高蔵寺ニュータウンに活気を取り戻せ! 人気DIYクリエーターとのコラボで空き家流通事業がスタート

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人気DIYクリエーターとつくるDIY住宅


高蔵寺ニュータウンといえば、愛知県民であればほとんどの人が知っている巨大ベッドタウンだ。日本三大ニュータウン(※)のひとつでもあり、全国的にも知られているだろう。
今回はここで行われているDIYを活用した空き家流通促進事業について紹介したいと思う。

『~自分の手で魅力いっぱいの住宅に~ おしゃれなDIY住宅を造ろう!』と題し、ニュータウン内のUR賃貸住宅をカフェのようなおしゃれな部屋に作り上げるワークショップが開催。講師兼プロデューサーに全国的にも有名な人気DIYクリエーターのchikoさんを迎え、市民参加で一室をリフォームしているという。
その経緯と内容について、春日井市まちづくり推進部ニュータウン創生課・主任の津田哲宏さんとDIYクリエーターのchikoさんにお話を伺った。


※日本三大ニュータウン:東京・多摩ニュータウン、大阪・千里ニュータウン、愛知・高蔵寺ニュータウン


巨大ベッドタウンとしてにぎわいを見せた高蔵寺ニュータウン。入居開始から来年で50年が経とうとしている。JR名古屋駅まで約30分、緑豊かで自然環境にも恵まれた地域である。写真提供/春日井市



魅力的な物件を“探す”のではなく、自分の手で魅力的な家を“つくる”


なぜDIYを活用しようと思ったのか、その理由について津田さんは、
「住まいを探すときに、いい物件を探すというのはもちろんですが、自分で手を加えることで住宅の価値を高めていくという提案ができるのではないかと考えたからです。魅力的な物件を“探す”のではなく、自分の手で魅力的な家を“つくる”ことができるという意識が広まれば、空き家の流通促進になる、と考えました」と答えてくれた。

ニュータウン内の空き家率は、戸建て住宅3.2%、分譲マンション6.8%で、全国の空き家率13.5%(※)と比較すると「急激に深刻化しているわけではない」と津田さん。ただ一方で、UR賃貸住宅に関しては16.9%と全国を上回る空き家率となっている。これはエレベーターのない中層住宅4、5階に空き家が増えていることに原因があるという。
今回のDIYの舞台となるのはニュータウン内の藤山台にあるUR賃貸の1階。若い世代に人気の高いDIY住宅を提案することで、新たな需要を創造し、空き家率減少の足掛かりにしたい考えだ。
そこで講師として白羽の矢がたったのが、愛知県在住DIYクリエーターのchikoさんだった。

※2013年総務省統計局・住宅土地統計調査による


春日井市ニュータウン創生課の津田さん



相性のいい“空き家×DIY”


chikoさんは、インスタグラムのフォロワー数が3万人を超える全国的にも有名なDIYクリエーター。『WAGON WORKS』としてDIY作品を創作し数々のコンペでの受賞歴もあり、その腕前は折り紙付きだ。

「ニュータウンには友人の実家があったりして、少なからず縁のある場所です。にぎわいのある時代もありましたが、住民も住宅も歳をとって、空き家が増えていることも知っていましたし、漠然となんとかできないかな~とは思っていました」。(chikoさん)

自身も築10年の中古住宅を購入。以来18年間、DIYで家じゅうを改造し、現在も手を入れ続けて快適な住まいに造り変えている。

「DIYはひと昔前に比べるとずいぶん認知度も高まってきました。DIYの楽しさや知識を広めたいと思って、ブログなどSNSでレシピを提供してきましたが、それもだいぶ浸透してきました。じゃあ、次のステップとして広まった知識や能力を何かに生かすことはできないかな、と考えるようになったんです。自宅を改装してきた自分の経験からしても、空き家とDIYは相性がいいとずっと思っていて、DIYリノベーションのコンペでは空き家問題にもDIYを役立てたいとプレゼンし、グランプリをいただいたこともあります。だから、今回お話をいただいたときは、『これがやりたかったことだ!』と思って、驚きました」。

DIYの知識と技術を社会に役立てたかったchikoさんと、空き家の流通促進を模索する市とのコラボが実現した。


愛知県在住のchikoさん。自宅のウッドデッキを作り上げたり縁側のある和室を洋室にリノベしたりと大胆なDIYから、100均アイテムを使ったお手軽DIYまで幅広い創作活動を続ける人気クリエーター。著書に「let



DIYが社会の役にたつことを証明したい


今回DIYを施す物件は藤山台にあるUR賃貸住宅。バルコニーを含め約48m2。3Kの間取りのうち、トイレ、浴室以外の部屋をカフェ風に変身させるという。
ワークショップは2017年11月~12月の土日で開催。木工、漆喰、塗装などの作業をchikoさんはじめ、プロの職人らと一緒に実施。応募の中から選抜された11名が参加している。
実際の作業はどんなものかというと

●和室の畳の上にフロアタイルを張る  ●壁に漆喰を塗る  ●壁を板張りにする  
●窓枠を作る  ●TVボードや飾り棚、机を作る 

といった作業などが2ヶ月間の土日で詰め込まれている。
chikoさんはじめプロの職人から直接学べるのはめったにないチャンス。

「DIYといっても実際にどういう風にやるのか、どの程度できるのか、こういう機会があれば知ることができますよね。プロから直接学ぶなんてなかなかできないことですから、中古物件を視野に入れて物件探しをしている人にとってはとても意義のあるワークショップだと思います」。(chikoさん)。

さらに

「海外ではDIYが文化として根付いていますよね。自分で壁にペンキを塗ったり、修繕して住み継いでいくことが当たり前になっていますが、日本ではまだそれを自分でしようという人は少ない。単なる流行りではなく、DIYが社会の役に立つんだということが証明できれば、日本でも文化として根付いていくんじゃないかと思っています」
と話してくれた。

今後は、12月に完成するこの物件を2018年1月下旬頃モデルルームとして公開。2月には今回のワークショップを踏まえたchikoさんの講演会を企画しているそうだ。


写真上:男女合計11人が参加。chikoさんは主に木工の作業をレクチャー。あとは職人さんに教えてもらいながらの作業に<br>下:chikoさんお得意のアメリカンテイストを基調にしたデザイン図。写真提供/春日井市



高齢化を肯定的に受け入れる近未来化の取り組みも


今回のDIYを活用した空き家流動化促進事業は、市や商工会議所、UR都市機構、金融機関などで組織された「高蔵寺ニュータウン住宅流通促進協議会」が主体となって動いている。2017年度、国土交通省の先駆的空き家対策モデル事業にも採択されており、モデルケースとして活用の道が期待されている。
今後もURだけでなく戸建て、中層集合住宅を対象にワークショップや相談会を進めていくという。

空き家問題、少子化による小学校の統廃合―。なんだか寂しいニュースばかりがピックアップされがちなニュータウンではあるが、新しい取り組みも始まっている。
市と商工会議所、OKB大垣共立銀行などが出資して「高蔵寺まちづくり株式会社」を設立。空き家の流通促進を行うほかニュータウン内の余剰となった小学校を利活用した「高蔵寺まなびと交流センター」(平成30年4月開所予定)の運営に取り組む予定だという。
さらには、愛知県、名古屋大学、トヨタ自動車株式会社などと連携し、自動運転や歩行支援モビリティの実用化に向けての実験も行われている(※)。

こうした近未来的な取り組みで高齢化を肯定的に受け入れる準備を進めつつ、若い世代の流入促進に向け、DIYを活用した空き家流通を目指しているのが、高蔵寺ニュータウンの今の姿だ。

(※)
自動運転:走行時にドライバーがハンドル操作をしない自動車運転システム
歩行支援モビリティ:自力歩行が困難な方の移動をアシストする次世代型電動シニカー

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今回の取材の前に実はchikoさんの自宅を拝見したことがある。想像をはるかに超える大胆なリノベーションを施した家は、常に新しくアップデートされていて(ほぼ毎日何かしらDIYされている!)、感動すら覚えた。家族構成が変わったり、子どもの成長に合わせて家もどんどん成長させてあげるべきなのだと感じた。
そして、すでにあるものを直しながら使っていくといういわゆるエコやリサイクル的な意味合いのDIYではなく、DIYとは創造するものでもあるのだとchikoさんのお宅を拝見して感じた。
住む人の感性やひらめきで新しいものに変えていく。そんな感性をもったDIYerにとっては空き家は宝の箱だろう。

空き家×DIY。chikoさんの言うように相性がいい。これからも増加するであろう空き家をベースにして、DIYで暮らしを創造する人が増えていったら面白い。


2017年9月にトヨタ自動車と締結した覚書により、歩行支援モビリティの走行実験(写真上)や、自動運転実証実験(写真下)を開始。ニュータウンの初期入居者が一斉に高齢化を迎えるという課題に対する取り組みのひとつだ。写真提供/春日井市



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