市街化調整区域での用途変更が認められやすくなる? 国土交通省が指針を改正

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市街化調整区域の原則は「市街化の抑制」


国土交通省は2016年12月27日、開発許可制度の市街化調整区域における運用を弾力化することを目的として「開発許可制度運用指針」を一部改正した。これによって何が変わるのか、市街化調整区域の実態と合わせて考えてみることにしよう。

まず「市街化調整区域」がどのようなものなのか、簡単に整理しておきたい。大都市圏や地方主要都市など比較的人口の多い圏域の「都市計画区域」は「市街化区域」と「市街化調整区域」に線引きされる。「市街化区域」が市街化を推進する区域であるのに対して、「市街化調整区域」は市街化を抑制する区域だ。

そのため、市街化調整区域では用途地域など都市計画を定めないことが原則であり、都市基盤やインフラの整備も積極的には実施されない。市街化調整区域では、都道県知事などによる開発許可は原則として受けることができず、開発行為を伴わない建築行為も農林漁業を営む人の住宅などに制限される。市街化調整区域で例外的に許可されるのは次の要件を満たすものである。

□ 市街化調整区域に立地することを認めざるを得ないもの
□ 市街化調整区域に立地することを認めて差し支えないもの

しかし、現実には市街化調整区域でありながら「一定規模以上」のまとまった宅地開発が許可され、用途地域や建ぺい率、容積率、地区計画などが定められる場合もある。また、2001年の都市計画法改正により、市街化区域に隣接し一定の基準を満たす市街化調整区域では、住宅建築の要件が緩和された。また、市街化調整区域に指定される前から存在していた住宅も多いだろう。

そのため、市街化調整区域が必ずしも「住宅を建てることができない区域」ではなく、市街化調整区域内の住宅も売買や賃貸の対象となることがある点を理解しておきたい。


市街化調整区域は市街化を抑制する区域。田畑の場合も多い



市街化調整区域は都市部に多く、農山漁村とは異なる


また、人口規模が比較的小さい地方都市や町村部では、都市計画区域が「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けられないこともある。これを「非線引き都市計画区域」という。さらに、山間部や沿岸の町村では都市計画区域の指定そのものがない。

全国の面積割合でみると都市計画区域は約27%にとどまり、都市計画区域のうち非線引き都市計画区域が約49%、市街化調整区域が約37%、市街化区域が約14%(2014年3月31日現在:国土交通省調べ)である。

市街化区域と市街化調整区域に分けられるのは人口の多い都市部であることを考えれば、「市街化調整区域は大都市や主要都市に多い」ともいえるだろう。そこで東京23区と全国の政令指定都市における市街化区域と市街化調整区域の割合をまとめたのが下のグラフだ。

東京23区と名古屋市、大阪市では市域の大半が市街化区域に指定されているものの、それ以外に市街化区域が5割を超えるのは、さいたま市、横浜市、川崎市、相模原市、堺市の5市だけだ。新潟市、浜松市、岡山市は8割以上が市街化調整区域である。


国土交通省「都市計画現況調査(2014年)」をもとに作成



市街化調整区域の住宅数は多く、空き家問題も深刻


市街化調整区域は大都市などに近いことから、必然的に居住人口も多くなる。国土交通省がまとめた資料(2014年3月31日現在)によれば、全国の市街化調整区域に居住する人口は約1,095万人にのぼり、国内人口の1割近くが市街化調整区域で暮らしていることになる。東京23区と大阪市は居住人口がゼロだが、これは河川敷など限られた場所が指定されているためだ。

その一方で、総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によれば、市街化調整区域内の住宅数は約338万戸だ。単身者向けのアパート、マンションなどがほとんど存在しない分、1世帯あたりの居住人数は全国平均を上回るだろう。

ただし、市街化調整区域の特性ともいうべきか、公共下水道の普及率が低いことに留意しておきたい。市街化区域における公共下水道の普及率は95%を超えているが、市街化調整区域では42%ほどにすぎないのだ。私自身が数年前に扱った事例でも、東京近郊某市の市街化調整区域の住宅は「汲み取り式トイレ」のままだった。

インフラ整備の話はさておき、現代の日本において避けることのできないのが空き家問題だ。市街化調整区域も例外ではなく、「住宅・土地統計調査」(2013年)によれば市街化調整区域内に約35万戸の空き家が存在する。空き家率でみれば全国平均の13.5%より低い10.3%だが、賃貸用の住戸があまり存在しないことを考えれば、市街化調整区域の空き家問題は数値以上に深刻かもしれない。

そこで、市街化調整区域における空き家対策として国土交通省が「開発許可制度運用指針」を改正したのである。


国土交通省が「開発許可制度運用指針」を一部改正し、市街化調整区域での運用を弾力化した。改正の目的は何なのか、どのような効果があるのか、市街化調整区域の現状と合わせて考えてみることにしよう。



国土交通省の指針改正は、「用途変更」の許可を得やすくするもの


開発許可制度運用指針は、それ自体に強制力はなく、あくまでも自治体が開発許可をするうえでの技術的助言や基本的な考え方を示すものだ。実際の運用にあたっては地域の実情が反映されることになり、全国で画一的な基準が設けられるわけではない。

また、開発許可を柔軟に運用するといっても市街化調整区域における新たな開発を促進しようとするものではない。今回の改正の目的は、空き家となった古民家や住宅を地域資源としてとらえたうえで、観光振興や既存集落の維持のために必要な範囲で「用途変更」の許可を得やすくしようとするものだ。

「対象とする用途類型」として、国土交通省は次の2つを挙げている。

(1)観光振興のために必要な宿泊、飲食等の提供の用に供する施設
現に存在する古民家等の建築物自体や、その周辺の自然環境・農林漁業の営みを、地域資源として観光振興に活用するため、当該既存建築物を宿泊施設や飲食店等に用途変更する場合

(2)既存集落の維持のために必要な賃貸住宅等
既存集落においてコミュニティや住民の生活水準の維持を図るため、当該集落に存する既存建築物を、移住・定住促進を図るための賃貸住宅、高齢者等の福祉増進を図るためのグル-プホーム等に用途変更する場合


これまで市街化調整区域内の住宅は、そのまま住宅として使うことが原則だった



古民家を活用した飲食店などが増える!?


今回の改正が市街化調整区域内の新たな開発につながることがないよう、一定の配慮もされている。用途変更を認めようとする建築物について、相当期間(10年程度を例示)適正に利用されたうえで、所有者の死亡・破産・遠方への転居など従前どおりの使用ができない状況についてやむを得ない事情があること、建替えに一定の制限を課して「既存建築物の保全」に努めることなども示された。

実際の運用はそれぞれの自治体に委ねられるが、いずれにしても今後は竹林に囲まれた「隠れ家レストラン」や「古民家カフェ」、農林漁業の営みを体験できるような宿泊施設なども少しずつ増えていくだろう。民泊が解禁されれば、田畑に囲まれた民泊施設も生まれそうだ。

だが、市街化調整区域では飲食店や宿泊施設の営業に適さない立地の場合も少なくない。古民家カフェなどに興味を持ちそうな大都市の若い世代は車を所有していないことも多く、電車で行きづらい場所ではなかなか客が集まらないことも考えられる。グル-プホームなどに用途変更できる既存建築物も限られるだろう。さらに、立地適正化計画などによる「コンパクトシティ化」の流れとは逆行する場面が出てくるかもしれない。

市街化調整区域の地域資源をどう活用していくのかは、個々の住民や事業者だけに任せるのではなく、都市全体の課題として取り組んでいかなければならないだろう。


都市近郊の農家が「古民家カフェ」として活用されることも増えるかもしれない(写真はイメージ)



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