北海道滝川市「そらちワイン」で広がる地元レストランの取り組み。ワインツーリズムからも引き出される地域の魅力とは?

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ワイン用ぶどうの産地としても、醸造所としても注目が高まる北海道


北海道産のワインと言えば、「小樽ワイン」「余市ワイン」「十勝ワイン」「富良野ワイン」などを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。特に「余市」と言えば、ニッカウヰスキー北海道工場があり、NHKの連続テレビ小説「マッサン」の舞台となったことで、さらにその地名の知名度を上げたのは記憶に新しい出来事だ。

国税庁が平成27年度調査分として発表した資料「国内製造ワインの概況」によると、日本国内でワインを製造している企業は専業・兼業を含めて261事業所。資本金3億円・従業員300人がボーダーラインという設定になるが、それ以下にあたる中小企業割合は実に96.8%にもなり、日本のワイン製造は地場産業で支えられている業界という側面が見て取れる。また、ワインの原料については、推計で75%程が輸入したぶどうが使われている現状で、まだまだ国内産ぶどうが使われたワインは希少であると言える。同資料によると、北海道での製造免許者数は31。山梨県の72についで2番目。長野県の30と拮抗してはいるものの、日本でのベスト3に常に入っている状況となっている。また、近年、急速に新規製造業者も増えている状況でもあり、これらの情報を総括すると、北海道は身近にワインに関わる暮らしができる環境のひとつになってきているとも言えそうだ。

そんな北海道の現状で、知名度はまだまだこれからのものの、急速にブランド化が進んでいるエリアがある。北海道空知エリアだ。「そらちワイン」をさらに広げていこうとする取り組みを、北海道滝川市にある老舗イタリアンレストランのオーナーシェフにうかがった。


北海道空知エリアで唯一の地下ワインセラーを備える「TRATTORIA La Pecora」



新たな北海道のワインブランド「そらちワイン」


まず、ワインの話をする前に、用語を少し整理しておこう。まず、「ワイナリー」とは、ワインを醸造する会社や場所のことを指し、「ビィンヤード」はワイン用のぶどうを生産する農場のことを言う。ワイン用のぶどうを栽培しているからといって、必ずしもそこで醸造しているわけでなないことをまずは知って欲しい。また「国産ワイン」と「日本ワイン」の違い。「国産ワイン」と言っても、輸入した原料でも日本国内で製造したならば「国産」となり、日本国内で栽培されたぶどうを100%使用して醸造された、純国産ワインのことを「日本ワイン」と言う。今回ご紹介する、北海道滝川市を中心とした空知エリアは、日本ワインを製造するためのワイナリーやビンヤードが急速に増えて拡大している場所なのだ。

今年で創業27年になる滝川市のイタリアンレストラン「TRATTORIA La・Pecora(ラ・ペコラ)」 。空知エリアで唯一と言われる地下にワインセラーを完備する老舗店。オーナーシェフは2代目になる河内一輝さん。イタリアンの看板を掲げながら、実は「羊料理の店」として、北海道内でも注目の高い店。羊も北海道産にこだわり、枝肉といわれる、いわゆる一頭まるごとやってくる羊肉を店内でさばくというスタイルは北海道をくまなく探してもそう多くはない。ランチ・ディナーいずれもコアな時間はかなり賑わう地元でも屈指の人気店だ。

「空知エリアは、高品質な葡萄を栽培できる産地としても、とてもいい作り手のいるワイナリーとしても、本当に素晴らしいエリアになってきています。代表的なところとして、三笠市のYAMAZAKI WINERYとTAKIZAWA WINERY、岩見沢市の宝水ワイナリーと10Rワイナリー、ナカザワビィンヤード、KONDOビィンヤード、長沼町のマオイワイナリー、浦臼町の鶴沼ワイナリー、歌志内市の歌志内太陽ファームなどがあります。こんなにも空知エリアにはワイン用の葡萄を育てていたり、ワインを醸造しているところがあるんです。イタリアンレストランを運営する身としても、そんな環境に囲まれているので恵まれていますね」。

※イタリアンレストラン「La・pecora」をもっと知りたい方はこちら→「くらしごと」


オーナーシェフ 河内一輝さん



ワインを軸とした地域活性化につながる活動「滝川BYO」の取り組み


北海道滝川市は空知エリアの中心的な都市ではあるが、それでも人口41,000人ほど。札幌と旭川の間にある非常に面積が小さい細かな市町村を含めて空知エリアと呼ぶが、米を中心とした一大農業産地としても有名だ。ただ、北海道の他の都市と同様に、過疎化や少子高齢化の問題に直面しているのも事実で、北海道空知総合振興局では「空知ワイン室」を置くなど、新たな地域活性化対策に地元がかける期待も大きい様子がうかがえる。

地元飲食店と、そらちワインをコラボした取り組み、ワインを通じた地域活性化事業「滝川BYO」について、河内シェフにうかがった。
「BYOとは、『Bring Your Own bottle』の略。つまり、自らが用意したワインボトルを飲食店に持ち込むということ。飲食店で提供されるお酒ではなく、自分が飲みたい、或いは自分が同伴者に勧めたいと思うお酒のボトルを飲食店に持ち込み、お店の方にお願いして提供してもらうという仕組みです。滝川BYOとは『そらちワイン』に限って、滝川市内の滝川BYO加盟飲食店に無料で持ち込みができるという取り組み。たきかわ観光協会や滝川市商業観光課と、滝川市内の飲食店が一緒になって、もっともっと多くの方に、『そらちワイン』も『滝川BYOの仕組み』も知っていただこうと日々頑張っています」。

飲食店の経営をしていく上で、飲料品で利益を得ているお店が多い。「持ち込みが有料」「持ち込みは不可」といった店舗も多いのは当然の背景のなか、その利益を捨ててまで参加する意義を聞いた。

「確かに、私たちの飲食店側にとっては、利益を失ってしまいかねない制度です。なにせ飲料系のメニューを一切オーダーいただけなくなることもありますから。ただ、そこまでしてでもやっていく飲食店側の思いとしては、まずそれをきっかけでいいので、そらちワインを手にとってその素晴らしさを感じて欲しい。そして、飲食店に足を運んで、滝川の素晴らしい飲食店の数々を巡って欲しい。そう思っているんです。飲食店側でも地元の食材を使った料理や、地元ならではのサービスを一生懸命提供するように頑張っています。そうすることで、ワインの良さも滝川の飲食店の良さもわかっていただき、それらを通じて滝川市の、そして空知管内の良さをわかってもらえることに繋がるって考えているんです。リピーター…つまり、空知エリアのファンが増えることで、私たちの飲食店にもメリットがあると信じています」。

飲食店として「地元産のワインも置いてあげる」という立ち位置ではなく、「一緒に広げていきたい」という気持ちがこの活動の原点のようだ。目先の利益ではなく、交流人口を増やしていくことで、飲食店にもワインを製造に関わる人々にとってもメリットがあるという考えだ。


民間企業だけでなく、行政も期待を寄せるワインを通じた取り組み「滝川BYO」



生産者の声を、想いを、飲食店が代弁者となって伝えていく


さらに河内シェフはこう続ける。
「滝川市は空知管内では大きい都市。でもそんな滝川だって、人口が減っていっています。若い人も減ってきているし、このままじゃいけないって思っているのがまず第一です。飲食店を経営するみなさんも、それぞれに想いがあって、自分は特に地域のためにつながることができる店づくりをしようって考えるようになりました。ワインの醸造所も含めて、農家さんとの接点も多くつくるように心がけていて、単純な仕入れ先と出荷先のような関係じゃない、生産者の想いをちゃんと感じた上で、お店で活用していこうって思っています」。

小さなお子さんもいる河内シェフは、子どもの未来のためにも、地域貢献をしていきたいと考える。自身の活動を通じて、地域が元気になれば、出て行ってしまった若い人たちが戻ってこられる、戻ってきたくなる環境になるかもしれないと。そんな想いの輪は、滝川市内の飲食店、11店にもおよぶ。イタリアンレストランやフレンチレストランを思い浮かべるが、その中には寿司屋や手打ちうどんの店、ジンギスカン屋なども含まれるそうだ。

河内シェフが生産者とのエピソードも教えてくれた。
「滝川市から南西に位置する浦臼町のオソキナイという場所でワインを栽培している宇都宮ビィンヤードというところがあるんです。その宇都宮さんがつくっているワインなんですが、今ではあまり使われなくなってきたセイベルという品種を丁寧に栽培されていて、2015年に収穫したものが初めて出荷になったんです。そんな貴重なワインなんですが、ご自身自らがお店に持ってきてくれて、置いてくれないかってお願いされたんです。生産者が直接訪問して下さるようなお気持ちやお人柄にも惚れましたし、何よりも美味しい。香りもいいし、どんな食事にも合うんです。ぜひみなさんも応援してもらいたいですね。とはいえ、2017年に出荷されたのはまだ317本だけ。希少なワインです。宇都宮さんのような作り手の想いをお店を通じて伝えていきたいですね」。


希少なワイン「ヲソキナイノルビー2015」



ワインツーリズムの本当の目的。その先にあるもの


ここ最近は、ワインツーリズムといった、ワイナリーやビィンヤードを訪れ、農園や醸造過程を見て、作り手の話を聞き、その地域や雰囲気を感じ取る旅も流行している。
もちろんそうなったらすぐ飲みたくなるのが人の常というものだが、なかなかその場で飲むのには、車の運転などを考えるとできないことが多い。そこで滝川BYOの登場だ。ワイナリーでお気に入りの1本を手に入れたら、そのまま食べたいジャンルの滝川BYO加盟店へ。北海道、空知ならではの食材と一緒にワインを飲み、宿泊は滝川市で。そんな思い立ったらすぐ自分のツアーをつくりあげられるのも魅力のひとつ。滝川市はビジネスホテルも多くあり、格安ツアーを自分なりに作り上げることができるのも面白さといえよう。

河内シェフはこうも語る。
「そもそも、ワインボトルの持ち込みって、お店に対して失礼なことをお願いしているって感じに思われてしまっているかもしれないですね。そのお店にあるドリンクじゃないものを飲みたいんだって言うようなもんですから。お店側は、全然そんなこと思ってませんから、どんどんそらちワインを持ちこんでくれたら嬉しいです。空知を応援してくれてる人なんだなって嬉しくなっちゃいますね」。

ワインツーリズムの過程で出会う、農園に関わる人々、ワインの販売に関わる人々、飲食店スタッフの方々、地元の方々。ワインや料理だけではなく、人との出会いや想いも通じて、空知を、滝川を知ることが、地域活性化につながる取り組みではないだろうか。多くの地元の人と出会い、食を味わい、ここでしか得られない空気感を体感する。ひいては、そんな空知エリアとの接点がキッカケになり、ヨーロッパの雰囲気にも似た自然豊かな北海道で、「ワインの文化が身近にある暮らし」を特徴とした移住候補地として、考えてくれる人が少しでも増えることにも期待したい。

※滝川BYOについて、もっと知りたい方はこちら→「くらしごと」

取材協力
TRATTORIA La・Pecora

関連サイトと情報
北海道の人、暮らし、仕事 くらしごと
くらしごと公式Facebook
◎筆者:くらしごと編集部 三浦智昭



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