自転車を活用した地域振興も。自転車活用推進法の施行で何が変わるのか?

LIFULL HOME'S PRESS

自転車を活用した地域振興も。自転車活用推進法の施行で何が変わるのか?の記事画像

増加し続けている自転車保有台数


ここ5~6年で自転車を利用する人が増えたと感じる人は多いのではないだろうか。街中の移動や通勤だけでなく、日本のあちこちの観光地などで全身をウェアをキメて疾走する人たちも目にする。
実際に日本で自転車を利用する人は年々増えており、その保有台数は約7,200万台(2016年)と自動車の約8,000万台と同程度になっている。また、一人当たりの保有台数は0.67台(2005年)となっており、欧米先進国と比較しても決して少なくない。この状況は一過性のブームではなく、日常の移動手段、そして一般的な趣味として根づいているということだろう。

そんな中、2017年5月に「自転車活用推進法」が施行された。これは、安全に配慮しつつも自動車依存を減らして、文字通り自転車の活用を推し進めようとするものだ。
将来的にどのような取組みが考えられているのだろうか。今回はその具体的な内容について紹介したい。


上:自転車保有台数の推移(国土交通省資料をもとに作成)。下:一人当たりの自転車保有台数(国際比較)。日本は欧米先進国と比較してもけっして少なくない(出典:「自転車施策をとりまく環境」(国土交通省))



自転車を利用に対する基本方針を示している「自転車活用推進法」


そもそも、国が自転車の活用を推進する理由は、
1.自転車は二酸化炭素を排出しないので環境にやさしい移動手段である。
2.災害時において機動的である。
3.健康の増進に役立つ。
4.交通混雑の緩和に役立つ。
5.交通死亡事故の減少に貢献する。
といった経済的・社会的な効果を見込んでいるためだ。

自転車の規制については、過去40年で改正が続き、走行するのが車道と歩道とで曖昧な時代も存在した。現在は、2011年に警視庁から「自転車は車両であり、車道走行であることを改めて徹底する」ことが全国の警察に通達されており、「自転車は、車道が原則」となっている。
※歩道に「普通自転車歩道通行可」の標識等がある場合や駐車車両などのために車道の左側部分を通行するのが困難な場所を通行する場合などを除く

しかし、自転車で狭い車道を走っていると、追い抜かされる自動車に接触しそうになるし、ときには迷惑そうにクラクションを鳴らされるなど、安心して走ることができない道路が多いのが現状だ。東京都が2015年に公表したアンケート結果によれば、自転車利用者のうち、走行する位置として「歩道」と回答した割合は50%以上を占めており、このうち、歩道を走行する理由としては「車道を走ると怖いから」が67.7%存在している。

こうした状況を踏まえ、今回の「自転車活用推進法」は、自転車の走行に対して罰則などで"規制"するのではなく、自転車をよりよく快適に利用するための基本方針や理念を、主に地方自治体に向けて示している。


出典:東京都『自転車・歩行者の利用実態 Webアンケート』(結果速報) 平成27年11月20日



自転車が快適に走れる道路を整備


具体的には、自転車専用道路等の整備や観光来訪の促進など、14項目の施策を検討・実施するように求めている。このうちの主な施策の一つが「自転車専用道路等の整備」である。
近年、縁石などの工作物で分離された自転車道、自転車が専用で通行する車両通行帯、自転車歩行者内の自転車通行位置の明示された矢羽根型路面表示など、歩行者と分離された自転車通行空間の整備が進みつつある。しかし、一般道路の総延長が約1,266,000km、歩道設置区間が約175,000kmなのに対し、歩行者と構造分離された自転車通行空間は約1,800kmに留まっている。
今後本格化させる取組みのうち、「自転車活用推進法」を後押しするものとして「自転車ネットワーク計画」がある。これは「各自治体で取り組まれてきた自転車通行空間の整備が、取り掛かりやすい箇所から進められてきた断片的なものであったため、その効果が限られたものになっている」という問題に対して、安全で快適な自転車通行を実現するためにネットワーク路線を選定し、整備する計画。ネットワーク路線とは、公共施設・学校・商業施設・住宅地などを結ぶ路線や歩行者と自転車の事故が多い路線などだ。

2012年に同計画の作成・整備を推進するために「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が作成され、計画を策定した自治体が急増した。2016年4月現在で92の都市が策定している。


自転車通行空間の整備の形態。自転車が通れる空間を構造的に分離させたり、通行位置を道路に明示したり、様々な方法がある<BR />(出典:「安全・快適なサイクルツーリズム環境の創出に向けて」(国土交通省))



自転車を活用した地域づくりや観光による地域振興も


自転車活用推進法では、自転車専用道路等の整備の他にも、様々な基本方針が示されている。中でも「シェアサイクル施設の整備」や「公共交通との連携促進」、「観光旅客の来訪の促進」などの自転車を活用した地域づくりの推進も今後本格化させる取組みとして挙げられている。
平成28年10月時点で、コミュニティサイクルは87都市で導入されているが、今後は、地下鉄駅周辺やバス停周辺に、シェアサイクルポート(貸出拠点)や駐輪場の整備を計画的に誘導し、自転車と公共交通間の接続を強化するという。
また、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ「しまなみ海道」に設けられた海峡横断自転車道に代表される「サイクルツーリズム」の取組みも各地で広がっている。地域の観光資源を生かし、外国人旅行客の誘致による地域振興を目指すものだが、サイクリングルートの案内表示が各地で統一されていないため、今後は空港や鉄道駅などの交通結節点からサイクリングロードまでの案内表示のあり方について、地域の独自性を尊重しながらも、ガイドラインをとりまとめるべきだとしている。
この他にも、健康増進や趣味としての自転車利用を推進するために、各都道府県サイクリング協会が地域の特性を盛り込んだサイクリングコースを推薦している。日本サイクリング協会(JCA)では100選のコースを選定中(現在4コース)で、現在もコースの募集を行っている。

このように自転車が走りやすい国として舵を切った日本。しかし、街を見回せばまだまだ道半ばということが分かる。今後も道路だけでなく、事故の際の損害賠償保障制度や国際交流の整備など、まだまだやらなければならないことが山積している。一日も早くそれらの課題が解決し、誰もが楽しく快適でエコな自転車生活がおくれるようになってほしい。


自転車と公共交通の接続を強化した事例<BR />出典:国土交通省『自転車活用の推進に向けて~多様なモビリティへの対応~』



[関連記事]
人の道
路面電車のある街~広島に学ぶ
『ONOMICHI U2』。サイクリストと地域のコミュニティとして生まれ変わった築73年の海運倉庫
都市のバス停大変貌。民間がバス停上屋を設置する仕組みとは?
「開かずの踏切」新たに529ケ所が指定。その現状と解消に向けた動き

出発:

到着:

日付:

時間:

test