宅配の全国ネットワークを地域課題に活かす。ヤマト運輸が取り組む「見守り支援」「客貨混載」とは?

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全国ネットワークを活かし、地域活性化のお手伝いなどを行う


少子高齢化や過疎化、地域経済の停滞といった様々な問題に直面している日本。都市部に人が集まる一方、人が流出する地方は電車や路線バスの減便や廃止など、ますます住みにくくなることでさらに衰退するという悪循環に陥っている。
そんな現状に歯止めをかけるべく、高齢者見守り支援や、旅客と貨物の輸送・運行を一緒に行う「客貨混載」など、グループをあげて地域課題の解決にあたる取り組みを行っているヤマト運輸に取材に行ってきた。

「弊社は『世のため人のため』という変わらぬ理念を持って事業を行っており、事業を通じて『安全・安心に暮らせる生活環境の実現』『地域経済の活性化』など、地域課題、社会的課題の解決に取り組んでいます。CSRから一歩踏み込んだ、CSV(Creating Shared Value=社会的課題を本業を通して解決)を目指し、様々な地域の課題に合わせて役立つモデルをつくることを目指しています」と話すのは、ヤマト運輸株式会社 法人営業推進部 プロジェクトマネージャーの山口直人さん。

次の段落から、同社がどのような取り組みを行っているかを紹介しよう。


全国ネットワークで宅急便事業を行うヤマト運輸。そのネットワークを有効活用し、「高齢者見守り支援」や「客貨混載」など、地域の活性化などに役立つ取り組みを行っている。



全国網の宅配ネットワークを活かし、生活と経済の2軸で豊かな社会の実現に貢献


ヤマト運輸の宅急便サービスには約6万人のセールスドライバーが従事。約4000の集配拠点に、約21万店の取扱店。約4万台のトラックは1日に地球50周分の距離を走るという。
「宅急便の1日あたりの取扱個数は約500万個。その個数分お客様と接してコミュニケーションを取る機会があります。この機会をどのように活かしていくかが重要だと考えています」と山口さん。

全国を網羅する同社の宅急便事業。「全国」というのがひとつのポイントとなる。
「自治体様も企業様も特に中山間地域等でかつてのように拠点を持ち人員を配置してきめ細かなサービスを提供するのが難しくなってきている現在、弊社の宅配ネットワークを活用して、従来モノを届けるためだけの事業所ネットワークだったものに付加価値をプラスすることで、社会的なコストを抑えながら地域の生活や事業の維持を支援し、豊かな社会の実現に貢献したいと考えています。

その貢献方法を簡単に話すなら、生活と経済の2軸で弊社のインフラ機能を活かして役立ちたいということです。生活面では、見守り支援や買い物支援、客貨混載など。経済面では、農水産品の販売支援や観光支援などを地域の自治体をはじめとしたステークホルダーと共に取り組んだ結果、徐々に広がってきているところです」


単体で約16万人、グループ全体で約20万人の社員を抱えるヤマトグループ。人材ほか同社が持つ経営資源を豊かな社会の実現のために使う



お買い物便配達時の見守り支援(高知県大豊町)と、独居高齢者の見守り支援(兵庫県西脇市)


同社が行う見守り支援の一例として、高知県大豊町と兵庫県西脇市の事例を紹介する。
高知県大豊町は人口3834人。そのうち65歳以上が2145人(2017年11月末現在)。高齢化率約56%の限界自治体だ。この町で買い物が困難な方のお手伝いと高齢者見守りを組み合わせた取り組みを行っている。

「大豊町は早くから高齢化が進み、買い物の不便さが顕在化していていました。地域商店が撤退や廃業をし、移動販売をされている方も高齢化している状況で、やめるにやめられないご様子でした。大豊町は典型的な中山間地域で、自治体様も役場の方々を中心に高齢者の見守りをしようとしているがなかなか見きれないという課題を抱えていました。そこで、地域の方々と相談しながら生活者ご本人が直接来店しなくても買い物ができるスキームづくりを進め、地域の商店を束ねたお買い物支援モデルをつくりました」

このサービスは「大豊宅配サービス」という名称で展開。高齢者を中心とした生活者が電話やファックスで懇意にしている店に注文をするシステム。注文を受けた品を同社のセールスドライバーが店で当日集荷を行い、夕飯に間に合うように自宅まで届けて代金を回収するサービス。宅急便ネットワークを使って買い物の支援を行いながら、同時に見守り支援も行っている。
「自治体様に1件あたりいくらという補助金をいただきながら2012年から継続している、買い物の不便さの解消と見守り支援を両立したモデルです。利用者の体調の変調に気付いた際にはすぐに連絡することで、自治体様にも喜ばれています」

見守り支援に特化しているのが兵庫県西脇市での事例。西脇市は人口41177人。そのうち65歳以上が13077人(2018年1月1日現在)となっている。民生委員の高齢化による担い手不足、また行政としても高齢者の見守りに目が行き届かない現状を打開すべく、同社が65歳以上の独居者にしぼり月に1回定期的な訪問を行っている(2016年5月~)。

「毎月訪問するための定期的な刊行物を自治体様に用意していただき、その刊行物を弊社のセールスドライバーがお届けしながらお元気確認を行っています。いらっしゃる、いらっしゃらない、不在が続いているという情報と、お届時のお元気確認を行い、何かあればすぐに報告するようにしています」

別の自治体では「最近外出していますか」「ご飯はしっかり食べられていますか」などの具体的な質問をして、その情報を報告するような取り組みもあるという。
「それほど高い金額ではありませんが、荷物をお届けする運送費・情報提供料のような形でコストを自治体様にご負担いただき、運営を行っています」


兵庫県西脇市では、定期刊行物をお届けする際に見守り支援を行っている



客貨混載による地域生活支援~岩手県県北バス


過疎化が進む中山間地域などを中心に、路線バスの減便や廃止が相次いでいる。高齢化が進むと自分で車を運転することが難しくなる。さらに、外出しなくなることによる社会性の低下や運動不足による体調の悪化、買い物に行けないなど、別の問題も生まれる。過疎化が進む自治体の多くは、補助金を投入しながら赤字の路線を維持しているのが現状だ。

「中山間地域や沿岸部における過疎化・少子化・高齢化の進行などで路線バスが廃止されるなど公共性の高い地域の足が維持できないという課題を聞き、弊社で何かできないかを考えました。弊社の物流ネットワークは維持するうえで、効率化も図るのは大きな課題です。弊社の物流ネットワークと、従来人を乗せていた旅客のネットワークがうまく時間と場所が重なり、それぞれが満載でなく空きスペースがあるのであれば、うまく組み合わせることでお互いに効率化できるのではないかと考えて始めたのが『客貨混載』です」

岩手県北バスとの客貨混載事業は2015年6月から開始。いわゆる拠点間輸送と、営業所から配達エリアまでの一部をバス代替にして課題を解決できないかと考えて始めたものだ。従来は岩手県北上市の物流ターミナルから宮古営業所まで大型トラックで幹線輸送を行っていた。それを物流ターミナルから宮古営業所まで行く途中にある盛岡西営業所まで大型トラックで幹線輸送を行い、同営業所から主に重茂半島行きの宅急便を「都市間路線バス」に積み替え、宮古営業所まで輸送を行う。

同時に、宮古営業所から約18キロ離れている重茂半島まで集配車両で輸送していたものを、宮古営業所から重茂半島までを「重茂路線バス」で輸送し、ヤマト運輸のセールスドライバーに宅急便を受け渡すという流れで運営を行っている。


上/岩手県北バスの荷台スペースの写真 下/宮崎交通との客貨混載は、路線バス内に保冷専用BOXを搭載し「クール宅急便」の大量輸送に対応したのが特徴



客貨混載による地域生活支援~宮崎交通


もうひとつ紹介するのが、2015年10月から行われている宮崎交通と連携した事例。基本的なスキームは前記の岩手県北バスと同じで、営業所と配達エリアを従来のトラックの行き来からバスに代替するというもの。
従来は西都市東米良地区と西米良村のお客様に宅急便を配達する際、西都市にある西都宅急便センターから約50キロの道のりを約1時間30分かけて集配車両で輸送していた。それを西都宅急便センターから宮崎交通の西都バスセンターに輸送し路線バスに積み込む。東米良診療所(西都市)と村所(西米良村)のバス停留所でそれぞれの地域を担当するセールスドライバーに引き渡すとともに、両地域で集荷した宅急便を路線バスに積み込み、宮崎交通の西都バスセンターでセールスドライバーに引き渡すという流れで運営を行っている。

この取り組みの中で、路線バス内に保冷専用BOXを搭載し、「クール宅急便」の輸送に対応しているのが進化したポイントだ。
「西米良サーモンという地域の水産品を、香港まで国際クール宅急便でつなげて、農水産品の海外輸出のお手伝いをすることで、物流の効率化のみならず新たな価値の創出に取り組んでいます」

客貨混載により西米良サーモンの集荷締切時間が13時から16時30分と遅くなり利便性が高まったことに加え、導入前は九州域内のみの発送だったものが導入後は全国、海外へと販路が拡大されるなど、地域経済の活性化に貢献。また、保冷専用BOXを搭載してからはヤマト集配車両と並行輸送でなく、バスのみの運行で運用されている。

客貨混載がどのようなメリットをもたらしているのか。
まず、ヤマト運輸ではセールスドライバーの移動時間や燃料費、CO2の削減に貢献。また、お客様の地域に滞在できる時間が増えたことで集荷時間等の要望に細かく応えられるようになったほか、休憩時間の取得にもつながっている。バス事業者としても荷物を運ぶことによる新たな収入源の確保により、バス路線の存続がしやすくなるなどのメリットがある。バス利用者は路線の維持はもちろん、車で持ち込まないと当日出荷できなかった産物なども、セールスドライバーが遅くまで滞在できることで午後に荷造りしても集荷に間に合い、新鮮な産物を当日発送できるなどのメリットを生み出している。

「見守りや買い物の支援は基本的に何らかの価値に対して対価をいただくモデルですが、客貨混載は基本的に弊社がバスに荷物を積ませていただく、お金を支払う側になります。コスト削減を原資に行う取り組みとして始めましたが、そう簡単ではありません。空いた時間やトラックにはない輸送モードを使ってどう新しい価値を生み出していくかが、取り組みを持続させる、ないしは広げていくために重要だと考えています」

ただ、客貨混載に関しても本質的には人は増えずに減っていくので一時的な対処であり、根本的なソリューションではないと話す山口さん。
「生まれた時間で別の取り組み、例えば見守りや買い物支援、ほかにも地域産品がより売りやすくなるなど、別のメリットを地域に提供することが必要だと思っています。宅急便を中心に、グループ会社が持っている様々な機能を、ただ物を運ぶだけでなくどう生かして付加価値を生み出していくか。私たちのネットワークを地域の発展にいかにご活用いただくのかが今後の取り組みの課題で、各事業所や地域の皆様と一緒に考え、地域活性化に取り組んでいきたいと思います」

■取材協力/ヤマト運輸
http://www.kuronekoyamato.co.jp/


お話をうかがったヤマト運輸株式会社 法人営業推進部 プロジェクトマネージャーの山口直人さん。「現在10地域、18の路線(13社)で客貨混載を行っています。客貨混載や見守り支援などを皮切りに様々な提案を行いたいと考えているところです。事業性と地域課題の解決の両立があるべき姿。そこを目指していきたいですね」



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