福岡県内のリノベーションスポット巡る「福岡DIYリノベWEEK2016」に参加してきた

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今年で3回目を迎えた福岡DIYリノベWEEK


2016年11月7日から13日の期間、福岡県内のリノベーションスポットを巡る「福岡DIYリノベWEEK2016」が開催された。築年数が経過したビルの再生活用の普及・啓発活動を行うNPO法人福岡ビルストック研究会が主催するこのイベントは、今年で3回目の開催となり、期間中の来場者は述べ1,000人を超えるなど、規模は年々拡大している。

福岡県下で"既存の物件を生かし地域を再生したい"という各々のビルオーナー達による勉強会から派生したこのイベント。主に賃貸住宅の住居に対して入居者自身がDIYでカスタマイズする"DIYリノベ"で、入居者同士のつながりを生み出し、建物に新しい価値をつけようとするものだ。
イベント期間中、福岡市をはじめ、久留米市や柳川市、八女市、大川市など全12のスポットでは、壁紙貼りや簡単な家具作りといったワークショップや宿泊体験など様々な催しが行われた。また、DIYリノベの事例について居室を訪問し、オーナーや住人に直接話を聞くこともできる。
今回は、2015年11月にHOME'S PRESSの記事、福岡DIYリノベWEEK2015で紹介した柳川商店街の空き店舗活用」、「旧八女郡役所の保存活用」の2つの事例を中心に、この1年間でDIYリノベが地域にどのような変化をもたらしたのか。シンポジウムの様子と共にお伝えしたい。


福岡DIYリノベWEEK2016で配布されたパンフレット。全12スポットの取り組みや物件の概要が記載されている。イベント期間中、スポット周辺ではパンフレット片手に様々な建物を見て回る多くの参加者を見かけた



事例1.柳川商店街コラボレーションスペースがもたらした変化


町中に張り巡らされた掘割が特徴的な柳川市。古くは柳河藩の城下町て、商業の中心地として栄えた地であった。しかし、昭和35年の86,888人をピークに平成22年の国勢調査では71,375人と減少し続けており、住民の高齢化もあり、商店街はシャッター街となっていた。
この商店街の中にある元お茶屋だった空き店舗を、地域の人たちのコラボレーションスペースとしてDIYリノベーションしたのが「KATARO base 32」(以下、KATARO base)。2015年11月に取材した時点(【筑後DIYリノベ旅②】柳川商店街の空き店舗活用、大牟田のDIYリノベーション)では、土壁を剥がしたり材料を搬入するなど、建物の再生真っ只中だった。その後、2015年12月26日にオープンを迎え、現在のような姿に生まれ変わった。

このKATARO baseを立ち上げた柳川市地域おこし協力隊の阿部昭彦さんに、オープンからの1年を振り返り、まちの変化についてお話を伺った。
「実は、この柳川での活動を始めてから、まちに新しい人たちが入りはじめているんです。並びにあるカフェのオーナーは、都会に勤めていたのですが、地元である柳川でカフェでもやろうかとぼんやり考えていたときに、東京からきた私の商店街での活動をみて"地元の私たちが頑張らないと"と開店の後押しになったとおっしゃっていました」。
KATARO baseの存在は、地元の人々を中心に認知されはじめ、日替わりで飲食店をオープンできる「日替わりカフェ」を中心に2ヶ月先まで予定が埋まっているそうだ。

さらに阿部さんは第2弾プロジェクトとして、KATARO baseからほど近い蔵を再利用した洋菓子店「Le rond point」を2016年12月10日にオープンさせた。
「元々この蔵は取り壊しが決まっていたのですが、蔵の大家さんから『ここにあるものを自由に使っても良いよ』というお話しをいただいたんです。最初は自分の住居として借りたのですが、こんな素敵な建物を一人で楽しむのはもったいなく、もっと多くの人に利用してもらって、良さを分かち合いたいと思ったんです。」
この洋菓子店のオーナーは、元々柳川市の隣まちであるみやま市で洋菓子店を営んでいたが、この取り組みを通じて柳川への移転を決めたという。
「ここにケーキ店をつくることで、子ども連れの方々を中心に、昔ながらのまちのコミュニティを復活させたいと考えています。まちのコミュニティを復活できれば、まちにとっても大切な存在になり、みんなに愛される場所になるんじゃないかと思っています」と阿部さんは語る。
人と人とのつながりが、また新しい人を呼び込んでくる…。空き店舗だった元お茶屋は、DIYリノベーションによって柳川商店街に新しい人を呼び込む存在になっているようだ。


(写真左上)現在のKATARO base 32の外観。入り口部分はガラス貼りで中の様子がわかるため、商店街を歩いていても立ち寄りやすい<BR />(写真左下)びっしりと書き込まれた1ヶ月のスケジュール。2ヶ月先まで埋まっているそうだ</BR>(写真右下)江戸時代の建物と思われる蔵を改装し、洋菓子店「Le rond point」として生まれ変わった



事例2.行政と市民、まち全体で取り組む旧八女郡役所の再生


八女福島の伝建地区に残された江戸期から昭和初期に建てられた木造町家の数々。この伝統的な建築の保存活動をしているのが「NPO法人 八空き家再生スイッチ」(以下、八空き家再生スイッチ)だ。同地区内では、10年間ほどで同地区にある200棟近い町家のうち、約50棟の再生が行われてきた。
八空き家再生スイッチが取り組むプロジェクトの中で、最も大きな課題の一つが明治20代に建てられた「旧八郡役所」の再生である。500平米近い木造大型建築物は、20年ほど空き家となり、屋根が崩し壁も剥がれちるなど、倒壊寸前とまで言われていた。2015年11月の取材(【筑後DIYリノベ旅①】八女福島の町家建築の保存活用に向けて)では、八女空き家再生スイッチが取り組む、市民向けのワークショップなどを通じた改修の様子をお伝えしたが、現在も内部の改修が進められている。

こうした継続的な活動の中で、八市が旧八女郡役所の土地の寄付を受け入れ、空き家再生スイッチが所有する建物を、政・NPOが協働・共同して保存活用していくことが決まったのだ(八女空き家再生スイッチが継続して管理・運営することに変わりはない)。
八空き家再生スイッチのメンバーの一人である中島宏典さんは、「リノベーションというと古い建物をきれいにすることが基本かと思われがちですが、土壁や土間など、私たちはこの地区に代々伝わる伝統工法や風情を大にしたいと思っています。20~30という長い時間をかけてでも、建物にきちんと向き合って、八の人たちと一緒に建物の歴史を引き継いでいくことが大だと思っています」と語る。また、2017年春のオープンを目指して物販やカフェとして活用するための準備が進められているという。


土壁塗り体験やDIYイベントでのワークショップなどの改修が行われている旧八郡役所。<BR />外観からはわかりにくいが、建物の活用に向けて着実に進んでいる



全チームが参加するシンポジウム。木工で地域活性化を目指す新しいチームも


福岡DIYリノベWEEKの総仕上げともいえるシンポジウム。2016年の会場となったのは、昭和30年代に石炭産業で栄えた大牟田を想像させるキャバレーの跡地。現在は、「大牟田ふじ」としてバー兼レンタルスペースとして活用されている。
シンポジウムでは、全12スポットのこの1年間の活動発表の中から今回は、DIYリノベWEEK2016から新しく加わったプロジェクトを紹介したい。国内有数の家具の生産量を誇る木工の町、福岡県大川市で結成された「88's garage(ハチハチガレージ)」である。かつては町中にある木工所から漂う木の香りと、加工する音が響き渡っていた地域だったが、現在では木工所の数も減少し、空き家・空き工場が増えていることが町の課題として取り上げられている。
そんな中、大川市役所と商店街と組合と出資して、商店街にあった築88年の木造2階建て住宅をリノベーションし「大川Abase」というコミュニティスペースを立ち上げ、この施設を拠点としている。現在は、地元の婦人会による惣菜を販売するスペース、現役を退いた職人が作った制木工製品の販売といった小商いのスペースとしても活用されている。
代表の池上潤さんは、このプロジェクトの意味についてこう語る。
「元々船大工で栄えた大川市は、まちの至るところに木工所が溢れる地域です。そのため、DIYの精神がまちに根付いていると思っています。DIYリノベを通じたまちづくりはまだ始まったばかりです。全員が一度大川を出て、大川に戻ってきたメンバーで結成された職人である私たちが、この地域を変えていきます」。


大川市出身の職人88この他にも手描き看板のペインター、インテリアコーディネーターなど、多彩な才能が集まるプロジェクトだ' >



楽しいだけじゃない…人が人を呼ぶDIYリノベ


回を追うごとに参加者が増え続けている福岡DIYリノベWEEK。期間中、不動産やまちづくりに関わる事業者をはじめ、一般市民など全国各地から多くの人が、DIYリノベによって新たな付加価値を見出した物件を見るため福岡を訪れた。

シンポジウムの最後には、会場となった大牟田市の副市長 坂田昌平氏からイベントに対する総評が語られた。
「このシンポジウムの参加いただいている半分の方が、市外からいらっしゃったということで、本当にありがたいことだと思っています。DIYについて、これまでは、苦役やお金がかかることを楽しみながらやるというだけの話だと思っていました。しかし、聞いているとそれだけではなく、"人をつなぐ事"だったり、自分たちの生き方のかっこ良さ、おもしろさといった価値観を共有できる人たちによる"人間の輪"ができていくものなのだということがわかりました」。

今後、鹿児島と熊本でのイベント展開も予定されており、福岡市を中心に始まったDIYリノベの輪は、着実に他都市にも広がっている。こうしたイベントを通じ、市民の一人ひとりが次の世代を見据えてまちを再生していこうという意識が、地方都市を取り巻く様々な課題解決に向けた一端になるのかもしれない。


シンポジウム会場となった元キャバレー跡地。<BR />炭鉱で栄えた大牟田を象徴する建物は、現在バー、レンタルスペースとして活用されている



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