東久留米、リノベ賃貸物件の敷地一部が私設公園へ。建物のみならず地域の価値向上を目指す「第2の公共」とは?

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空室が増えはじめた賃貸物件の敷地一部が私設公園に


賃貸物件で入居者同士、地域住民のコミュニティ形成を目指す工夫を取り入れた事例が多く見られる中、2017年4月、東京・東久留米に、アパートの内外装の改修に加え、隣接する土地の一部を地域住民と共に作り上げる私設公園"コモンガーデン"に変える再生事例が登場した。株式会社ブルースタジオ(以下、ブルースタジオ)がリノベーションを手掛けた「Le cheval(ル・シュバル)」だ。
リノベーション以前の主な課題は、2017年4月の取材時点で全12戸のうち空室が5戸という現状と、周辺に競合となるファミリータイプの分譲マンションが増加し、長期的なアパートの運用に苦戦を強いられるということだった。

このコモンガーデンの特徴は、ル・シュバルのオーナーが所有する土地を地域に開き、その使い方も含めて地域住民と共につくり上げていこうとする点にある。
行政の管理下ではなく、あくまでオーナーを中心とした取り組みにはどのような狙いがあるのだろうか。2017年4月5日、ブルースタジオ主催の現地内覧会に参加し、お話を伺ってきた。


Le cheval(ル・シュバル)の外観。Le chevalとは「馬」を意味するフランス語。<BR />エントランスには輸入したフランス製の瓦が使われるなど、物件の個性が随所に表れている



古くからの地主ならではの"パブリックマインド"による地域価値の向上


現在、子どものいる核家族世帯から高齢者世帯まで幅広い世代が居住しているル・シュバル。今回のリノベーションにあたり、同社はターゲットをこれから子育てを始める二人暮らし世帯に絞ったという。
「既にお子さんがいるご家庭の場合、保育所が決まっている事もあり、東京近郊で引越しするというのはあまり現実的ではありません。そこで二人暮らし世帯に向けて、"ここだったら子育てしていける"と思える環境を作ろうと思いました。コンセプトは『家族の団らん、地域と団らん』です」と語るのは、株式会社ブルースタジオ専務取締役の大島芳彦氏だ。

これらの団らんを生み出すには、"公共に対する想い"がより重要だと大島氏。
ル・シュバルのオーナーは、明治期以前から東久留米周辺に多くの土地を所有する旧家で、古くから宅地開発やまちづくりに尽力してきた名士だそうだ。大島氏は、不動産投資を目的に新たに土地を取得する場合とは異なる、古くから土地を所有されている地主であればこその"パブリックマインド"によって、エリアの価値向上を目指しているのだという。
「昨今、ミニ開発や借上げモデルの賃貸アパートが建ち並ぶことでまち並みが均一化されています。地域性がまちの価値に影響することを認識しはじめた人が増える中、"選ばれるまち"を考えることが求められています。こうした地域のビジョンを描けるのは、古くから土地を所有し、長くその地域を見守り続けてきた地主様だと考えています。」


改修前の写真を用いながら今回のリノベーションについて説明する株式会社ブルースタジオ 専務取締役 大島芳彦氏



団らんを生み出すコモンガーデンとまちライブラリー


この団らんを生み出す要素の一つが、地域住民と共に行ったワークショップで作り上げた私設公園「コモンガーデン」だ。
昨今、市民にとって憩いの場であるはずの公園も、公園内で遊ぶ子どもたちの声に対する苦情などを理由に、"大声を出さない"、"ボール遊び禁止"など、利用範囲を自主規制する自治体もあるのが現状だ。
「自治体が管理する公園のように多くの制約がある空間ではなく、"オーナーの意思"によって地域の皆さんに使いこなしてもらえる公園を持つアパートにしよう、というのが今回のポイントです。この場所に集う人々が同じ経験をし、季節を共にすることで、日々の生活がこの場所ならではの宝物になる」と大島氏は語る。

コモンガーデンには、地域住民と共に野菜を育てることができる菜園やチョークを使って子どもが自由に絵を描くことができるスペースなど、地域住民との交流を生み出す工夫がされており、2017年7月9日には、地域住民が出店するマルシェイベントも予定されている。

また敷地内には、同社が2017年2月にリノベーションを手掛けた湘南・大磯の賃貸物件「稜文舘(りょうぶんかん)」にも設置した「まちライブラリ」を取り入れた。地域の人々に読まなくなった本を、寄付してもらうことで各々の想いのこもった本が集まる仕組みだ。
「まちライブラリで集まる本にはその地域性が反映されます。子どもたちが公園で遊んでいる最中のお母さんのより処として活用して欲しい」とのことだ。


(写真上)入居者と地域住民によるコモンガーデンのワークショップの様子。当日は、小さな子どもから高齢者まで幅広い世代が参加したという<BR />(写真下)まちライブラリが設置されている小屋。オーナーと地域住民がDIYで作り上げたもので、製作期間は約1週間だったという



各階の住居ごとに仕掛けられた団らんを生み出す工夫


住居内のリノベーションについては、全12戸中空室の5世帯だけを実施しており、今後空室が出る度に順次進め、最終的には全戸改修を予定しているという。
各住戸とも50.89m2~54.67m2の1LDKと同じ間取りであるものの、家族の団らんを生み出す工夫として各階ならではの魅力を作ったという。
2階の住戸の特徴は、バルコニーを広く確保するために、壁面を内側に後退させている点だ。
「賃貸住宅でいうと"専有面積を少なくする"という通常では考えにくい発想です。しかし奥行きが1mに満たず、洗濯物しか干せなかったバルコニーを広く確保することで、テーブルセットを出して朝食を食べたり、夏は子どもが水遊びをしたり、バルコニーが団らんの場に変わります。」
1階部分は各部屋とも入居中のため、まだ改修されていないが、今後はバルコニーの塀を撤去し、庭と一続きにすることで専用庭付きの部屋になるという。公園とつながることで住人同士、地域住民との団らんを図る工夫といえる。

どれだけ建物の機能やデザインが向上したとしても、周りのまちが衰退してしまえば、将来的に不動産の価値の維持は難しくなるのは明白である。
賃貸経営を考える場合、いかに地域の魅力寄与し、選ばれるまちのひとつとして機能できるかという視点。そこにはオーナーの地域に対する想いが重要な要素のひとつになることを学んだ事例であった。


あえて居室の一部を減築して生み出されたインナーバルコニー。約6m2の広さがある



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