秘湯にできた交流拠点。古い旅館をリノベーションした足湯付きシェアオフィス

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秘湯にできた交流拠点。古い旅館をリノベーションした足湯付きシェアオフィスの記事画像

渓谷美で知られる景勝地の温泉街に
名古屋近郊の若者をターゲットにしたシェアオフィスが完成


日本には1000年以上の歴史がある温泉がたくさんある。
愛知県の奥三河山間部にある湯谷温泉も、開湯は奈良時代という1300年以上の歴史をもつ古湯。国の名勝・天然記念物にも指定される鳳来寺山の豊かな自然の中を、清らかな宇連川(うれがわ)が流れ、その川沿いにしっとりとした佇まいの宿が8軒建ち並ぶ、渓谷の静かな温泉街だ。

2016年2月に新東名高速道路の豊田東ー浜松いなさ両ジャンクション間が開通し、これによって名古屋から車で1時間ほどに交通アクセスが改善。利便性が高まり、都心部との距離もぐっと縮まった奥三河エリアは、これまで以上に観光や移住・滞在の促進に力を入れている。
そんな中、湯谷の温泉街にカフェとゲストハウスを併設した“足湯付き”シェアオフィスがこのほど完成した。地方創生の一助にもなりそうなこの新しい交流拠点に注目してみたい。


古くからの温泉地として多くの方に愛されてきた、新城市の湯谷温泉。温泉街の入口には、無料で足湯を楽しめる場所やポリタンクで持ち帰りができる温泉スタンドもある。</br>シェアオフィスは、ここJR「湯谷温泉」駅から徒歩1分の場所に誕生した。



開湯1300年以上の歴史をもつ、古くから愛される湯谷温泉


日本百名湯にも選ばれている湯谷温泉は、鳳来寺を開山した利修仙人によって発見されたと伝えられている。
源泉の「鳳液泉」は万病に適するものとされ(泉質はナトリウム・カルシウム塩化物温泉)、修行に励みながら日々温泉に浸かっていた利修仙人は、その優れた効力によって遊行を極め、空を飛べるようになった…との伝説があるそうだ。
(308歳の長寿を全うしたとの記録もあるとか)

そんな仰天エピソードまでささやかれる秘湯の温泉地に誕生したのが、築65年ほどの古い旅館をリノベーションした複合施設【Hoo!Hoo!】。

地下1階・地上2階建ての館内はフロアごとに用途が異なり、1階は誰もが気軽に立ち寄れるカフェ&バースペース、2階は宿泊に特化したゲストハウス、そして地下階が、街中から離れ息を抜いて仕事ができるシェアオフィスだ。

オーナーの加藤直詳さんは、湯谷温泉で70年余り旅館を経営している『はづ』の3代目。

「湯谷温泉は、手つかずの豊かな自然風景と泉質が魅力。古くから人気のある温泉地です。
休日はたくさんの観光客で賑わって人の通りも多いですが、平日はそうでもないのが現状。
また、大型旅館がある訳でもないのに、宿泊のお客様は宿から殆ど出ずに館内で過ごされます。
“旅館から出るきっかけ”になるような場所であり、滞留拠点にもなり、平日でもほどよく通りに人が歩いている、寂しくなく賑やか過ぎない風景をつくっていきたいのです。」(加藤さん)

「温泉宿は観光客を増やすだけでは限界がある」と感じ、観光以外でも訪れる人や街に根を生やす人の数を増やすことが、地域の・温泉地全体の底上げになるとの想いで新しいスタイルの交流拠点を手掛けることになったという。


湯谷温泉で4軒の旅館を経営する、はづグループの若主人・加藤直詳さんが、地域活性の想いも込めて【Hoo!Hoo!】を手掛けることに/旅館「はづ木」にて



ゲストハウスやカフェは、日本の山間部に興味を持つ外国人もターゲットに


【Hoo!Hoo!】の完成までには賛同者の力も不可欠だった。
まちの資源を活かした提案・企画などを学ぶ社会人向け市民大学『なごや朝大学』で、新しいシェアベースの使い方を考える講座「おんせんシェアベースクラス」として開講されたこともあり、その受講者をはじめとするボランティアで床塗りや石垣磨きなどが行われた。

彼等の力も借りてリノベーションした館内は、黒を基調にスギやヒノキなど地元木材を多用。
一枚板カウンターも圧巻の1階カフェ&バースペースでは、同じく奥三河山間部である東栄町の標高700mで栽培された有機茶や、地酒を提供するなど地域色も活かした空間に。
また、2階のゲストハウスは他の温泉宿とは違うスタイルで、山間の暮らしに魅力を感じる若者や外国人旅行者向けの素泊まりスペースに。今後はインバウンドも期待できそうだ。


渓谷美を楽しめる【Hoo!Hoo!】1階のカフェ&バースペース。川床のようなウッドデッキもあって気持ちよく過ごせそう!</br>ちなみに、鳳来寺山は「声の仏法僧(ぶっぽうそう)」と呼ばれるコノハズクが棲息していることでも知られるが、</br>フクロウの鳴き声「ホーホー」と、話に頷く「ほーほー」を掛けたのが施設名の由来なのだとか



ノマドワーカーや起業家が、温泉に癒されながら仕事できるシェアオフィス


石垣を残す地下1階は、10人ほどが利用できるシェアオフィス。
Wi-Fiのネット環境も整っているため、仕事する場所を選ばないノマドワーカーやテレワーカー、山間部に身を置くことで創作意欲が刺激されるクリエイターなどがターゲット。
また、三河山間地域の活性化事業を進める愛知県からは助成金も受けており、その一環の起業支援で若い起業家たちの活動拠点としても既に活用されている。

そして、温泉地ならではの特徴となっているのが“足湯のデスク”があること。
敷地内の玄関横には、机を配した岩造りの足湯が設けられ、利用者は街中のカフェスペースで仕事をするように、足湯をしながらパソコンやタブレット端末で作業ができるのだ。
夏場なら目の前の宇連川に下り、川に足を浸して自然の中で仕事するのも涼やかだろう。


歴史を重ねた旅館としての趣きを残しつつも、地元の木材をふんだんに使ったイマドキの洒落た空間デザイン。</br>清らかな川の流れや対岸の緑を愉しみながら心地よく過ごせるスペースが各フロアで広がっている。



目指すは、観光客以外の人を呼べる交流拠点


泉質の良い温泉に浸かり、豊かな緑に癒され、リフレッシュしながら仕事ができるシェアオフィスは、「年・月・日」単位で利用ができる。
新しい起業家のオフィスとして、また、名古屋からのドライブも楽しみつつ通うセカンドオフィスとして、はたまた、息が詰まった時に気分転換に訪ねる場所として。地元の人はもちろん、名古屋近郊からでも自由気ままに活用できるのも良いように思う。

部屋に篭り、パソコンに向かって黙々と記事を書くことの多い筆者だが、ノマドワークが可能な身分ゆえに、川の景色と秘湯を愉しみながら仕事できるなんてステキじゃない?!
まずは一日“山間部ワーク”を試してみようかな…。
過疎化と高齢化の深刻な悩みを抱え、「消滅可能性都市」ともいわれる新城市の活性化にも繋がるなら更に嬉しい気がする。

■湯谷温泉発展会 http://www.yuya-spa.com/
■はづグループリゾート http://www.hazu.co.jp/


「これまで見かけなかった人達を増やしたい」と加藤さん。</br>歴史ある温泉地のコワーキングスペースかつカフェかつゲストハウスという“人を呼べる”要素を集めた複合施設が誕生し、若者が気軽に立ち寄れる拠点ができたことで、観光客以外の人が増え、それが日常風景になることを期待したい。



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