日本で唯一“湖の上”の町、琵琶湖の「沖島町」ではお年寄りが超元気!?

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世界でも珍しい淡水湖上での有人島


海なし県である滋賀県に、離島があるのをご存じだろうか? その名は「沖島」。日本で唯一湖に人が暮らす島だ。近江八幡市の対岸から約1.5Kmの琵琶湖の沖合に浮かぶ小さな島で、淡水湖上の島で人が暮らすのは世界でも珍しいとされている。離島と呼ぶにはいささか対岸から近い気もするが、橋などはかかっておらず住民の移動は船舶のみ。名実共に離島である。島の住所は近江八幡市沖島町だが、平成25年に離島振興法で離島と認定された。

全体を徒歩で一周しても1時間程度という小さな島で、生業は半漁半農。明治から戦後までは石材採掘業も盛んで、人口も800人を超えていたというが、現在は280人ほどの人々が暮らす(平成28年6月現在)。

しかも、高齢化は進んでいて、65歳以上の島民が50%は軽く超えるという。それでも70歳を超えて漁師や農業をしている方も珍しくなく、介護率や寝たきりの高齢者は市内よりも少ないそうだ。それは、島全体が一つの家族という認識で「支え合い、ふれあい」という昔であれば日本のどこにでも見られたコミュニティが現存しているからといわれている。

今回は、日本のノスタルジックな原風景を残す「沖島」の暮らしと超高齢化の課題を抱える島のこれからの取り組みを伺ってきた。


近江八幡側の堀切港と沖島港をつなぐ渡船。わずか10分の航行で別世界へと連れていってくれる



島の祖先は、「源氏の落人」7人。だから苗字も同じ


沖島に渡るには、前述したが陸路はない。JR近江八幡駅からバスで約30分の「堀切港」から船で渡る。朝夕に便数が集中し、1日に12便ほど対岸と沖島をつなぐ。10分ちょっと、湖上の上で風を切りながら進むと沖島漁港に到着だ。

港といっても、漁港のため観光向けの大がかりな土産ものやなどはなく、島の漁師の奥さんたちで結成された「湖島婦貴の会(ことぶきのかい)」の皆さんが、島の名物「鮒ずし」や島の旬素材をつかったお弁当などを販売している。

まずは町の様子を探検しようと島のメインストリートともいえる護岸道路を歩いてみると、目の前には年季の入った民家が細い路地にずらりと並ぶ景観だ。思わず「ノスタルジー」という言葉が頭に浮かぶ、古き良き日本を思わせる素朴な情景。その細い路地を三輪車に乗ったおじいちゃんおばあちゃんが元気に道を進んでいく。そうこの島には、車がない。細い路地は車が通れるスペースはなく、日常の移動はもっぱら自転車。高齢者は転倒防止のために後ろに買い物かごをつけた三輪車が自家用カーだ。歩きながら目に入る家々の表札を眺めていると、なんだか同じ苗字の家が多い。

「この島には、かつて7人の落人が住み、その人たちが家族を増やしていったから同じ苗字の人ばかりなんだわ。まあ、島全体が一つの家族みたいなもん」と言うのは、この町で漁師を続ける西居正吉さん。なんと御年83才。小さな頃から歴史が好きで祖父に話を聞いたり独自に歴史を探求し、10年前には「沖島物語」という島の歴史を伝える書籍まで上梓している。今では、島の歴史を内外の人たちに伝える勉強会やガイドなども務めるいわば島の語り部だ。

「この島は、もともとは藤原不比等が海上交通の要として島に『奥津島神社』を建立し、祭祀を行った神の島でした。本格的に人が住みはじめたのは、保元・平治の乱(1156-1159)に敗れた源氏の落武者7人が山裾を切り開き、漁業を生業に住み着いたのが始まりと言われています。7人の中に、西居清観入道という人がおりますが、この人が私のご先祖さんですわね。島に同じ姓が多いのは、辿っていけばどの家もこの7人に行きつくからでしょう。今だって、『あそこんちのばあさんは、あそこの家から嫁に来て』というようにみんな親戚みたいなもの。もう島全体が一つの家族のようなんですわ」(西居さん)


細い路地にズラリと民家が並ぶ。この島では道幅が狭く誰も車を持っていない。代わりにあるのが船



83歳、夜通しアユ漁の現役漁師


昔の年号まで1つも間違えずに話される西居さんは、現在でも漁にでる。島の人々はそのほとんどが漁業に従事し、その操業範囲は琵琶湖一円にわたる。水揚げされるのは、島の名産「鮒ずし」の材料となる鮒、エビ、アユ、ゴリ、イサザ、ワカサギ、ハス、シジミなど。

取材に訪れた時は、鮎漁がひと段落した頃で西居さんにもこうしてお話しを聞けたが、漁のトップシーズン期にはとてもお話しを聞くことは叶わなかったろう。というのも鮎漁になるとなんと船を出すのは夜中の2時。夜中漁をし、朝方対岸の堀切港で馴染みの業者に魚を渡す。昼夜生活が逆転するため、昼間にお話しを聞くのは無理だったに違いない。

この島の暮らしは半漁半農で成り立っており、どの家でも自分の家で食べる分の野菜は家の前の畑でつくる。さきほどこの島には車がないと書いたが、代わりに一家に一艘を持っていて、漁や対岸への交通を担う。いまでこそ公共交通としておきしま通船が就航しているが、以前は本数も少なかったため、自家用船がないと生活ができなかったという。しかもかなり高齢な方たちも現役なのが驚きだ。この島では60歳はまだまだ若者。70歳を超えても稼業を行う人は少なくない。

もちろん、島にとって高齢化は見過ごすことのできない問題で、島の存続をかけてといっていいほど深刻だ。平成25年に離島振興法で離島に認定されて以来、懸命に取り組みが模索されている。沖島町離島振興推進協議会の事務局員の一人である小川文子さんは「この離島振興で補助もある10年の間に沖島の暮らしを未来につなげる道筋をつけられたら」と語る。

現在のところ、取り組みは始まったばかりだが、例えば今年になって島の診療所には週4日看護師の方が常駐されるようになった。

「島は、ほとんどが親戚と言ってよいので、高齢者の一人暮らしのお宅があったとしても自然とみんなで顔を出し合うので、都会の話に聞くようなひとりぼっちの生活ということはありません。ただし、それもお年寄り同士の声掛けになっているので、健康維持のためにも昨年から看護師の方に来ていただいて、健康相談や調査などを実施していただいています」(小川さん)


お話しをうかがって西居正吉さん。現役漁師の傍ら、沖島の歴史を伝えている。近江八幡市郷土史会で講師も努める



移住促進のための空き家整備や小学校では越境通学も


このほかにも、離島振興策として、空き家を借り上げ移住者用の住宅を整備する取り組みも進めているそうだ。

「まずは島の良さを知ってもらえたらと、淡水湖上に人が住む唯一の島ということや珍しい湖の魚も特産品としてあることを協議会としてもHPなどを作成しPRしていますが、観光客が来てくれればそれでよいとは考えていません。これだけ高齢化が進む島ですから、若い人たちに戻ってきてもらったり、移住者の方に来ていただかなければと思っています。島内に空き家は何軒もありますが、すぐに移住していただけるわけではありません。そこでまず一軒、移住者用住宅を整備するところから始めています」と小川さんは言う。今年はこれから県内大学の学生が、この島に移住してくるそうだ。

さらに、沖島小学校では、現在のところ島民による生徒は2人だけだが、市内の通学区域の緩和策をうけて島外から17名もの生徒を受け入れている。市内のマンモス校よりも少人数の教育を受けられることに魅力を感じて越境通学を決める家庭が増えているそうだ。もちろん沖島小学校でも「鮒ずしづくり体験」など島の文化継承もカリキュラムに入れるなど独自の教育方針を打ち出し努力をしている。

実は小川さんも島外から沖島にお嫁に来ている。「子育てには本当に恵まれている環境。島民みんなで育ててもらっている感覚です。よく都会では核家族で子育てに悩むといわれていますが、ここでは隣の家はもちろん島全体が家族なので、誰かが見ていてくれたり、仕事と子育ての両立に悩むなんてこともない」と語ってくれた。


町民のマイカー「三輪自転車」。寄合があれば家の前にこの自転車がズラリと並ぶ



「もんてこい」を実現するために


島へのフェリーや、島内を歩いているといたるところに「もんて」と書かれたポスターやチラシが目につく。「もんてきて沖島」「もんて見てマップ」といったように。「もんて」というのは島の言葉で「帰ってきて」の意。

高齢化が進むからといって、このまま島の暮らしや文化を無くすわけにはいかない「あきらめずに努力し続けなければ」と西居さんは語る。

「大自然に恵まれた環境と、古い歴史を持つ湖の島を守りたい。漁師の後継者づくりもしていかなければなりません。観光目的に沖島を訪れる人も増えて来ましたが、魚を捕る人がいなければ琵琶湖の魚も食べてもらうことができないんですから」(西居さん)

10分も船に乗れば、まったく都会とは違った漁村、農村の暮らしが広がる沖島。多くの人が「もんてきて」くれるように、沖島の挑戦は続いている。


西居さん(左)と沖島町離島振興推進協議会の小川文子さん



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