で、開校時29人だった生徒が3年後には400人を超すまでになったという。その学校は五島育英会などとの合併を経て、現在は東京都市大学グループの一翼を担っている。


正和学園が作った電子書籍「子ども中心」には小学生時代からのおばあちゃん先生の逸話がいくつか掲載されているが、その行動力には驚くばかり



アート、自然、食、動物……、様々な体験ができるプログラム


その後、1964年に町田自然幼稚園、1968年に正和幼稚園を設立するのだが、本人自身がやりたいことを親に妨げられることなく実現してきた人である。また、父親である片岡氏も欧米留学の経験があり、当時のアメリカで最先端だった経験学習の理論を学んだ経験があった。そうした考え方が生きた幼稚園と考えれば、主体性や本人の興味を重んじる教育方針は当然といえば当然なのだろう。

その方針に従い、園では興味・関心や体験のきっかけとなるプログラムを多数用意している。たとえばゲストティーチャーを招いての時間。陶芸家であり、ミュージシャンでもある浅井竜介氏を招いた「ARTのじかん」、町田市の有志が集まり、世界的に活動するNPO法人JWCによる世界の野生動物を知る「動物のじかん」、NHKのテレビ番組で知られるひろみちお兄さんの体操クラブが指導する「からだのじかん」、プロ・ナチュラリスト佐々木洋氏がガイドして野山を歩く「しぜんのじかん」などなど、バリエーションは豊富だ。

近隣の契約農家の畑を利用、自分たちで野菜を育て、収穫する経験もする。もちろん、収穫した野菜は給食で食べる以外に、自分たちで調理して食べることも。5歳児は田んぼで米、もち米を植え、収穫したもち米で餅つきをする。夏のお泊り保育では園と隣接、園長が住職と勤めているお寺簗田寺(りょうでんじ)でキャンプファイヤーや宿泊を体験したり、姉妹園である「しぜんの国保育園」の動物村で動物たちに触れる体験も。うらやましいくらい、いろいろな経験ができるのである。どうしても我が子をこの幼稚園に入れたいと引っ越してくる人がいるというのも納得できる話だ。


身体を動かし、自然や植物、アートと触れ合う子ども達。大人から見ても面白そうだ



幼保連携型認定こども園の強みとは?


歴史と変わらぬ教育方針が特徴というわけだが、同時に時代の変化にも敏感だ。2015年には前年に改正になった子ども・子育て関連3法に基づき、同園は「幼保連携型認定こども園町田自然幼稚園」になっており、これは地域の子どもたちに最善の環境を提供するためと齋藤氏。

同園では幼稚園と保育園は空間としては分かれておらず、いろいろな年齢の子どもたちが同じ空間で過ごす。「幼稚園、保育園を分けているのは時間。10時~14時までは幼稚園の教育の時間で、そこでは年間カリキュラムに基づいた体験プログラムを用意。その前後の時間帯には生活や遊びを通した学びを柱にしています。こうすることで教育、保育も一緒に受けられるようになります。また、園に通っていない子ども、親も子育て相談や親子交流の場に参加できるようになったので、これまで以上に多種の子育て支援事業が実施できるようになりました。もうひとつ、大きいのは地域のすべての子ども達と家庭を支援できるようになったということです」。

認定こども園、幼稚園、保育所、地域型保育は施設によって対象となる子ども、親の就労形態が異なっているが、0歳~5歳までと対象年齢が幅広く、かつ保育も教育も受けられるのは認定こども園だけ。第一子を家庭で保育していた状況から仕事に復帰、さらに第二子誕生で休職と母親の就労形態が変化しても、認定子ども園なら園内の手続きだけで通い続けられるという。

2016年には学童(小学校6年生まで)の一時保育事業を開始、同年には町田駅前に小規模保育所「つながり保育園・まちだ」を併設した町田駅前こども園保育送迎ステーションを作った。1~2歳の間は駅近くの保育所で預かってもらい、3歳になったら送迎バスでこども園に通える仕組みである。これなら、親は通勤時に子どもを送迎ステーションまで連れていくだけで、駅から離れた子ども園への通園が可能になる。2017年には駅近くにもうひとつ、送迎ステーションが誕生。ここでは1~5歳児の一時預かり保育、2歳児のプレキンダー保育(3歳児から子ども園に進級)も行っている。


子どもたちに囲まれる齋藤氏。積極的に法改正に対応、新たな試みに取り組んでいる



法改正で可能になった新制度を利用、より良い保育・教育を


さらに2018年度には代々木上原に企業主導型保育所もオープンする予定だ。これは2016年に新しく創設された仕組みで企業が社内などに設ける保育所のこと。複数企業が共同で設置することも可能で、これまでは認可外の扱いだったが、新制度になって認可保育所同様の運営費が助成されることになった。これを利用して建物、運営費を、かつクラウドファンディングを利用して土地代を賄った。

2015年以降、畳みかけるように新たな試みが行われているが、これは皆、法改正で可能になったことという。「送迎ステーション、企業主導型保育所、コンビニ跡地を利用した小規模保育所など、これまでできなかったことができるようになりました。また、クラウドファンディングは保育所利用者だけをお客様にせず、一緒になって子どもの育ちを考えてもらうために考えた手段です」。

なるほどと思いながら聞いたが、ひとつ、不思議に思ったのは他ではこうした動きをさほど聞かないという点だ。保育所問題では数ばかりが取り沙汰され、正和学園のように質の向上を念頭に新制度に取り組む例はさほど多くないように思われる。

「保育の現場は人手不足で忙しいところが多く、新しい制度に取り組む余裕がないのが実状。幸い、当園は歴史があり、スタッフがしっかり現場を支えてくれているので、私が外に出られる。だから時代の要請を考えた取り組みができるのです」。

保育所の数が足りていない現在、数を増やそうという動きは大事だが、一方で幼少期の体験は人間形成に大きな影響を与える。量と質、その両方に目配りのできる経営者がもっと増えて欲しいものである。



広々とした園舎。園庭も広ければ建物内も広く、子ども達は楽しそうに身体を動かす



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