面白くなってきた阪急灘高架下。変化はこれからどうなる?

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ずっと空き地なんてもったいない


JR神戸線を始め、複数路線が交差する兵庫県神戸市内有数の繁華街三宮。そこから大阪市北区の梅田駅に向かう阪急神戸線の灘高架下がここ3~4年で変わりつつある。三宮に近いエリアでは以前から店舗等が入居、賑わっていたが、少し離れた隣駅春日野道、さらにその隣の王子公園の高架下は空き区画が目立っていた。使われているとしても倉庫、駐車場などあまり人が近寄らない使い方が多かったのだが、最近は店舗、工房などが登場、時にイベントなども開かれるようになっているのである。

動きが始まったのは2013年11月。音を出して作業をしても良い工房を探しているという人たちに相談を受けた神戸R不動産の西村周治氏が空いていたいくつかの高架下区画を紹介したことが、ひとつのきっかけになった。そもそも音が出ている場所である、下で音を出してもよかろうという発想だが、もうひとつ、空いていた高架下を見学した時の経験もあった。

「たまたま見せてもらった区画には、昭和初期に作られた煉瓦や鉄扉が残っていた。昭和が冷凍保存されたような区画に衝撃を受けました。場所によって違いますが、高架下は天井が高く、他の建物などとは違う開放的で雰囲気のある空間。しかも、当然ですが、鉄道の駅間にずっとあり、利便性が高く、分かりやすい場所。使い方次第で沿線が変わるのではないかとも思いました」。


ところどころに壁のない、使われていない高架下があった



スケルトンの空間が少しずつ生まれ変わってきた


時代の変化のせいだろう、以前は木工所、鉄工所などの製造業が使っていた区画などで空き区画が目立ち始めてもいた。そこで高架下で古くから営業している人に阪急電鉄の担当者を紹介してもらい、仲介を始めることになった。

「当時空いていた区画は、駐車場や倉庫に使われていたので、床は土のままで柱や梁があるだけのスケルトンの空間でした。まったくの空き地なので、そこから工房として出来上がった空間をイメージをできる人は少ない。そのため、倉庫以外の借り手はいない状況でした。改修費用が多額になるため、またここで製造業を始めようという人もいなかった。

ところが、最初に入った家具屋さんがDIYで工房アトリエを、次に入った革製品工房の区画もまたDIYで工房、ギャラリーを作ったことで流れが変わりました。入居者が自己負担でコストを抑えてDIYして自分の空間を作り始めたのです。見ていただければ分かる通り、他にない空間ですから、それを見て、ここに店を出したいと思う人が出始めたのです」。


この状態から完成後の姿を想像できる人は意外に少ない



百花繚乱、個性的な空間揃いの高架下


初期に入居した人たちは職人が多く、自分たちでDIYができる人たちだったのが功を奏した。目の前にそうして出来上がった空間があれば、空き地の見え方も変わってくる。また、自分でやることでコストをかけずに整備ができること、その結果として個性的で、異なる空間が生まれることも徐々に知られるようになった。

「オーナーが出資、整備してから貸すとどうしても賃料が高くなり、かつ画一的な空間になりがち。でも、ここは自分でやることが前提だったので、床面積だけを見ると相場に比べてそれほど安いわけではないものの、天井の高さを考えると割安になります。しかも、電車が走っている間は音の出る作業をしても良い。高さがあるから家具店などが長い材木を収納するのに便利だし、屋根があるので濡らさずに搬入・搬出もできる。モノを作る人たちには使い勝手の良い場所です」。

私もいくつか見せてもらったのだが、高さを生かしてロフト空間があったり、高さをそのままに開放的に使っていたりと百花繚乱。コンクリートの壁面がニューヨークのロフトを思わせるようなスポーツクラブもあった。点在しているため、それほど多くは感じられないが、この3年余で30区画くらいが埋まり、新しい店舗ができた。

ところで同エリア内には阪急とJRが並走している区間があり、その部分ではひとつの空間に見える高架下のこっちとあっちで所有者が異なる。その場合、阪急がJRから土地を借り、それを自社分と合わせて貸す形になっているとか。ひとつの空間なのにアーチの形状が異なるのがその証左で、高架下の作り方ひとつでも社風が現れると思うと面白いものである。


使い方はそれぞれ。左上は鉄を使った製品を作っている工房。手前と奥でアーチの形状が違うことが分かる。手前が阪急で、奥はJR



賑わいに刺激され、新しいゲストハウスも誕生


入居者間の横の繋がりも生まれてきた。ここを借りているのは革や鉄、木などを使う工房や内装、デザイン、ランドスケープの事務所などが多く、共通するのはモノを作る人たちであること。年代も30~40代と近しい人たちが多いからだろう、互いの間で仕事が流通しだしているのである。

当初は神戸R不動産で音頭をとって始めた、普段非公開の工房を公開するイベントも3回目からは入居者が主体となって行われた。その時に見た空間に憧れ、高架下を借りたいという人も増えており、常時順番待ちが4~5組はいるという。

高架下に人が増え始めた状況に刺激され、すぐ近くにゲストハウスも誕生した。しかも、ここの内装デザインは高架下に入居している会社が担当、周辺の人たちが集まってDIYで作ったという。同社は他の高架下オフィスなどの内装デザインも手掛けており、いずれもお金はかかっていないのにかっこいい。2年ほど空き家になっていた元診療所のゲストハウスの内装を見ていただければ、廃品を上手に活用、独自のスタイルに仕上げる手腕が分かるはずだ。

また、かつては「不審者に注意」「ゴミ捨て厳禁」などという張り紙のあった場所に店舗ができ、不審者がうろうろしにくく、ゴミを捨てにくい雰囲気になってきてもいる。人の近寄らなかった高架下が少しずつだが、変わりつつあるのである。


高架下と道を挟んだところにできたゲストハウス「萬家(MAYA)」。元診療所だったため、レントゲンや医療用の鋏等、往時の面影を残す品を随所に使用。1階にはインフォメーションセンター、キッチンなどがあり、奥にはお籠り感覚のあるスペースも



空白になっているエリアにこそ伸びしろがある


繁華街三宮は賃料、住宅価格も高いが、その隣春日野道や王子公園の人通りはまだまだ少なく、賃料、住宅価格がくんと下がる。だが、だからこそ、将来性は今、安い春日野道や王子公園にある。高くなりきってしまったところには個人の面白い店は出店できないし、モノを作る人たちはイメージが固まってしまったまちを嫌う。

首都圏でもかつて人気の高かったまちがその人気の結果、賃料、住宅価格などが上がり、画一的なチェーン店ばかりになってしまった、つまらなくなったという声を聞く。まちの魅力が多様性にあると考えると、資金力のある企業にしか出店チャンスのないまちが面白くなくなるのは仕方ないことなのかもしれない。

ちなみに西村氏は、同じ高架下でも便利なところは扱わないという。「需要のないエリアに興味があります。みんなが見放して空白になったエリアにこそ、伸びしろがあり、可能性があります」。

こういうへそ曲がりな不動産会社がいるまちにはこれから面白いエリアが生まれてくるんだろうと思う。羨ましいぞ、神戸。


通り沿いと反対側、いずれも同じ家具店。高架のある土地に段差があり、通り沿いはそれほど天井高はないものの、反対側は非常に高く、長い材木などを置くのに便利



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