すべての部屋がDIYできる大阪の大型団地。全国初、UR「千島団地」の試みとは?

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DIY賃貸の普及に向けた動きが始まっている


「DIY型賃貸」あるいは「セルフリノベーション」などと呼ばれる賃貸住宅が増えてきた。入居者が一定の範囲内で自由に内装工事を実施し、従来の賃貸住宅で問題になりがちだった「原状回復義務」も免除するスタイルの契約だ。

また、部屋全体のDIYではなくても、入居者が壁紙を自由に選んでオーナー側に施工してもらうタイプや、自分たちで壁紙を張り替えたり簡単な棚を取り付けたりすることが可能なタイプの賃貸住宅もある。

賃貸住宅といえば「釘ひとつ自由に打てない」というのが従来の一般的な考え方だっただろう。だが、そのような認識も次第に変わりつつあるようだ。国土交通省では、2013年度および2014年度にまとめた個人住宅の賃貸流通の促進に関する報告書などで「借主負担のDIY」について具体的な検討をしているほか、2016年4月には「DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブック」を作成・公表した。

その一方で、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が「DIY住宅」の募集を試行的に始めたのは2011年9月だ。模様替えの工作基準や退去時の原状回復義務を緩和し、「入居者自身の手で部屋の模様替えを気軽に行っていただき、愛着をもってUR賃貸住宅にお住まいいただけること」を目的としている。だが、当初の対象は東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、愛知県、大阪府、福岡県の7都府県で1団地ずつ、募集住戸もそれぞれ5戸程度に過ぎなかった。

その後、「DIY住宅」の対象住戸は拡大したものの、依然としてDIYが認められるのはそれぞれの団地の中で一部の住戸に限られていた。そのような状況のもとで2016年11月、すべての住戸においてDIYを認める大型団地が現れた。UR都市機構の「千島団地」(大阪市大正区)だ。

募集住戸を全戸DIY住宅化するのは、UR都市機構の団地として全国初の画期的な試みとなったようだが、その背景にはどのような問題意識があったのだろうか、また、入居者に対してどのようなサポートをしているのだろうか。UR都市機構 大阪エリア経営部企画課長 西山直人氏にお話を伺った。


全戸DIY住宅化したUR「千島団地」(大阪市大正区)



DIYをキーワードにして、地域活性化、団地活性化につなげたい


まず、千島団地を「オールDIY団地」とした経緯について聞いてみた。

「千島団地は5棟からなる総戸数2,236戸の大型団地で、大阪市内では最大規模です。すべて賃貸物件ですが、1972年(昭和47年)の管理開始で、間取りは和室の2DKが中心で画一的です。そのため古いイメージは拭えず、若い世帯の住宅ニーズにミスマッチが生じてきました」

「この団地は大正区役所に隣接するなど、区の中心エリアともいえる立地ですが、その大正区自体が人口減少に直面しています。同じ湾岸エリアでも東京とは違い、下町イメージが強いといえるでしょう。そこで『地域活性化』が大きな課題となっていたわけですが、若い世代にも注目してもらい、大正区に住んでもらいたいのは、行政もURも共通する認識です。そのようなときに大正区から相談があり、ものづくりの街・大正にふさわしく『DIY』をキーワードとして千島団地を拠点に展開を図ることで話がまとまりました」


お話を伺ったUR都市機構・西山課長



団地内に設けた「DIY基地」が入居者をサポート


「自分好みにDIYしてください」と言われても、何をどうすれば良いのか分からない、DIYに自信がない、手順や参考事例を示して欲しいといった入居者も多いのではないだろうか。

「これまでDIYの経験が何もない人にとっては、難しそうに感じられる部分もあるでしょう。そこで当初から参画していただいたのが、DIY関連商材のネット販売大手である『壁紙屋本舗』さんです。団地内店舗の移転にともなって空スペースとなっていた団地1階部分に『壁紙屋本舗LAB』をオープンし、DIYを始める方への相談サロン、コミュニティ拠点として運用しています」

「ショールームを兼ねたLABは、DIYに関する材料の紹介だけでなく、常駐するスタッフからさまざまなアドバイスを受けたり、相談をしたり、指導を受けながらDIY工房を使ったりできます。本格的な電動工具も自由に借りられるようになっているほか、週に何度かワークショップなども開催していますから、新たな情報を得たり勉強したりすることにも役立つでしょう」


団地内のコミュニティ拠点として位置づけられている「壁紙屋本舗LAB」。一角にはさまざまな工作ができる工房もある



間取り変更も含め大胆に自由な発想でDIYできる賃貸住宅


DIY住宅に入居するとき、あるいは実際にDIY工事をするときにはどのような段取り、手続きが必要になるのだろうか。

「これから千島団地に入居される方は、基本的にはすべてDIY可能の住宅となります。DIY住宅に関しては3ヶ月相当分の家賃が免除されることから、この期間を有効に使って入居前にDIYしてもらえればと思います。DIY住宅は一部未補修箇所がありますが、設備など基本的な住宅性能は事前にチェックし補修したうえで入居いただきますので、もちろんそのままの状態でもお住まいいただけます。ですから、最初の3ヶ月に縛られることなく、一旦は入居して、先々変えたいところをDIYしていただくことも可能です」

「実際に工事をする前にはどこをどうしたいかなどの相談を受け、申請書を提出してもらいます。それに対してURから承諾書を出しますが、これは工事によって住宅性能を損なうことがないかどうかをチェックするためのものです。壁紙の色や柄などに関して制約はありませんし、躯体に影響を及ぼさない間取り変更なども可能ですので、DIYを自由に楽しんでいただければと考えています」

「DIY住宅に変わる以前から入居いただいている方にも、模様替え制度を活用いただければ、一定の範囲で改修は可能です。とくに高齢の入居者からは手すりをつけたいといった要望なども多く、以前から対応しています」

2016年11月に「全戸DIY住宅化」がスタートしてからまだ半年あまりだが、DIYをきっかけにした入居もだいぶ多くなっているという。20代あるいは30代の子育て世帯が多いものの、さまざまな世代の多様化したニーズに応えられるようにしていきたいとのことだ。


DIYモデルルーム(インスタグラマーrannranさんの施工)



団地を活性化することで、まちを元気に


大正区、UR都市機構、壁紙屋本舗(株式会社フィル)の3者によって始まった官民連携プロジェクトは「TAISHO☆UP」と名付けられている。DIYによって団地への入居を促すだけでなく、地域活性化を念頭にさまざまな試みもしているようだ。

「団地の中には楽器の練習やカラオケもできる防音室、ダンスやヨガなどができるスタジオなどを設けているほか、他の共用空間を有効活用して住民同士が遊んだり楽しんだりできるよう、さまざまなアイデアを練っています。また、DIY拠点のLABを核にして、あるいはDIYをきっかけとして団地内のコミュニティを活性化させるだけでなく、まちを元気にするため外部も巻き込んだ地域交流のイベントなども始まっています」

「賃貸住宅は原状回復しなければならない」という従来の縛りから解放されれば、その可能性は大きく広がるだろう。「全戸DIY住宅化」は千島団地が初めてということだったが、今後は他の団地にも適用するのだろうか。

「3~5年程度を実験期間と考え、この千島団地でさまざまな試みをしていく予定です。これがうまくいけば、DIY可能住戸が一部に限られる他の団地でも『全戸DIY住宅化』を検討していきたいと考えています」

UR賃貸でDIYが一般化すれば、他の民間賃貸住宅でもDIYを認めるケースがさらに増えていくはずであり、「売買か賃貸か」という住宅の選択にも大きな影響を与えることになるだろう。今後のUR都市機構の展開をしっかりと見守っていきたい。

■ 取材協力
千島団地:
https://www.ur-net.go.jp/chintai/kansai/osaka/taishoup/main/index.html
壁紙屋本舗LAB:
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kabegamiyahonpo/img/special/honpolab/


DIYモデルルーム(株式会社夏水組コーディネート) ※上記の部屋も含め、材料費はそれぞれ10万円台とのこと



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