簡易宿泊所の並ぶ日進町を、人と文化の交流の地に変えたい。リノベで生まれた複合ビル、「unico」を見てきた

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築50年の食品包材会社の元社屋+工場・社員寮を全面リノベーション


神奈川県のJR川崎駅前から約徒歩8分に位置する、日進町をご存じだろうか。高度経済成長期には町工場が立ち並んでいたが、徐々に簡易宿泊所が集積した。2015年5月、ここにある簡易宿泊所が全焼し居住者計11人が死亡、全国的に報じられた。火災以降は廃業する宿泊所も現れ、居住者は徐々に減少。現在も20数軒が立ち並んでいるものの、閑散とした雰囲気が漂う。

今回取材した「unico」は、その日進町の端にある。約築50年の、約1764m2もの食品包材会社ヨネヤマの元社屋+工場と社員寮とが全面的にリノベーションされ、地域の活性化を目指す複合ビルとして生まれ変わった。グランドオープンは、2017年8月。シェアオフィス、複数のスモールオフィスを設けたほか、カフェ、掘りごたつつきのコワーキングスペース、デジタル木工機器を導入した工房、卓球場兼ビストロなど多様なテナントが入居した。17年12月には、グランドオープン前から準備を続けていたブルワリーが、1階の通り沿いにオープン。18年には館内にシェアハウスも完成する。


上/1階の通りから屋内を見た様子。入ってすぐにブルワリーとカフェのカウンターが続く 下/建物の外観。左の棟が元本社+工場、右が元社員寮。元社員寮をシェアハウスに変更予定(写真提供:NENGO)



“発酵してる?” をスローガンに、スタートアップの拠点を目指す


リノベーションのディレクション、設計・施工、テナントのリーシングを担当したのは、不動産仲介から建設、まちづくりまで総合的に手掛けるNENGO。

「unicoのスローガンは“発酵してる?”です。多種多様な業種の人が集まり、仕事や遊びの中で互いに触れ合って発酵(成長)し、新たな仕事や文化を生み出すイメージですね。さらに彼らが、日本各地のみならず世界へと巣立つ場にしたい。そのような大きな動きをつくり、エリアの活性化に結び付けていきたい」と、ディレクションを担当した、NENGOの建築プロデューサー・中村彰さんは話す。テナントを探す際も、そうしたスローガンに合うコンテンツを優先して声をかけていった。まちとの一体化も意識し、「働く」「食べる」「遊ぶ」それぞれの要素のテナントが揃うように留意。また、人を引き寄せ、まちを変えるような突き抜けた個性も重視したという。


左上/2階にある卓球場兼ビストロの「中目卓球ラウンジ川崎分室」 右上/1階、デジタル機器を置く工房「VUILD」 左下/3階のシェアオフィス共用部。正面はミーティングルーム 右下/掘りごたつが目を引くコワーキングスペース「創荘」



「特徴的な部分は既存のまま残し、魅力的な建物に生まれ変わらせたい」


この建物は、1960年代に新築した元本社社屋+工場と、100人規模の元社員寮だ。当時、集団就職の若い男女が多く入社し、会社も寮も活気にあふれていたという。89年に本社が移転した後はグループ会社が使っていたが、近隣が住宅地に変わってきたのを機に移転した。以降は活用の方向性を模索しつつ、これまで16年間空き家にしていた。

約築50年のRC造の建物は老朽化も目立ち始め、解体を選択してもおかしくない。物件の所有者であるヨネヤマは、なぜリノベーションすることにしたのだろうか。

その理由をヨネヤマの取締役、武井雅子さんはこう話す。「マンションなどに新たに建て替えるか、リノベーションして活用し続けるか悩みました。私は古い建物の趣が好きで、ニューヨークの、建築当初の設計を生かしつつ内装や設備を刷新した魅力的なホテルに泊まったことがあります。その様子を思い返すと、この元本社社屋+工場と元社員寮はまだまだ使えるのではないか、と感じました。子供のころから身近にいて愛着があり、正直、壊してしまうのには抵抗もあった。そこで、築古の建物のリノベーションや活用に詳しいNENGOに相談したんです」


左/以前の本社社屋1階の様子。倉庫として使用していた 右/社員寮の様子。畳敷きに各人が布団を使い就寝(写真提供/ヨネヤマ)



昭和の趣のある床・壁に木材を加え、フォトジェニックな内装に


NENGOは耐震診断などの調査を行い、リノベーションすれば十分使い続けられると判断。武井さんの要望を受けて、なるべく建築当初の外観や内装のデザインを残しながら、耐震性や、給排水・電気といったインフラ設備など、建物の性能を向上させるリノベーション計画を立てた。建て替えの、約半分の工事費を目安に計画を調整したという。並行して、unicoが日進町エリアを活性化させる拠点となるようなリーシング計画を提案していった。

室内は、既存の間仕切りや水回りは撤去し、入居するテナントの要望する広さをヒアリングしながら空間を仕切り直した。一方で、共用部は既存の昭和の工場を象徴するような床や壁の塗装や、当初から使っていた照明器具や電話、消防設備などをアクセントとして残し、新たに仕上げに木材を組み合わせ個性を生み出した。それぞれの店舗にも、既存の床や壁を活かしつつ、最低限の什器やディスプレイを加えて内装を仕上げてもらった。「どこを切り取ってもフォトジェニックで、ワクワクするような館内にしたかった」とNENGOの中村さんは話す。


3階の廊下の様子。既存の床や壁の仕上げ、手洗い場などは残した。各部屋を示すサインや、壁に取り付けた構造材のパネルで新たな表情を加えた



1階の間口を開放して、立ち寄りやすい雰囲気づくり


多くの人が立ち寄り、自然に集いやすくなるように工夫したのが1階だ。天井高4mもの空間は、間口に扉などを設けず、目前の道路に向かって大きく開いた。その開放的な空間にカフェや、ビールのブルワリーのカウンターが配置されている。道路からすぐ目に入り、初めて来た人も、屋台のような感覚で気軽に立ち寄れる。

間もなく日進町では、約4000m2の敷地を持つ川崎市福祉センターが複合福祉施設として建て替えられる。また、NENGOはこの近隣の簡易宿泊所をゲストハウスとして運用する予定だ。「新たな福祉センターとunicoの双方に向かい、人の流れができるといい。元簡易宿泊所のゲストハウスも加え、効果的に、日進町エリアに賑わいを呼び戻していきたいですね」と中村さんは展望を語ってくれた。


左/1階のカフェカウンター付近から通りを見る。ふらりと立ち寄れそうな距離感(写真提供/NENGO) 右/2つの棟をつなぐ1階の中庭。交流の場としても活用予定



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