増え続ける空き家問題に楽しく立ち向かう「空家レンジャー」

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DIYを楽しく学びながら、みんなで空き家を改修


湘南地域で活動する空き家レンジャーをご存知だろうか?
「DIYを楽しみながら、自分たちが使いたくなる施設を自分たちの手でつくる。そんな活動に参加してみませんか!」そんな緩い募集に手を挙げた人たちがレンジャーとなり、空き家をセルフリノベーションする。

この活動を始めたのは、カラー「ピンク」の加藤太一氏。「昨今の日本では、空き家の改修を業者に依頼すると高額な費用がかかるので、そのまま放置されてしまうという実態があります。なので自分たちで再生するというコンセプトで”楽しく”空き家再生していくことを目指して活動するのが、空き家レンジャーです。」と語る。

空き家レンジャーをはじめたきっかけも、改装に困っていた逗子の古い家との出会いだった。自分たちで改装してシェアハウスを作りたいと思ったが、プロに依頼すると高額になってしまう。自分で改修するにも素人で大丈夫かなと不安があった。そこで思いついたのが、改修自体をイベント化し、楽しく活動する空き家レンジャーだった。


葉山ファクトリーの建物と参加者の人たち。ピンクのつなぎを着ているのがリーダーの加藤太一氏



空き家レンジャーの活動内容とは?


みんなにわかりやすく、楽しめるイベントにしたいと考えた時に思いついたのが「空き家レンジャー」という名前。レンジャーの仕組みはこうだ。当日集まった参加者は、まず自分のレンジャーのカラーを決めるところからスタートする。レンジャーは全員自分のカラーを持ち、その日から空き家レンジャーの一員になる。これまでのイベントの開催回数は50回を超え、レンジャーのカラーも170色を超えた。もうこれ以上ないのではないかと思ってしまうが「色は無限にある」と加藤氏は言う。最近は自分で作った色もOKで、おもしろいカラーも生まれている。

神奈川県葉山町で進行中の「ものづくり工房 葉山ファクトリー」の中心メンバーのカラーは、わさび、パンプキン、茶、デニム、ブラッキ企業、クリア、などだ。

レンジャーは全員プロではなく、DIYの経験も少ない素人集団。そこにプロの大工さんを招き、その技をみんなで学びながらDIYを行う。参加者は子供からベテランまで様々で、家づくりをやってみたい人、自分でリノベーションをしたい人、また設計関係者で、実際に現場で手を動かしたことがないからと参加している人もいるという。


空き家レンジャーのカラフルなマーク



第一弾の海古屋シェアハウスには、完成前から入居希望者が生まれた


空き家レンジャーの活動の第一弾は、2016年の9月に改修した神奈川県逗子市の海古屋シェアハウスだった。最初は人が集まるかどうか不安だったというが、始めてみると、人が人を呼び、子供からお年寄りまで世代を超えて多くの人が集まった。

「みんな自分でDIYをやってみたいが、実際にやり方が分からない。そんな場もないという声を聞きます。わかったことは、みんなそういった場所を求めていたということです。」と加藤氏は言う。

「さらに分かったことは、家の改修という同じ目標に向かって手を動かすことで、団結感が生まれやすいんです。お昼にはまかないが出ます。始めて出会う人、世代が違う人でも、すごく仲良く話をしながら食べています。」

それだけではなく、DIY中のシェアハウスには、まだ完成前にも関わらず参加者の中から入居希望者が現れた。現在も住みながらDIYをすすめており、1階の壁を取り去って広いスペースを作り、小さな小屋のドミトリーを建てている。
加藤氏は言う。「結果として、改装費用が大きく抑えられるだけでなく、参加者の中からシェアハウスの住人も現れるという奇跡的な流れが起きました。何年も誰も住んでいなかった古民家が、人が集まる賑やかなシェアハウスに再生されたのです。」


空き家を改装した海古屋シェアハウスで芸術祭を開催した



葉山の元社員寮をものづくり工房「葉山ファクトリー」へと改修


そんなある日、神奈川県葉山町の「巨大な廃墟」の再生の相談が舞い込んだ。もともとは、ある会社の社員寮だったが、建物の老朽化で住めなくなってしまい、1階と2階合わせて約240平米もある巨大な空き家となってしまったという。

神奈川県葉山町は、御用邸のあるリゾートのイメージでも知られるが、自然あふれる環境で自己表現をする人たちが多く住む街でもある。そんな立地を活かし、みんなでシェアできるものづくり工房として大改装を行なっている。2階にある7つの個室は、様々なものづくりのクリエイターが入居してアトリエとして使える「シェア工房」へ。あとの1室は入居スペースではなく、新しいものづくりに挑戦したい人が使うことができる「ものづくりラボ」にし、1階の広々とした食堂は、曜日交代でカフェバーができる「シェアキッチン」になる予定だ。建物の外には工作小屋を建てて、共有する材料や工具が集まり、自由に日曜大工などが行える「みんなの工房」へと生まれ変わる。


葉山ファクトリー改修の様子 左上:古い天井を取り外して空間を高く 右上:葉山ファクトリーのサイン 右下:壁紙をはがし、新しく 左下:まかないの時間



そして「シェアリング×アップサイクル」の拠点に


そしてここは、”アップサイクル”の拠点にもなる。アップサイクルとは価値を創造することで、従来から行なわれてきたリサイクルとは異なり、単なる素材の原料化やその再利用ではなく、元の製品よりも価値の高いモノを生み出すことを最終的な目的とすることをいう。

空き家レンジャーには多くの人の力が集まるようになったが、一方でDIYに必要な材料や工具の費用をどう集めるかという課題は依然として残る。プロに依頼した場合の家の改修費用は1/3は材料費、残り2/3が人件費と言われている。DIYで改修したとしても、材料費はどうしてもかかってしまう。またみんなで作業をすると、必要な工具も不足する。

「一方で、置き場がなく捨てられてしまう材料や、眠っている工具も沢山あるという実態もよく聞いており、本当に”もったない”と感じています。家づくりだけではなく、ものづくり全般で、材料や工具の共有化ができたら、多くの材料や工具たちが救われると考えました。」という加藤氏。そこで、クラウドファンディングで支援を募り、この場所もアップサイクルで作っていこうと考えた。逗子の空き家を改修した際に廃材もたくさん出たが、庭に放置されたままになっていた。それも葉山に運んで、うまく使う。その他にも、枕木がウッドデッキに、コテがドアノブに、荷台がテーブルに、釘が看板になど、たくさんのものに生まれ変わっていく。そして集まった工具や材料は、完成後のものづくり工房でももちろん継続して使ってもらえるという。

「この活動を始めてみたら、うちの空き家も使ってほしいと、多くの声をかけていただいていますが、全てに答えられないでいます。今後は、大工さんに謝礼を払って、もっとちゃんとDIYを学びたい人にリノベーションスクールを作ってもいい。この活動を広めていくことで、空き家問題の解決になるのでは、と模索しています。」
空き家レンジャーの活動を通し、自分たちの手を動かすことで、その場所がいつの間にか自分の場所に変わっていく。これからのものづくり、まちづくりのあり方を垣間見た気がした。空き家レンジャーへの参加や、葉山ファクトリーのクラウドファンディングへの支援を募集中なので、興味のある人は是非一度参加してみてはいかがだろうか。

葉山ファクトリーのクラウドファンディングページ
https://camp-fire.jp/projects/view/36203?token=3g0091ku


アップサイクルで作られたモノ 上:コンクリートスツール 左下:コテでできた取手 中下:クギでできたサイン 右下:使われなくなったリンゴ箱でできたミニ屋台



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