新築1棟の民泊マンションが大田区蒲田にオープン。京王電鉄が民泊事業に参入した理由は?

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大田区、蒲田という民泊に有利な立地


民泊という言葉が日本で使われるようになって10年弱。民泊のそもそもの発想は主のいる住宅の空き室あるいは空いている時間を他人に使ってもらう、暮らすように泊まるというものだったはずだが、今の日本では住宅を宿泊施設に転用するという活用が主流となっている。しかも、法律や規制が二転三転してきたため、決定を待ちかねてか、違法と知りつつも行われている民泊も少なくない。その結果、このところの民泊のイメージはあまり芳しくない。

そのイメージを適法な民泊物件を作ることで変えていこうと、京王電鉄が鉄道事業者としては初の民泊事業に乗り出した。場所は大田区蒲田。大田区は他市区に先駆けて国家戦略特区として民泊を独自のルール下で合法化しており、民泊普及に積極的。2017年3月10日に閣議決定された住宅宿泊事業法案は、宿泊施設として提供できる日数を年間で上限180日と定めているが、大田区の場合には制限無し。ただし、6泊7日以上の宿泊でなくてはいけないが、年間提供日数の制限が無い分、ビジネスになる地域というわけだ。

また、蒲田はビジネスホテルが多いことからも分かるように、羽田空港、品川駅など国内の交通拠点に近い交通利便性の高い場所である。外国人観光客はもちろん、それ以外の人にも利用しやすい立地というわけだ。


民泊マンション「KARIO KAMATA(カリオ カマタ)」外観。周辺は通りから少し入った住宅地



宿泊対象者を各種想定、4タイプの部屋を用意


「KARIO KAMATA(カリオ カマタ)」と名付けられた民泊マンションが立地するのは京急蒲田駅から歩いて4分。JR蒲田駅からも7分ほどの、通りから少し入った住宅地。建物は6階建ての新築マンションで、賃貸マンションとして建てられたものを竣工とほぼ同時に購入したという。その後、消防工事を実施し、民泊事業にあたり、必要な消防要件を満たした上で、家具・家電などを設置し、運営、管理は京王不動産が行うことに。宿泊予約は京王電鉄が出資する、合法民泊サービスを展開する百戦錬磨の子会社が運営する公認民泊サイト「STAY JAPAN(ステイジャパン)」を通じて行う。

客室は全14室で広さ、間取りで異なる層を対象として想定、4タイプの部屋が作られている。これはこの物件の運営を通じて実際に民泊を利用する人のニーズをつかみたいという、ある種試験的な意味合いから。運営も含め、今後のためにノウハウを蓄積していきたいというわけだ。

実際にもっとも多い間取りは1K、約25m2で9室ある。うち、6室はカップルでの滞在を想定、シングルベッド2台に布団も1人分を用意。3人までは泊まれるようになっている。白やピンクのインテリアの、どちらかと言えば女性好みのインテリアである。

一方、同間取りのうちの3室はビジネスユースを想定、ビジネス出張や一人旅の人たちに使いやすいよう、ベッド1台にソファベット、布団を各1人分を用意。ちょっとした仕事ができるようデスクセットも用意されており、こちらも最大3人まで宿泊できる。インテリアはモノトーンでシックな雰囲気だ。


上はカップルを想定した部屋、下はビジネスユースを想定したもの。広さはほぼ同じだが、印象はだいぶ違う



友だち、家族と泊まって楽しいメゾネットも


日本で少なかったのは家族、友人同士など4人以上で泊まれる部屋だが、ここでは5室が4人以上で泊まれるように作られている。そのうち、楽しいのは最上階に作られた1LDK、約42m2のメゾネット3室。修学旅行のりで友人同士でわいわい、おしゃべりしながら泊まる部屋を想定しており、上階は寝るだけの空間、下階はリビングとして作られている。上下階はオープンな階段で繋がれているため、天井の高いワンルームといった雰囲気。どこにいても会話が楽しめ、さらに上階からは夜景も望める。この部屋で過ごす時間そのものが旅の思い出になりそうである。

もう1タイプは家族で泊まる部屋で、間取りは2DK、約48m2のメゾネット。1階と地下階を利用しており、地下階には2室の寝室がある。しかも各室がきちんと分けられているのが特徴。友人同士の部屋ではソファベッドに布団なのに対し、こちらはダブルベッドあるいはシングルベッドに布団が用意されており、おしゃべりよりも睡眠、プライバシー重視ということらしい。

各室にはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、掃除機、アイロン、ドライヤー、ケトルに調理器具、食器、タオル類などが用意されており、自分の身の回りの品を持ち込めばすぐに生活が始められる。

ひとつ、目についたのは各室に用意された小さな花瓶。花を飾ることで、我が家のように感じて欲しいという意図だろう。


最上階を利用したメゾネットは開放感のある部屋。右の階段を上がったところに寝室がある



最終的な目標は民泊をキーとした地域活性化


最後に鉄道会社が民泊を手掛けることの意味について。開業前の見学会で京王電鉄戦略推進本部事業創造部担当者はその意図を「最終的には民泊を通じた地域活性化」と説明した。民泊が同社の収益力の向上、事業機会や領域の拡大に繋がるものであることは確かだが、だからといって民泊だけで収益を上げようというのではない。民泊を機として街に来てもらい、商店街で買い物をする、食事をする、銭湯を利用するなどの行動を通じて街の活性化を図りたいというのである。

今回は、特区民泊が実施できるエリアが東京都内では大田区に限定されるため、京王線沿線とは離れた蒲田に開業したが、今後は法整備の状況を踏まえながら、京王線沿線でも取り組んでいくことを考えているという。だが、蒲田は都心近くで、すでにビジネスホテルなども多い街。京王沿線は静かで、これまで観光とは縁のなかった住宅街が少なくない、ここでのノウハウが転用できるものかどうか。

同社は蒲田では近隣にもきちんと説明、理解を得てからの開業となったことから、今後、沿線で開発を考える際にも地元、行政と連携、地域に賑わいをもたらすものを長期的な視点で考えていきたいという。

今回は新築物件を購入という形でのスタートとなったが、以降は空き家利用なども視野に入れるとも。少子高齢化に伴い、空き家が増加する一方で、訪日外国人の増加により、今後宿泊施設不足が深刻な課題になると捉えているというわけで、民泊事業を新たなマーケットとして期待しているようだ。

京王に限らず、どの沿線でも地域の活性化は沿線価値維持のため、永続的な課題。民泊がその役に立つかどうか。今回の開業はそのための実験のひとつとも言えるわけだ。


ファミリータイプの室内は上階にダイニングキッチン、下階に寝室で、寝室2室はそれぞれ独立した空間になっている



民泊という言葉の再定義も必要?


ところで、違和感を覚えるのは今回の物件が住宅として建てられてはいるものの、新築で人が住宅として使うことなく、宿泊施設になっているという点。冒頭で書いた通り、そもそもの民泊の意味は個人の住宅の空きスペース、空いている時間をゲストとシェアするというものだったはず。

ところが、現状、日本の、特に都会で行われている民泊、しかもそのほとんどが無許可営業の違法施設は宿泊施設不足を住宅転用で補うものであり、不動産投資に近い要素が含まれているともいえる。民泊という言葉は変わってはいないものの、実情は変化してきているのである。その流れからすれば人が住んだことのない建物の、居住者のいない民泊が実態として間違っているわけではない。

その一方で地方には特別な法制度のもと、本来の意味での民泊として海外から多くの人を集め、地域を賑わせている例もある。つまり、同じ言葉の下に異なる内容の民泊が併存しているのである。

この分かりにくさを整理、「民泊」のさらなる発展を考えるなら、そろそろ、民泊という言葉自体を変える、あるいは再定義したほうが良いのかもしれない。とともに、国によるきちんとした法整備が待たれるところである。


各室の壁には小さな一輪挿しが。生活するように旅を楽しんでもらう施設という意図が伝わる



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