京都駅裏エリアの学生寮をホテルにリノベーション。アート&カルチャーでまちにも貢献する「ホテル アンテルーム 京都」

LIFULL HOME'S PRESS

京都駅裏エリアの学生寮をホテルにリノベーション。アート&カルチャーでまちにも貢献する「ホテル アンテルーム 京都」の記事画像

いかにして人の流れを生み出すか?見つけた答えが「アート」だった


旅行や仕事で宿泊するホテルや旅館。その選び方によって、旅がより有意義なものになったり、逆につまらなくなったりもする。それでは宿泊施設を選ぶ際の基準はなんだろう。観光地など目的地の近く、宿泊料金、鉄道やバスなど交通アクセスの良さ、部屋の美しさ・清潔さ、レストランの充実、大浴場や駐車場の有無などだろうか。その中でも立地と宿泊料金は利用者の誰もが気にすることで、宿泊施設側も徹底したリサーチを行いオープンさせるはずだ。

各社独自のセールスポイントを模索し他の宿泊施設と差別化を図る中、「アート」に注力することで話題のホテルを取材しに京都まで行ってきた。それが、京都駅八条口から歩いて12分と徒歩圏内でありながら(地下鉄烏丸線九条駅から徒歩8分)、観光客で賑わう京都の街の喧騒とは無縁の「ホテル アンテルーム 京都」だ。2011年4月にオープン、ホテルに加え、アパートメント、ギャラリーからなる複合施設である。

ホテル アンテルーム 京都は、築23年の学生寮をコンバージョンして生まれた。コーポラティブハウス事業での豊富な経験をもとに老朽化したホテルをリノベーションした東京・目黒の「CLASKA」などの実績が信頼され、ホテルを運営するUDS株式会社に「再生」の相談があったという。

「このホテルがある京都駅の南側で特に有名な観光地といえば東寺と伏見稲荷ぐらい。人の流れが少ないエリアのためホテルにコンバージョンする際、集客に不安を感じていました。そこで、どうしたらこの場所に人の流れを生み出せるかを模索している時に思い付いたのが『アート』。京都は美大が多く、若手のアーティストが数多く活躍しています。このホテルを京都のホットなアートの発信地にして、来てくださった方に刺激を与えられる場にしたいと考えました」と、 UDS株式会社 ホテル アンテルーム 京都の支配人、高橋文香さん。

同ホテルが掲げるコンセプトが、「アート&カルチャー」。京都や関西エリアを中心に活動するアーティストやクリエイターをパートナーに迎え、アートを切り口に様々な発信を行っている。


上/ホテル アンテルーム 京都外観。彫刻家・名和晃平氏のオブジェが目を引く 下/宿泊客以外の利用も可能な朝食レストラン。料金は1,000円。日替わりサンドイッチなど3種類から選べる主食に加え、サラダ、スープ、ドリンクはフリー。「もっと気軽にご利用いただけるように、定期的なイベントを継続するなどして認知度を高めていきたいと考えています」(高橋さん)



企画展、ライブなどのイベントを随時開催し、「アート&カルチャー」を発信


エントランス外に展示されている彫刻家・名和晃平氏の作品、そしてエントランスからつながる「ギャラリー9.5」に展示される作品の数々。まるで美術館に来たような雰囲気が漂う。

「当社は京都のクリエイターに縁があった訳ではないので、アートの選定はまったくのゼロからのスタート。『一緒に面白い空間をつくりましょう』『一緒に展示をやってみませんか』」などと、SNSでの発信や人脈を頼りにお声がけしました。人脈を広げるのと同時に『面白いことをやっているな』と共感してくださったクリエイターの皆さんの横の繋がりにも助けられました」

九条と十条の間にあることから名付けられた「ギャラリー9.5」では京都を拠点に活動するクリエイターを紹介する企画展などを開催。定期的に開催するライブのほか、アートやデザイン関連のトークイベントやワークショップも随時行っている。

「当社の事業ビジョンが『世界がワクワクするまちづくり』。色々なものを組み合わせて、その場所に何があったら街が元気になるか、人が集まってくるかを各ホテルで考えています。このホテルでも積極的にイベントを行っていますが、アートの位置付けは収益のためというよりあくまでホテルの付加価値と捉えています」

ギャラリーの展示は随時変更するためリピーターにも好評という。ホテルを訪れて感じたのは、空気のゆったり感。ギャラリー、ショップ、夜間の営業時間外は仕事や談笑などに自由に使えるバーラウンジが一体となった贅沢で広々とした空間が心地いい。また高橋さんも当初「ラフすぎるのでは」と思ったそうだが、カチッとした制服ではなくTシャツ姿で働くスタッフも、どこか緊張感を和らげる役割を果たしているようだ。


左上/エントランスを入って目の前に広がる「ギャラリー9.5」 右上/ギャラリーと連動したグッズを販売するショップ</br>右下/美しい庭もアートそのもの 左下/宿泊客とアパートメントで暮らす人の交流も盛んなバーラウンジ。</br>バーは夜8時から深夜1時まで営業



「こんな部屋にしてみたい!」。アイデアの源泉にもなる「コンセプトルーム」がインテリアの参考に


2016年7月、ホテル開業後も最後まで学生寮として使われていたスペースを客室へと一新。リニューアルで生まれたのが現代美術家の名和晃平氏、蜷川実花氏、ヤノベケンジ氏、金氏撤平氏、宮永愛子氏、宇加治志帆氏ら8組のアーティストが手掛ける「コンセプトルーム」。

「宇加治さんはペインティングで華やかな色調の作品をつくる方。女性的な柔らかな部屋になっています。家具も宇加治さんに選んでいただきました。蜷川さんの部屋は壁面全体に桜の写真作品を貼ったビビッドな空間になっています。レースと遮光カーテンに同じ柄を使うことで立体的に見えるようにしているのも蜷川さんのこだわりです」

時間に限りはあるものの、それぞれのクリエイターが持つ独自の世界観を大切につくり上げたコンセプトルームに加え、庭付きの客室や清水焼の照明など、現代的なアートに「和」の要素を加えた客室もリニューアルオープン時に提案。殺風景で味気ない客室ではなく個性豊かに彩られた空間は、「今度はこんなインテリアにしてみよう」と考える楽しみも引き出してくれる。住まいリテラシーの向上にも寄与するはずだ。

「限られた時間ではありますが、普段触れないようなものに触れて楽しんでいただく時間をご提供できたらと考えています。『今までアートに興味がなかったけど、今度あの展覧会に行ってみようかな』などと思っていただけたら嬉しいですね」


左上/写真家・蜷川実花氏によるコンセプトルーム。客室全体をギャラリー空間に見立て、壁面全体に桜の写真作品を施した 右上/アーティスト・宇加治志帆氏のコンセプトルーム。ウォールペインターでもある宇加治氏が客室の壁に直接ペインティングを施したアートが特徴。家具は宇加治氏によるコーディネイトで、年代物のアンティークを採用 右下・左下/友人であるアーティストの家に泊まるような、お洒落でリラックスできる空間を用意。アート作品などは随時入れ替わる。購入も可能



「ホテルは街を変える大きな力を持っていると思います」


ホテル アンテルーム 京都の稼働率は90%超と高い数字を持続。取材当日も満室だった。
「京都という街のアドバンテージもあると思いますが、近年南区にホテルの進出が多くなったのは、このホテルの成功があったからだと自負しています」と高橋さん。

京都の数ある観光地に行くには京都駅の北側にあるホテルの方が時間的に有利。街並みにもより京都らしさが感じられるだろう。しかし、駅に対して少々寂しい南側にある立地の特性を活かし、ホテル アンテルーム 京都はリーズナブルな料金設定や静かな環境を提供。さらに「アート」に活路を見い出し多くのクリエイターとコラボすることで、京都の「アート&カルチャー」の発信場所としての地位を着々と築いている。ホテルの安定経営に向けた取り組みは当然のことだが、それと同等かもしくはそれ以上に街と人に真摯に向き合うことで、ホテルの人気、高い稼働率を実現しているように思う。

「ホテルは泊まる人もそうでない人も集まる、大きな力を持っている場所だと思うのです。その場所にあることで人の往来ができて街の雰囲気が変わることさえあります。偉そうな言い方になってしまいますが、『ここにホテルができたから街が元気になったよね。お洒落になったよね』と思っていただけるようなホテルにしていきたいですね」

ホテル名の「アンテルーム=anteroom」とは、「次の間」や「待合室」を意味する言葉。
「旅行者の方や遊びに来られた方が京都のアートなどに触れ、何かを感じ、また京都の街に出ていく。そんな拠点でありたいと思います」

■ホテル アンテルーム 京都/
https://hotel-anteroom.com/


ホテル アンテルーム 京都 支配人の高橋文香さん。「アートシーンが南区に浸透しつつありますが、その拠点として発信を続けていきたいと思います。南区はまだまだ面白くなります。ぜひ京都の注目エリアとして注目していただきたいですね」



[関連記事]
下宿だった町屋を利用したゲストハウス、「京都月と」。京文化に触れることで日本らしさを発信する取り組みを聞いてきた
函館に進出したシェア型複合ホテル「HakoBA」~インバウンド好調の地で地域との交流の場を目指す
本好きのパラダイス!泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」に行ってきた
葛飾・柴又、「寅さんの町」に外国人向けの宿が誕生。インバウンド需要の牽引役となるか
原宿KAWAiiカルチャーを住まいに!増田セバスチャンが手がける、アートな賃貸物件

出発:

到着:

日付:

時間:

test