首都圏における木造住宅密集地の火災対策。東京都が推める防災都市づくり

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被害総額は国家予算を上回る112兆円


東日本大震災、熊本地震と大地震が続く昨今の日本。大規模な地震は今後も日本を襲うと予想されており、たとえば、首都直下型地震は30年以内に70%の確率で発生すると言われている(2012年1月1日現在。文部科学省地震調査研究推進本部による)。

その被害の予測は、建物全壊と火災焼失棟数を合わせると約85万棟。死者は1万1,000人。被害総額は約112兆円となっている。あまりに大きな数字なのでピンと来ないかもしれないが、これは2016年度の一般会計予算約96兆7000億円を上回る金額だ。

このように被害を甚大にしてしまう原因の一つが、都心部の老朽化した木造住宅の密集だ。先例として阪神・淡路大震災がある。同震災の発生時に被害を受けた建物の多くは、新耐震基準が導入された1981年以前に建てられたものであり、これが密集した地域で大規模火災が発生した。

東京都は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、防災都市づくり推進計画を 1995年度に策定し、複数回にわたって改定している。


日本各地で大地震の発生が予測されている。たとえば、今後30年以内の首都直下型地震の発生確率は70%<BR />(出典:内閣府「これまでの首都直下地震対策について」)



建替えが進まない木造住宅密集地


都心部の木造住宅密集地における問題の一つは、その耐震化や防火化がなかなか進まないことだ。これらが進まないと、倒壊や火災による被害が広範囲に及ぶ。また、住宅密集地は道路幅が狭く行き止まりも多いので、災害発生時に消防車や救急車などの緊急車両が現場まで到達するのに時間がかかるという問題も生じる。

これらの問題が解決しにくい原因としては、建築基準法上の問題、住宅の居住者の高齢化、複雑な土地の権利関係、狭小敷地などで建替えが進まないということがある。
そこで東京都は、防災都市づくり推進計画に基づき、木造住宅密集地域の改善などに取り組んでいる。主な施策として以下がある。

【延焼遮断帯の整備】
地震にともなう市街地火災の延焼を阻止する道路、河川、鉄道、公園などの都市施設とこれらに近接する耐火建築物などにより構成される帯状の不燃空間。震災時の避難や救援活動時の経路などの機能も担う。

【避難場所の確保】
2013年5月現在で197カ所ある避難場所を継続して確保すると同時に、大規模公園やスーパー堤防などの公共事業で整備されたオープンスペースを事業者と協議の上で避難場所として指定する。この指定は人口動態などを鑑みておおむね5年ごとに見直しを行う。

【緊急輸送道路の機能確保】
東京都が計画する緊急輸送道路は約2,060km。その中で震災時に果たすべき機能に応じて第一次(都庁や空港などに連絡)、第二次(自衛隊や警察などに連絡)、第三次(駅や備蓄倉庫などに連絡)に分類している。特に沿道建築物の耐震化を図る必要がある緊急輸送道路を特定緊急道路として指定している。

これらの地域では、単純に古い住宅を解体して大規模な再開発をすることを推進するのではなく、各住宅の建替えから徐々に市街地整備を進める手法をとっている。建替えは所有者の任意となるため、地域全体の防災性が向上するには、それなりの時間がかかる。


防災都市づくりのイメージ(出典:東京都「防災都市づくり推進計画(改定)(2016年3月))



建替えたくても建替えられない所有者の事情


所有者が建替えない理由としては、建築基準法の関係で建替えると現在の住宅よりも狭くしなければならない、道路に接して建てられていないので、建替えそのものができないといったことがある。
この対策として都は、「建ぺい率の特例許可」として、建物の背後に空地を確保するために建ぺい率制限を緩和したり、複数の敷地を一つの敷地と見なして、接道義務や容積率、建ぺい率、斜線などの制限を、複数の建物が同じ敷地内にあるものとして適用する「連坦建築物設計制度」などの措置を講じている。
これらの措置の効果は以下のように顕在化している。

【延焼遮断帯の形成率】
      1996年     2014年
整備地域   48%  ⇒  62%

【不燃領域率】(※)
      1996年     2014年
整備地域   49%  ⇒  61%
重点整備地域 48%     55%

※不燃領域率
市街地の「燃えにくさ」を表す指標。建築物の不燃化や道路、公園などの空地の状況から算出。不燃領域率が70%を超えると市街地の延焼による焼失率はほぼゼロになる。危険度が高く、特に老朽化した木造住宅が多いなどで震災時に甚大な被害が想定される地域を整備地域に指定。さらにこの中から、重点的かつ早期に防災性の向上を図る地域を重点整備地域に指定している。


東京都は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、防災都市づくり推進計画を 1995年度に策定し、複数回にわたって改定している。その内容や現在進められている施策の状況をみていこう。



私たちの心がけも重要な防災対策


都は防災都市づくり推進計画を2016年3月にも改定し、2025年度までに整備地域内の延焼遮断帯率を75%、不燃領域率を70%以上とする目標を掲げた。そのための主な施策には以下のようなものがある。

【整備地域の更なる改善】
防災生活道路の拡幅整備を契機に延焼遮断帯に囲まれた市街地の不燃化・耐震化を加速。

【整備地域以外への対応】
木造住宅密集地域、将来木造住宅密集地域になるおそれのある地域、土地利用転換時にミニ開発(※)が進むおそれのある地域の改善または拡大の未然防止を図り、防災性の向上に合わせて良好な住環境を形成。
※ミニ開発
都道府県知事の許可がなくても開発ができる市街化区域における面積1000m2未満(一部では500m2未満)の土地の開発。このような土地は細分化され、100m2未満の建売住宅として販売されることが多い。

このような施策で防災化が進む東京都。着実に進んでいるとはいえ、その歩みは早いとは言えない。もし、明日震災に見舞われたらどうするのか。また、いくら建物や街が災害に強くても、住む人の防災意識が低ければ意味がない部分もある。
つまり、防災には建物や街づくりといったハード面だけでなく、住民の防災能力の向上といったソフト面も重要だ。
都では、幼児期からの総合防災教育や外国人被災者のための通訳・翻訳を担うボランティア研修、防災ブックの配布など、住民の災害対応力向上のための様々な事業を展開している。

防災は私たち一人ひとりの心がけ次第といった部分も大きい。知らなかった人はぜひ興味を持って自分のできることを探ってほしい。

■東京都 防災都市づくり推進計画
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/bosai4.htm

■防災ブック「東京防災」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/08/20p8l300.htm


木造住宅密集地の防災対策は、行政の施策とともに住民一人ひとりの取組みも重要



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