飛騨古川の魅力を方言で発信。飛騨市「しゃべりばち☆おとめの会」【まちづくりに女子力を!②】

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地元の主婦グループが大好きなわがまちのために立ち上がった


経済産業省の主催で2017年1月18日に開催された『特定テーマ型研修~女性の視点を活かしたまちづくり~』。女性がもつ生活者・消費者としての感性や経験をまちづくりにどう活かすのか、2件の先進事例から学ぶとともに、受講者同士の交流を深めることを目的とした研修だ。各地でまちづくりに関わる約30人のまちづくり女子(男性の受講もあった)が集まった。

その研修レポートの2回目をお届けする。(前回記事は、女性の視点を活かしたまちづくり。新潟市の「沼垂テラス商店街」再生事例【まちづくりに女子力を!①】を参照)今回は、女性活躍の先進事例として紹介された、岐阜県飛騨市古川町の「しゃべりばち☆おとめの会」の発表を中心にお伝えしよう。

「しゃべりばち☆おとめの会(以下、おとめの会)」は、2012年夏に結成された古川町商工会のグループ。30代から60代の主婦たちで結成され、この研修には現在活動している6人全員が登壇した。ちなみにおとめの会のメンバーは総勢7人で、この日、欠席となったメンバー1名は子育ての都合で活動休止中とのこと。

さて、お揃いのピンクのTシャツに羽をつけ、ハチのようないでたちで登壇したメンバーたち。
「私たち、アニメ映画『君の名は。』の舞台にもなった、映画館のない飛騨市から豪雪のなか、やってきました!」というおとめの会メンバーの第一声で発表が始まった。
飛騨市古川町は岐阜県北端に位置するまち。もとは岐阜県吉城郡古川町で、2004年に河合村、宮川村、神岡町と合併し、飛騨市となった。現在、飛騨市全体の人口約2万5000人のうち、古川町は約1万5000人。

近年は人口減で古川町の商店の数も減り、かつて11あった商店街の数が7つにまで減ってしまっているという。

「5年前、私たちは悶々としていました。まちには活気がないし、冬は寒いし…。地元の人たちと顔を合わせれば暗い話ばかり。でも不満ばかり言っていてもしょうがない。自分たちで何かできることをやってみようと思い立ったのが、この会を結成したきっかけです。メンバーのほとんどが地元商店街の店や事業所のおかみさんで、古川のまちが大好きです。住んでいる人たちがまちの魅力やよい点を実感できるような活動をして、地域を盛り上げていけたらいいなと考えました」。

そんなとき、「まちとひと 感動のデザイン研究所」代表・藤田とし子さんの講演会に参加したことで活動が具体化していった。前回の記事でも紹介したように、この研修のファシリテーターである藤田さん。全国各地で地域活性化に向けた講演活動などを行なってきたプロフェッショナルである。そんな藤田さんが授けてくれたノウハウが、まち歩きマップを作ることだった。それは観光客用のマップではなく、住民自身による住民のためのマップ。まちの知られざる魅力を地元の人に伝えることを目的にしたもので、藤田さんが各地で広め、地域振興につながったケースも少なくないという。
「私たちもやってみよう!」と一致団結。家業の店の仕事や家事、子育てのかたわら、マップ作りに着手した。


登壇した「しゃべりばち☆おとめの会」のメンバーたち。飛騨弁交じりの楽しい語り口で、研修受講者をなごませてくれた



手作りのまち歩きマップを作製、地元の方言にもこだわる


藤田さんの助言を受けながら、おとめの会メンバー各自が商店街を歩き、店の人に話を聞いて取材。

「地元の人も意外と知らないディープな情報を掘り下げていきました。大切にしたのは私たち主婦の目線。『あの店はなんでおいしいんだろう?』とか、『あのお店のおっちゃん、若々しいよね』という、素朴な興味を大事にして取材しました。一番最初に作ったのは、私たちの行きつけのお店マップ。主婦が気軽に行ける飲食店や飲み屋さんを30軒紹介しました。めちゃくちゃ力が入っていますよ!」

おとめの会メンバーがマップ作りでこだわったことは、もうひとつ。掲載する店を紹介する言葉は飛騨の方言(飛騨弁)を使うということだ。

「私たちがいつも話しているのは飛騨弁。若い人たちは地元の方言は格好悪いとか思いがちですが、私たちの大事な資源として伝えていきたいなと思ったんです」と、おとめの会メンバー。ちなみに会の名前である「しゃべりばち」は、おしゃべりを意味する飛騨弁なのだそうだ。

そうして2012年10月にマップが完成。「しゃべりばちがこっそり教える♪行きつけマップ~よさりバージョン~」と題されたマップは、文もイラストもすべておとめの会メンバーによるもの。「このマップのお店は“しゃべりばち”で“おとめ”なあたしたちが普段から行けるところなんやさ」などという具合に飛騨弁がちりばめられ、観光スポットガイドや、「飛騨弁講座」のコラムもあったりと、ほのぼのとした手作りマップに仕上がった。
5000部を作製し、地元の金融機関や公共施設、マップ掲載店などで配布したところ、思いのほか好評だった。当初は「一体どんなマップができるんだろう?」と、周囲からは冷めた目で見られていたというが、「次はうちの店も紹介して」と、おとめの会に声がかかるようになったのだ。

だが、マップ作りには資金が必要だ。古川町商工会から若干の補助金が出ていたものの、基本的にはおとめ会メンバーたちの手弁当によるマップ作り。そこで活動資金を捻出するために考え出したアイデアが、飛騨弁と標準語の対照表を掲載したメモ帳を作って販売することだった。
「商店街のお店のなかには『紙を提供するよ』と協力してくださるお店も出てきて、ありがたかったです」。

1冊税込み250円で100冊を制作。このメモ帳があっというまに売れて引き続き制作することになり、現在はメモ帳の第3弾を販売中という。
まち歩きマップのほうもその後、2種類を制作・発行した。


上)「しゃべりばち☆おとめの会」のメンバーが作ったまち歩きマップ。A3サイズの裏表に、メンバーが集めた古川町の楽しい情報がぎっしり</BR>下)事例発表で、古川町の魅力を語る。ちなみに着物姿のメンバーは、家業が呉服店なのだそう



地元の保育園児や高校生などに「飛騨弁」を広める


そうしたおとめ会の活動は口コミで広がっていった。おとめの会メンバーが地元の保育園児と一緒に飛騨弁かるたを作るという活動が生まれたり、高校生が英語版のメモ帳を作るといったように昇華していったのだ。
「『飛騨弁ってあったかいよね』という声が聞かれるようになりました。地域の若い人が飛騨弁に興味をもつきっかけになったと思います」。

おとめの会メンバーもマスコミにたびたび取り上げられるようになった。まちおこしや飛騨弁に関する講演会の講師を依頼されたり、地域の顔のような存在になっていく。

そんな彼女たちの活動は、地元の商工業者のモチベーションアップにもつながった。地元専門店の店主らが講師となって店内で講座を開く「まちゼミ」や、食べ歩きイベント「ぐるっとほおバル」などの取り組みがスタート。地域全体が盛り上がっていき、古川町商工会は2015年春、経済産業省が認定する「がんばる商店街30選」にも選定された。


「しゃべりばち☆おとめの会」のメンバーの指導で、保育園児が作った飛騨弁かるた。地元保育園の年長児の卒園制作として、恒例行事になっている



商工会女性部とのコラボで地域情報誌「美商女フレンド」を創刊


この研修の発表の場では、おとめの会の最新の活動ということで、無料の地域情報誌の紹介があった。その名も「美商女フレンド」。古川町商工会女性部とのコラボレーションで作った冊子で、昨年1月に発刊され、研修会場では今年1月に発行された第2号が披露された。

A4判で全12ページから構成され、表紙はアニメ映画「君の名は。」をイメージしたというイラストが飾る。なかを開くと、「古川美商女が行く聖地巡礼」というタイトルで、映画の登場人物になりきって古川の名所を紹介する記事や、伝統行事の飛騨古川祭など地元の祭りの特集記事、さらには古川町商工会女性部に所属する64人について、ひと言コメント付きで店を紹介する「美商女図鑑」など、地元の女性だからこそ作れるラインナップだ。

「私たちのメンバーのなかに商工会女性部に所属している人が3人いて、そのつながりで一緒に情報誌を作ることになりました。運よく商工会などから補助金がいただけて、スタートしました。この女性部には30代から70代までいろいろな年代の方がいて、意見を調整していくプロセスでは悩んだし、葛藤がありました。でも、古川町のために頑張りたいという思いはみんな同じ。一緒に冊子作りをしながらみんなが歩み寄り、みんなに笑顔が増える。そんなうれしい変化を目の当たりにしました」と声をはずませるおとめの会メンバー。
彼女たちは今や地域振興のキーパーソンとなっているが、気負いはなく、とにかく楽しそうだ。

「メンバーはそれぞれ家事、子育て、お店の仕事などで忙しくしています。だから活動のモットーはゆるく、楽しく。そんな私たちだから家族や商店街の人たちも『楽しそうだな~』と興味をもってくれたり、応援してくれるのかなと思います。私たちしゃべりばちがブンブンとはねまわることで、いろいろな人とつながっていって、古川のまちを盛り上げていければうれしいです」。

笑顔ではつらつと語るおとめの会のメンバーたち。言葉を飾ることなく、わがまちへの素直な思いのこもった発表に、受講者たちは共感しながら聞き入っていた。


2017年1月に発行された「美商女フレンド」第2号。世界に2つとないオンリーワンの地域情報誌だ



まちづくりには男女協働、「人のリノベーション」が必要


事例発表の後は、登壇者と受講者全員によるワークショップとパネルディスカッションが開催された。2件の事例発表を聞いてどう思ったか、自分の地元で取り組んでいることや今後どんなことをやりたいのかなど、意見交換が行なわれた。

パネルディスカッションでは受講者から「活動を長く続けるためにも、当事者たちが楽しむことが大切だと思った」「私たちの地域も女性だけでマップ作りを始めた」という話があった。その一方で、「私の地元では、年配の男性がまちづくりを仕切っていて、女性は意見を言えずにいる。そんな女性たちをどう変えていくか…」「古くから住んでいる男性の意見が強くて思い通りにいかない」といった本音も聞かれた。女性の視点を活かしたまちづくりをするには、男女協働をいかに進めていくかが重要であることを感じさせられた。

そんななかで、今回参加した男性受講者はこんなふうに語ってくれた。

「自分が今悩んでいるのはまちの住民に自分事として地域活性に取り組んでもらうにはどうしたらいいのかということ。でも今日、受講している女性と話してみて、『人のリノベーション』が何より大切だということがわかりました。既製の考えにとらわれず、まずは行動してやってみること。男性は理屈優先で考えがちですが、女性は自由な発想や直観力があって腹をくくれるんだなと実感しました。今日は思いがけず、よい刺激を受けることができました」。

この研修では姉弟でまちづくりに取り組む事例(前回記事で紹介した新潟市・沼垂テラス商店街)と、地元の女性グループの事例が披露されたが、今後も開催されるのであれば、例えば移住してきた新天地でまちづくりに取り組む女性や、最初は一人だったが仲間を増やしながら地域のために頑張る女性など、さまざまな「まちづくり女子」の声を聞いてみたいと思った。

■しゃべりばち☆おとめの会
https://www.facebook.com/syaberi.Bee.otome
■古川町商工会
http://www.furukawasci.net/


登壇者、受講者全員参加のパネルディスカッションでは、まちづくりに関する熱い意見が交わされた



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