絞りの町「有松」に新名所。築170年の旧家をクラウドファンディングでカフェ&バルとして再生!

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有松絞り開祖ゆかりの旧家を、カフェ&バルとして再生させた理由とは?


名古屋市緑区有松は、「有松鳴海絞」の職人文化が残る町。江戸時代、参勤交代で東海道を往復する諸国の大名が国への土産として反物や手ぬぐいを買い求めたことから、「有松鳴海絞」の名が全国的に知られるようになった。街道沿いに江戸時代の町家が建ち並ぶ町並みは、地元の活動が実り、2016年文化庁より「重伝建(重要伝統的建造物群)」に指定されている。

江戸時代の面影を残す有松のなかでも、ひときわ存在感を放つのが「竹田家」の建物。有松絞りの開祖・竹田庄九郎の分家筋にあたる「竹田嘉兵衛商店」が、築200年以上建つこの町家で有松鳴海絞の店を営んでいる。庭園にある茶室は徳川14代将軍家茂も訪れたというほど、歴史的な価値の高い建物だ。

この「竹田家」のはなれだった空き家が2017年2月、クラウドファンディング等の活用により「カフェ&バル庄九郎」として再生された。活動のキーマンは、竹田嘉兵衛の子孫である中村俶子(なかむらよしこ)さん。
「所有されていた方が手放すことになり、竹田家に戻ってくることになったのがきっかけです。名古屋市から残してほしいという要望があり、私も貴重な文化を継承したいという思いが強くありました。そこでただ保存するだけでなく、周囲の皆さんからお声を聞いて『カフェ』として活用することに決めたのです」

有松を代表する商家に生まれ、町並み保存の旗振り役を務めた父の背中を見て育った中村さん。「旧竹田家はなれ」の空き家再生にかける思いとこれからについて、話を聞いてきた。


名古屋市有形文化財指定された「竹田家」は、土庇や出格子窓が印象的。有松の町並みは大火により一度消失。江戸中期~末期にかけて建て直された町家が残されているという



クラウドファンディングにより、1ヶ月で500万円の支援が集まった!


6代目竹田嘉兵衛氏の隠居所でもあった「旧竹田家はなれ」。今回のカフェ再生は、「なごや歴史的建造物保存活用工事助成(クラウドファンディング活用型)」の助成第1号としても注目されている。これはクラウドファンディングで必要額の1/2以上集めると、差額を助成してもらえる制度だ(例えば、1,000万円の事業であれば、500万円集めると500万円の助成金が受け取れる)。

「資金調達の方法について名古屋市に相談したところ、この制度を教えていただきました。クラウドファンディングはまったく知らなかったけれど、はい集めます!と気軽に答えてしまいました」と笑う中村さん。リターンは、有松鳴海絞の認知と感謝の気持ちを込めて、絞りの小物やカフェ利用チケットを用意した。すると、2016年10月から約1ヶ月で目標金額の500万円を達成。
「短期間でこれほど集まるのは、とても珍しいことだと聞きました。北海道から九州にわたる多くの方々からの支援、そして大口の支援をしてくださった有松のファンの方のおかげですね」

実際に工事に着手したところ、驚きの出来事もあったという。
「床の間から『弘化三(1846)年』と書かれた床板が見つかったのです。このはなれは大正時代に建てられたものだろうと推測していたのですが、今から170年ほど前、江戸時代末期の可能性もあると分かり、本格的に直さなければと気持ちが引き締まりました。家は壊してしまえば、その命は終わってしまいます。一生懸命守り続けてくれたということに、大きな価値を感じましたね」


「工事を始めたら家がみるみる生き返ってくるのを感じました」と目を輝かせる中村さん。茶室は竹の建具や長押をそのまま生かし、建築当時の空気感を残している



古民家を受け継ぐには「古さと新しさのグッドミックスが大切」


耐震補強や改築工事が終わり、2017年2月、築170年以上の旧竹田家はなれは「カフェ&バル庄九郎」としてよみがえった。格子戸をガラリと開けると、吹き抜けのある開放的なカフェスペースに驚かされる。

中村さんが同カフェの設計に込めたのは、「古い日本家屋がどれほど美しいものかを広く知ってほしい」という思いだった。

「私は、日本家屋の魅力を後世に伝えるには、古さと新しさのグッドミックスが大切だと思っています。柱や長押、地窓などをうまく配したバランスの美しさ、そして内と外の境界があいまいで自然を取り入れながら暮らせること。そんな居心地のよさを味わっていただくために、伝統建築をそのまま残すだけでなく現代に合った要素を加えました」

例えば、カフェの玄関からつながる和室は天井と壁を取り払い、フローリング張りの大空間に。ベージュの土壁とこげ茶の柱・梁が織りなす空間に、ターコイズブルーのチェアが映える。「着物の帯あげや帯締めで差し色を楽しむイメージで、イギリスの建物の窓枠の色からこのブルーを思いつきました」と中村さんは微笑む。
また照明計画は、名工大夏目欣昇研究室の学生とコラボレーションし、若い世代のアイデアを積極的に採用。吹き抜けを彩る有松絞りのモダンなペンダント照明は、海外でも評価されているものだ。

築200年以上の有松の町家で生まれ育ち、結婚を機に建築業界に従事、フィニッシングスクールの校長も務めた中村さんの豊かな経験が反映され、息を吹き返した古民家カフェ。だからこそ懐かしく新鮮で、何よりおしゃれだ。


60m2ほどのカフェは、吹き抜けの下のカフェスペース、茶室を生かした個室、縁側からなる。縁側には弟である有松絞り作家・竹田耕三氏が遺した絞りの古書がずらり。ライブラリーカフェとしても楽しめる



この秋からNPOの名称を変更し、有松の観光により注力


中村俶子さんは2015年から、有松鳴海絞の文化継承を目的にしたNPO法人「コンソーシアム有松鳴海絞」の代表として活動してきた。同NPOは2017年10月「コンソーシアム有松」と名称を変え、有松の町全体の観光にも力を入れていく。

「ここ数年、有松の町の取材が増えてきて、注目が集まっていることを実感します。そこで有松鳴海絞、江戸の町並みに続くもうひとつの柱として『有松はおいしい!』という食でのまちづくりを進めていきたいと話し合っています。有松はただ駆け抜けたらあっという間の小さな町。文化に興味のある方がゆったりと観光を楽しむには、町家の中で食と空気感も味わっていただきたいと思っています」

新たな取り組みとしては、10月下旬に開かれる「晩秋の有松を楽しむ会」で、有松の個性的な飲食店が「弁当」の競演を行う予定。文化と歴史を満喫できる町歩きに「食」の要素が充実すれば、より遠方から足を運びたくなる町になりそうだ。

取材が終わる頃、カフェには職人さんやご近所さんが、友達宅のような気軽さで集まってきた。聞けば、有松の語り部からお話を聞き取り、ボランティアの方がデータベースとしてまとめている最中だという。「カフェ&バル庄九郎」は観光の新名所、そしてまちづくりの拠点として大きな役割を果たしていきそうだ。

カフェ&バル庄九郎
https://www.facebook.com/cafe.bal.showkuro/


「カフェ&バル庄九郎」のオーナーである中村俶子さん。ランチは4種類あり1,500円。夜は、中村さんが腕をふるう「家のおもてなし料理」が味わえる



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