京都市「番組小学校」の廃校再生。想い出の母校を住民・民間・市、三者の知恵でまちづくりに活かす

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少子化の影響で統廃合が進む小学校。地域のシンボルともいえる元・小学校をどうすれば活かせるのか?


多くの人にとって懐かしい想い出が胸に刻み込まれているであろう小学校時代。何度も通ったあの道。たくさんの友達。好きな先生はもちろん、苦手な先生もいた。私が小学生だったのはもう30年以上も前になるが、今でも色褪せない想い出がたくさんある。

たくさんの人々に多くの想い出を残してきた小学校が少子化の影響を受け、統廃合が進められている。文部科学省のデータを参考にすると、1985年(昭和60年)には全国に25040校あった小学校が、2015年には20601校に減少。それでは小学校が統廃合されるとどのような問題があるのか考えてみる。

まず、小学校は教育の場として以外にも災害時などの防災拠点として活用されるなど、地域社会の重要な施設であることがまず挙げられる。また山間部など過疎地域の小学校の場合、廃校が決まったら人口流出による地域の衰退も容易に想像がつく。歩いて行ける距離にあった小学校が統廃合されて遠くなったら、子どもたちの体力的・時間的な負担も大きくなってしまうだろう。また、やはり通っていた小学校がなくなるのは寂しいと思うのが人情だ。

しかし、前述したように地域の活力源とも考えられる小学校の数は30年の間に約2割も減少している。廃校になった小学校をいかにうまく活用するかが、地域の活性化につながるといっても過言ではない。そこで、廃校活用の取り組みで実績をあげている京都市を訪れ、統廃合されて使われなくなった小学校をどのように活用しているかなどをうかがった。


地域社会の人々にとってなくてはならない資産ともいえる小学校が、少子化の影響を受け減少の一途をたどっている。地域になじみながら施設をうまく再生し活用している京都市の担当者に話を聞いた。



64あった「番組小学校」がわずか17校に。学校跡地の有効活用が京都市の重要な課題に


お話をお聞きしたのは、京都市行財政局 資産活用推進室の、田中英明さんと渡邉俊幸さん。
「京都市では現在土地活用対象校として廃校となった15校ほどの小学校跡地の活用方法を検討しています。1872年(明治5年)に現在の学校制度ができたのですが、京都ではそれに先立つ1869年(明治2年)に番組という当時の行政区画ごとに『番組小学校』と呼ばれる64の小学校が開校しました。地域の方々が土地を寄付したり資金を援助したりしてつくった学校ですので、地元の方の小学校への愛着はとても強いのが特徴です」と田中さん。

地域に根差した小学校も、近年の少子化やドーナツ化現象の影響で生徒が減少し、その多くが廃校に追い込まれた。
「京都の都心部といわれる上京区、中京区、下京区を中心に生徒数が激減しました。生徒が減少すると先生が生徒一人ひとりに目が行き届くというメリットはありますが、逆に切磋琢磨して力を向上させていくのが難しいという、競争力低下の問題があります。
京都市では小学校の統廃合や小中一貫校の設立など学校の再編を平成に入ってから進めており、もともと64校あった小学校が今では17校になっています(市内中心部にある番組小学校の数)。統廃合した後の閉校施設、学校跡地をどのような形で活用するかを私たち資産活用推進室で考えています」(田中さん)


京都市中心部の統廃合された小学校のマップ。青色の◎印が耐震補強済の校舎。</br>市の中心部に多くの廃校が点在する様子が見てとれる



行政主導では活用方法が限定されるため、民間事業者の力も借りて跡地活用を推進


京都市では1994年頃から市主導の小学校跡地活用を行ってきた。2004年には元開智小学校を「京都市学校歴史博物館」に、2006年には元龍池小学校を「京都国際マンガミュージアム」に、2008年には元明倫小学校を「京都芸術センター」に、そのほかにも福祉施設に転用するなどして実績を重ねてきた。しかし、行政だけではどうしても活用方法が限定されるため、2012年からは民間事業者の力も借りて事業主を募集しながら跡地活用を進めている。

市民、民間事業者、市が協力した最初の事例が、元弥栄小学校を活用し昨年6月にオープンした「漢検 漢字博物館・図書館(愛称:漢字ミュージアム)」。今年4月には元貞教小学校を活用した「京都美術工芸大学」の京都東山キャンパスがオープン。地域住民に愛着のある小学校を壊すことなくリノベーションしているのが特徴だ。

「私たちは地域住民の皆様と民間事業者様との橋渡し役。『どこの学校でどんなことをしたいのか』ということを民間事業者様に登録していただき、その登録内容に基づいて自治会の方などと相談して大枠の方向性を決めます。それを元に民間事業者様に詳細なプランをつくっていただき、地域住民の皆様の理解を得てから事業を進めています。よりよい施設にするためにプロポーザル方式を採用しています」(田中さん)

また事業には何らかの形で京都の企業に参加してもらうため、民間事業者の募集時には「京都市内の企業に発注すること」を条件のひとつに加えている。
「土地の値段が上昇していることもあり、資金力などの問題から東京や外資の民間事業者様が多いのが現状です。ただ、市の活性化も考え、工事などは京都市内の企業様への発注をお願いしています」(渡邉さん)


今後ホテルになる予定の元清水小学校。校舎は昭和8年の建築で、校舎とグラウンドなどの合計で6900m2強の敷地面積を有する。観光地にも近く便利なホテルとなりそうだ



既存校舎をリノベーションして活用した旧立誠小学校。ホテルや文化事業スペースなどからなる複合施設が誕生予定


2020年の竣工を目標に、現在大きなプロジェクトが進行中。それが元立誠小学校跡地を活用したホテルに加え、自治会活動スペースや文化事業スペースなどが一体となった複合施設の建設だ。利用しやすい1階に自治会活動や文化事業スペースを集約し、2階~8階がホテルとなる予定だ。

立誠小学校は1869年(明治2年)下京第6番組小学校として開校。木造住宅が多かった時代に鉄筋コンクリート造でつくられた、当時としては異彩を放った校舎が特徴だった。その後120年以上の歴史を刻み、1993年(平成5年)3月に閉校。その校舎も取り壊されずリノベーションして再利用される。

「立誠小学校は映画発祥の地とされ、現在も校舎内の『立誠シネマ』で映画が上映されています(7月30日終了予定)。今後どのような形にするか話し合いを進めているところです。またロマネスク様式を基調としたアーチ型の玄関も残してもらうように話しています。文化事業スペースとして『立誠ホール』をつくる予定ですが、どのような形で運営するかなど、地域住民の皆様、民間事業者様、市の3者で調整中です」(田中さん)

旧立誠小学校の跡地活用を見ると、たとえ民間事業者が参画したとしても、京都市が地域住民との間に入ることで地域のコミュニティを最優先にし、大切にしているのがよくわかる。
「学校を売却してマンションが建つというケースも多いようですが、もともと番組小学校という地域の方の愛着がある学校なので、私達もできるだけ学校を残したいと考え、定期借地という方法を採っています。民間事業者の力を借りる場合も、土地を売却することはなく基本的に市の所有物となります。市には借地料が入り、収益は民間事業者様に、また地域の活性化などで地域住民の皆様にも貢献できると考えています。地域住民の皆様、民間事業者様、市の3者がWin-Winの関係になるのが理想です」(田中さん)

「旧立誠小学校跡地の再開発では、文化を基軸に地域の活性化、防災、伝統文化のスペース、避難所機能、駐輪場の整備など、様々な要望を伝え、このような複合施設となりました。小学校は元々人が集まっていた場所。その拠点を無くすことなく、常にプラスαの施策を考えています」(渡邉さん)


立誠小学校は、1897年(明治30年)京都電燈株式会社の中庭(現在は小学校グラウンド)にて、日本で初めて映画の試写実験が行われた日本映画発祥の地とされる。学校の敷地は土佐藩邸跡にあり、周辺には幕末維新の舞台となった池田屋敷など史跡が数多く残る。文化芸術によるまちづくりの一環として前述した「立誠シネマ」のほか、「花道部」「花いけ部」などの活動も行われている



伝統と新しい思想を融合し、新しい京都をつくりたい。そのためにも若い人たちにも積極的にまちづくりに参加して欲しい


小学校跡地活用を担当するお二人に、今後の課題などをお聞きした。
「京都は盆地のため都心部に人や建物が集中し、都心部に大きな空き地がありません。小学校跡地は5000m2ぐらいの土地があるため、民間事業者様から見ても魅力的な土地ということで高い関心を寄せていただいています。京都は戦火を逃れたことで歴史的に見て価値の高い校舎も残っています。それらをうまく活用しながら地域住民の皆様や民間事業者様と協力し、地域の活性化につながる事業を進めていきたいと考えています」(渡邉さん)

「京都には古くからの伝統文化や建物など古いものがたくさん残っていますが、それを活かすだけでは前に進めません。古いものと新しいものをうまくマッチさせて前に進んでいくことが大切で、例えば元立誠小学校跡地開発などはその好例だと自負しています。新しいことに取り組んでいくのも現代を生きる私たちの使命ではないでしょうか。
また、まちづくりというとどうしても時間がかかるため働いている方は参加しづらい面が否めません。日本全国どこでも同じだと思いますが、ぜひ若い方にも積極的にまちづくりに参加していただきたいですね。地域コミュニティの再生や活性化というのが、これからのまちづくりで非常に大切だと考えています」(田中さん)

「地域の皆様とお話をすると、小学校にすごく愛着を持っているのが伝わってきます」と話す田中さんと渡邉さん。できるだけ愛着のある学校を残しながら形を変えることは第2ステージの始まりだと語る。使わなくなった小学校を見事に再生して、観光や地域活性化などに役立てている京都市。残っている廃校がどのようにして輝きを取り戻すのか、楽しみに見守りたいと思う。


写真左から、京都市行財政局 資産活用推進室の、田中英明さんと渡邉俊幸さん。「それぞれの小学校に歴史があるので地域住民の皆様の想いが強いのが京都の特徴。その想いにできるだけ応えたいと考えています」



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