「都市のスポンジ化」が進行。対策が進まなければ都市の衰退は避けられない!?

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「都市のスポンジ化」とは何か


空き家や空き地の増加、人口減少による需要の低下など近年のさまざまな都市問題に関連し、最近よく聞かれるようになった言葉が「都市のスポンジ化」だ。
これはいったいどのような状態を指し、どう対策が進められようとしているのだろうか。「都市のスポンジ化」の状況と対策について主なポイントをまとめておくことにしよう。

国土交通省社会資本整備審議会「都市計画基本問題小委員会」が2017年2月15日に設置され、今後4~5年程度をかけて、都市計画問題の全体を見渡した検討をすることになっている。この小委員会で最初に取り上げられたテーマが「都市のスポンジ化」であり、数回にわたる検討を重ねた後、8月10日に対応方策(都市計画基本問題小委員会中間とりまとめ)を公表した。

同小委員会では「都市のスポンジ化」およびそれに関連する「都市の低密度化」について、次のように定義している。

【都市のスポンジ化】
都市の内部において、空き地、空き家等の低未利用の空間が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダム性をもって、相当程度の分量で発生する現象
【都市の低密度化】
人口減少に伴い都市全体の人口密度や土地利用密度が低下する現象

都市において、空き地や空き家などが「数多くの穴」のように点々と増えていく様子をスポンジに例えている。欧米などで使われている用語ではないが、イメージしやすいことを優先し「和製英語」であることを理解したうえで、あえて使用することに決めたようだ。


都市のスポンジ化とは、空き地や空き家などが「数多くの穴」のように点々と増えていく様子をたとえていう



「都市のスポンジ化」がどのように発生するのか


これまで「内から外」へ居住域の拡大を続けてきた国内の都市だが、2008年を境に人口減少局面に入っている。それに伴い従来とは逆に、「外から内」へ都市の縮小が進めば大きな問題は生じないのだが、人口は減っても都市の大きさや外縁は変わらないままだ。人口や需要が減っているのにも関わらず、依然として郊外エリアで開発が行われている事例もある。

居住・都市機能をもった範囲が変わらないままで人口が減ることにより都市の低密度化が進み、使われることのない空き地や空き家が「小さい穴があくように」次第に増えていく。

親が亡くなって家を相続しても相続人自身が既に自宅を所有しているため使われない、古くから営業する商店などは所有コストが低く閉店しても売却・賃貸など積極的な対応をしない、競争力が低下し空室の目立つアパートがそのまま放置されるなど、スポンジ化の要因もさまざまだ。

また、かつて盛んに分譲された郊外の住宅地などでは同世代の住民がまとまって入居した例も多く、高齢化が進むことによって一気に空き家・空き地化することも懸念されている。さらに今後は老朽化マンションが大量に生まれ、適切な維持管理ができないことによって「立体的なスポンジ化」が大きな問題になることも想定されている。


郊外だけでなく都市部にも増えているシャッター商店街なども都市のスポンジ化のひとつ



空き家だけでなく、点在する空き地も大きな問題


空き家についてはさまざまなメディアで取り上げられるため知っている人は多いだろうが、総務省「住宅・土地統計調査」による2013年時点の空き家数は約820万戸(空き家率13.5%)だ。このうち、とくに問題とされるのは賃貸用・売却用や二次的利用の住宅を除いた「その他の住宅」の約318万戸である。また、民間シンクタンク(野村総合研究所)の予測では、2033年時点で空き家数が約2,150万戸に達し、空き家率が30.2%に上昇する可能性も示されている。

老朽化した空き家については、解体・除却することが一つの対応策になる。しかし、それを単に解体するだけなら後に残るのは空き地であり、解体してもしなくても「スポンジ化」の要因のままだ。他に利用転換できなければ問題の解決にはならない。

全国の空き地面積(国土交通省「土地基本調査」による原野、荒れ地、池沼などを含む面積)は、1993年時点に1,279km2だったが、2013年時点では1,554km2に増加している。このうち個人所有の空き地は、2008年から2013年までの5年間で55%の大幅増となり、981km2に達した。その間の法人所有の空き地面積はほぼ横ばいであり、近年における個人所有の空き地の増加が際立つ結果だ。

また、都市中心部では空き地や空き店舗の増加(跡地の駐車場化、シャッター商店街の増加)、郊外や既成市街地では空き地や空き家の増加(古い住宅の危険空き家化など)が目立つ例も多い。中心市街地におけるスポンジ化の進行も深刻だ。空き地の増加は東京近郊でも例外ではなく、市区町村別の空き地率が50%を超える地域も点在する。


「東京都心から50km圏内の市区町村別空き地率」(国土交通省資料より引用。原野、荒れ地、池沼などを含む空き地率)



「都市のスポンジ化」によってどのような問題が起きるのか


空き家や空き地がランダムに発生する「スポンジ化」により、人口密度が低下し、まちの魅力の低下、生活利便性の低下、地域の価値の低下などさまざまな問題が起きる。「都市計画基本問題小委員会」の資料で例示されているのは次のような影響だ。

□ 生活サービスの縮小・撤退
□ インフラの非効率化
□ コミュニティの存続危機
□ 地価の下落
□ 景観・治安の悪化
□ 転入減・転出増
□ 賑わいの減少・経済活動の停滞
□ 行政サービスの低下

空き家・空き店舗・空き地の増加により、風景・景観が悪化すること、ゴミなどの不法投棄を誘発すること、火災の発生を誘発すること、防災や防犯機能が低下すること、空き家が犯罪に利用されることなども懸念されている。

その一方で、土地利用の転換過程で生じる暫定的な需要の受け皿になること、都市中心部での将来の整備事業のタネ地になること、成熟社会の市街地にふさわしいゆとり空間を提供することなど、スポンジ化した空き地などをプラス面として捉えようとする考え方もあるようだ。


スポンジ化が進むと空き地へのゴミの不法投棄など、さまざまな社会問題も出てくる



スポンジ化対策は今後の検討に委ねられるが、住民の理解も重要


「都市のスポンジ化」への対策として、改正都市再生特別措置法による「低未利用土地利用促進協定制度」や「跡地等管理協定制度」、改正都市緑地法による「市民緑地認定制度」など、既に制度化されたものもある。また、隣地取引と区画再編を組み合わせたランドバンク事業、低未利用建物の自律的なリノベーション事業、コミュニティのニーズに即した空き地の有効活用など、自治体や官民連携による独自の取組みをしている事例も「都市計画基本問題小委員会」の資料の中でいくつか紹介されている。

それに対して、今回の「都市計画基本問題小委員会中間とりまとめ」はスポンジ化対策の考え方や方向性を示したものであり、具体的な施策を取り決めたものではない。この内容をふまえたうえで、国土交通省は今後、必要な制度化、概算要求、税制改正などについて具体的な検討を進めるとしている。

土地の所有権と利用権を分離した利活用、行政の関与や働きかけなどによって、スポンジ化した「穴を埋める」こと、あるいは契約的手法の導入やコミュニティ活動を推進する仕組みづくりによって、スポンジ化による「穴の発生を予防する」方策などが考えられている。これまで開発・建築行為の規制などの「入口」にとどまっていた都市計画制度を見直し、土地などの利用段階までを含めて管理することなども提言されている。

さらに、市町村によるマスタープランのほか、最近の施策でも立地適正化計画によるコンパクトシティ化、新たな住宅セーフティネット制度、空き家バンクの整備など都市のスポンジ化対策と関連するものは多く、今後の対応の進展に伴い国や自治体で見直しや整備がされる法律・制度も多岐にわたるだろう。

また、「都市の現状と将来的に持続可能な姿を正しく市民に伝えること」の重要性も指摘されている。地域住民に、都市が縮小する過程で生じる事態を直視してもらい、しっかりと理解を得ることが大きな課題になりそうだ。


都市のスポンジ化を防ぐ対策の一つとして</br>「都市の現状と将来的に持続可能な姿を正しく市民に伝えること」の重要性も指摘されている



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