二世帯リフォームのトラブルを防ぐ最初の一歩、鍵ひとつで守られる心安らかな暮らし

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少子化対策で推し進められる三世代同居。半数以上が二世帯モデルの展示場も


最近、どこの住宅展示場へ行ってもよく見掛けるのが、二世帯住宅である。首都圏のある展示場では、親子孫の三世代が同居できるようになった二世帯モデルが半数以上を占めている。

モデルハウスはだいたい5~10年ごとに、その時代のニーズや業界の動向、会社の指針に沿ってリフォームや建て替えを行うため、どんな家が建てられているかを見ると、最近の住宅のおおよその傾向がわかる。

なぜこんなに二世帯モデルが多いのか。ひと昔前は、同居と言うとどちらかというとネガティブなイメージがつきまとっていた。同居は親の介護のためにするものであり、主に長男家族が担うもので、嫁姑の問題が山積し、よくドラマや小説のネタにもなったものだ。

しかし女性の社会進出が進み、共働きが当たり前の時代となった今、同居に対する一般的な意識は変わりつつある。長男に限らず息子娘どちらとでも、またその目的も親の老後の問題だけでなく、経済面でのメリットや、共働きをしている子世帯の育児や家事を補助するために親世帯が労働力として期待されるケースも少なくない。

このような流れに伴い、二世帯住宅のモデルプランもここ20年ほどでかなり変化している。以前は嫁姑の確執を防ぐためにいかに二世帯を分離するかということがコンセプトの中心になっていたが、最近は分かれているのが当たり前で、その中でお互いが助け合いやすいよう細部に渡って細かい工夫が凝らされている。

例えば、生活スペースは完全に分離されているが、孫たちが学校から帰ってきて宿題をするスペースは親世帯に作られていたり、親世帯と子世帯のちょうど中間地点に孫部屋があったり、両世帯が家事コーナーで繋がっていたりなど、育児と家事の分担をしつつ、お互いが快適に暮らせるようにと考えられた間取りが目立つ。

またここ数年、国や各地方自治体では、少子化対策の一環として、同居のための新築やリフォームを行うと補助金や減税の恩恵が受けられるような制度を新設している。親世帯に孫の面倒を見てもらえば、子世帯も働きながら子育てがしやすいだろうと言うわけだ。その中にはもちろん、高齢化が進んでいる今の日本の介護問題を同居で解決したいという目論見もあるのだろう。2014年の税制改正では、二世帯住宅において相続税の小規模宅地等の特例が更に適用されやすくなっている。

社会のニーズとして、また国の政策としてこれだけ同居が注目されている中、モデルハウス巡りをしていると、確かにこれならお互い便利に快適に暮らせそうと、同居の夢が広がるのだが、リフォームで二世帯住宅を作るとなると、また話は変わってくる。様々な問題から理想通りにするのはなかなか難しいことが多いからだ。


二世帯住宅のモデルハウスが半数以上を占める住宅展示場もある



リフォームでの二世帯プランの限界、限られた面積の中で快適に暮らすために


ひとくちに二世帯住宅と言っても、親世帯と子世帯の共用部分の取り方によって様々な呼び名がある。玄関も水まわりも全て別で完全に二世帯が分かれて暮らす間取りを「完全分離スタイル」、玄関や浴室など一部を共用部分とする間取りを「部分同居スタイル」、プライベートルーム以外の玄関や水まわりなどを全て共用とする間取りを「完全同居スタイル」と呼んでいる。

完全分離スタイルは、それぞれの世帯のプライバシーが守りやすく、快適に暮らすことができるが、一番床面積が必要になり、リフォーム費用もかさむ。共用部分が増えれば必要面積は少なくて済み、リフォーム費用も安くなるが、それに伴ってプライバシーが守りにくくなる。

リフォームで二世帯住宅を作る場合に多いのは、もともと一世帯だった家の1階を親世帯、2階を子世帯にするプランで、1階部分の設備や間取りはそのまま活かしつつ、2階に子世帯用の水まわりを新設するというものだ。これなら費用を節約しつつ、1階と2階に分かれた二世帯住宅を作ることが可能になる。

しかし、住宅地では容積率や北側斜線制限などによって2階の面積が思ったように取れないことが多く、なかなか希望通りの間取りを作ることは難しい。

もちろん広大な敷地に、ありあまる潤沢な資金があるなら、モデルハウスのような理想通りの二世帯住宅を作ることができる。しかし実際の現場では、2階にシャワーブースを付けるべきか、いやどうせ使わなくなるから収納にするか、せめてトイレと冷蔵庫置き場だけでも確保したいといったような現実的な葛藤の中で、今ある家をいかに効率よく快適な二世帯住宅にするか頭を絞って考える、そんなケースが少なくない。

中には無理して2階にシャワーブースを作ったが、狭くて使いにくいので結局いつも1階にある親世帯の広い浴室を使っている。使わないでいると排水口が臭ってくるので、この際きちんと撤去して収納に作り替えたいという依頼を受けたこともあった。


無理してシャワーブースを作ったが、結局使わず物置になっていた家もあった



共用部分が増えればトラブルも増える、小さな鍵ひとつが大問題になることも


二世帯住宅では共用部分を増やせば、全体の床面積は小さくて済む。例えば、小さな浴室を2つ作るより、1つの大きな浴室を作る方が、他の部分での面積に余裕が生まれやすく、また浴室そのものの快適度も上がる。

しかし共用部分が増えれば、世帯同士の接触頻度が上がり、トラブルも増える傾向にある。筆者は自身が二世帯住宅の同居経験者であり、また多くの二世帯リフォームの相談や設計を手掛けてきたことから、様々なトラブル事例に接してきた。

トラブルの原因は、主に世代間の生活スタイルの違い、衣食住に対する価値観の違い、清潔感の違い、そして人間関係の距離感の違いによる軋轢など多岐にわたっているが、小さなことのように見えて大きな問題になってしまいがちなのが、「鍵」に関するトラブルである。

筆者が相談を受けたのは主に女性だが、よく話を聞いてみると、男性の場合にも同じような悩みを抱えているケースがあった。その事例をいくつかご紹介しよう。


共用部分が増えれば世帯同士の接触頻度が上がり、トラブルも増える可能性がある



鍵に関する二世帯トラブルの事例。実の親子は鍵を不要とする傾向がある?


1つめの事例の相談者は女性で、夫の実家に入る形で、夫の両親である親世帯、夫婦と孫2人の子世帯の合計6人で同居をしていた。

もともとは1階がLDKと水まわりとガレージ、2階が主寝室と子供部屋という間取りの一戸建てだったのだが、そこを部分同居スタイルへリフォーム。水まわりは元を活かして共用とし、1階に夫の両親の寝室とLDKと水まわり、2階に子世帯の寝室と子供部屋とミニリビングとトイレという、1階と2階に分かれた二世帯住宅として暮らしていた。

そこで問題になったのが、2階部分に鍵を付けるかどうかということだった。休みになると夫の姉妹が子供たちを連れて遊びに来て、休みの日に寝ていると朝からいきなり飛び込んでくることがあるとのこと。下着姿でいることもあり、鍵を付けたいと言ったのだが、水くさい、家族なのにとの言葉で理解されない、何度も言っていたら、そんなに家族が信用できないなら離婚だと騒ぎになってしまったとのことだった。

2つめの事例は、高齢の夫婦で、娘とその夫を連れて住宅展示場に来場した。筆者が相談を受けたのだが、現在、親世帯夫婦が住んでいる一戸建てに、娘夫婦と4人で同居すると言う。家事はほとんど親世帯が担うとのことで、2階にある子ども部屋をそのまま子世帯スペースにしたいとのことだが、キッチンや浴室を新設するのは無理でも、トイレくらいは付けたほうがいいかという相談だった。

間取りを見たところ、トイレだけでなく洗面台なども付けるスペースが十分にあり、その手前に子世帯用の入口が作れそうだったので、プライバシーを守るためにも、ここに鍵付きの子世帯用ミニ玄関を付けてはどうかと話したところ、両親共にそんなものを付けてもどうせ鍵を掛けることなど無いのだから不要だとのことで、一蹴されてしまった。

しかし別の機会に、個別で話を聞いたところ、娘の夫はやはり鍵付きのドアが欲しいとのことで、同居自体をどうするか悩んでいるとのことだった。

2つの事例ともに、どちらかの実家に同居するというパターンで、実の親子の側は、鍵は不要と考えていたケースである。実はこのような鍵にまつわるトラブルは少なくない。鍵くらい付けても費用的には大したことは無く、また新たに入居する側からすればごく当たり前のことなのだが、受け入れる側からすると拒絶されたように感じるのだろうか。頑なに家族なのに信用していない、水くさいと、もめてしまう場面に遭遇することがあった。


プライバシーを守ってくれる鍵も、二世帯ではトラブルの原因になってしまうことも



パンツ一枚で大の字になれてこそ我が家、それぞれが心安らかに暮らせる家に


結局、この2つの事例では筆者が間に入り、無事に鍵の取り付けをすることができた。二世帯住宅のリフォームでは、費用を多く出す人、声が大きな人の意見が通りがちなため、全員でよく話し合いましたと言っても、それぞれの意見がきちんと反映されないことも多い。

そこで、二世帯リフォームの場合は、必ず個別にヒアリングを行い、それらをとりまとめたプランを専門家から提案する方法を「第三者提案方式」と名付け、実践している。

二世帯リフォームでは、たかが鍵ひとつの話でもこれだけ意識の差がある。鍵を付けたいというのは、決して信用していないわけではなく、拒絶しているわけでもなく、ましてや泥棒を疑っているわけでもない。ただ誰にも邪魔されることなく、安心してくつろぐ居場所が欲しいというだけのことである。そしてそれがいかに大切なことであるか。我が家とは、家族を育む大切な場所であると共に、ひとりひとりがストレスなく心と体を癒せる場所でなくてはならない。

先日、これから同居を考えている人から、パンツ一枚で誰にも気がねなく大の字で昼寝ができて、気にせずおならができるような居場所を確保したいと相談を受けた。実は筆者が二世帯住宅で同居を始める際に初めにしたことは、2階の入り口のドアに鍵を付けたことである。小さな鍵ひとつで守られる心安らかな暮らしがある。そしてそれが同居トラブルを防ぐ最初の一歩になることだろう。


パンツ一枚で誰にも気がねなく大の字で昼寝ができてこその我が家。鍵ひとつで守られる心の平安もある



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