福井新聞記者が実践するまちづくり。空きビルを再生した「sankaku」を見てきた

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新聞社運営のコワーキングスペース?!


JR福井駅西口から徒歩数分。空き店舗が点在するアーケード商店街、ガレリア元町に福井新聞社の新聞記者たちが運営するコワーキングスペース「sankaku」がある。

そこは、記者たちがまちづくりに直接関わるとともに、まちやまちづくりをはじめとする記事を執筆するオフィスでもあるという。通常、新聞記者といえば、世の中で起こる事象からあえて適切な距離を置き、第三者的な視点から記事を書くというイメージが強い。ところが、彼らはあえて現場に飛び込み、まちづくりを実際に担っている人々と触れ合いながら次々に情報を発信している。

国内でもなかなか例を見ない、彼らの活動と新聞社運営のコワーキングスペースに興味を持ち現地を訪ねた。


上/左から福井新聞記者の高島健さん、五連会長の加藤幹夫さん、記者の細川善弘さん。「これからビル」の前で 下/3階のコワーキングスペースの様子



築50年のビルをまちの拠点を目指しリノベーション


sankakuは、福井市にある元アパレルショップの築約50年の空きビルをリノベーションした「これからビル」の3階にある。

コワーキングスペース開設には、まずこの「これからビル」の立ち上げが大きく関わっている。2010年ごろから福井駅前の商店街エリアの賑わいを取り戻すべく活動を続けてきた、福井駅前五商店街連合活性化協議会(五連)の会長、加藤幹夫さん。彼が一級建築士事務所OpenA(東京都中央区)のリノベーション事業に感銘を受け、空きビルを再生してまちづくりの拠点とするその手法を同エリアにも取り入れようと試みたのだ。

「加藤さんやタウンマネージャー、そして我々福井新聞社の記者が集まり、ビルをリノベーションし再生するためのまちづくり会社を設立しました」と、会社の設立に関わり、現在はsankakuの運営にも携わってる記者のひとり、細川善弘さんは話す。
15年7月、完成したこれからビルの1階には加藤さんが経営するカフェ「su_mu」が、次いで9月には3階にsankakuがオープンした。リノベーションのコストを抑えるため、記者2人は部材を調達し、セルフリノベーションにも挑戦した。

同コワーキングスペースでは記者の細川さんらが常駐して取材・執筆を行っているほか、グラフィックデザイナーやWEBデザイナー、会計士などのさまざまな職種の自営業者がシェアオフィスとして利用している。シェアオフィスは1区画あたり約1畳で賃料は9,000円。9つある区画は満席だ。


上/スペースのうち半分は仕事のほかイベントなどにも活用 下/木材などで簡単に仕切ったオフィスの区画



まちづくりの只中に飛び込み、最新情報を捉え続ける


そもそも、どうして新聞社の記者がまちづくりの一端を担うことになったのだろうか。

2013年6月、福井新聞社で福井のまちづくりの連載企画が検討されたのが事の発端だ。当時、大型店の相次ぐ閉店をはじめ、2015年に北陸新幹線の長野-金沢駅間が開通するものの福井駅には至らず経済効果が見込みにくいことなどから駅付近の商店街の衰退が懸念されていたという。
「それまで記者たちはまちづくりについては、都市計画や公共交通などを対象に、行政の動きを中心に取材していました。でも、そのとき、『福井の将来の姿を提示できるような企画にしたい』、また『20~30代の読者に訴えかけられるような内容にできないか』という意見が出たのです」ともうひとりの記者、高島健さんが話す。

その結果、記事のメインターゲットと同年代で機動力のある記者を社会部や政治部、経済部から集め、「まちづくり企画班」を結成し取材に当たることになった。連載は月1回のペース、タイトルはずばり「まちづくりのはじめ方」だ。取材では、まちやまちづくりに関わっている民間企業や住民にスポットを当て、実際に動く姿が見える記事を心がけたという。読者にもっとまちづくりを身近に感じてもらいたいという想いがあったからだ。
「まちづくりに評論家はいらない。まちは住む人たちが自らつくるもの。必要なのはひとりひとりの行動だと取材を通じて確信していきました」(高島さん)
そのような実感から、記者たちも実際にまちづくりの動きに加わることを決めた。そこから、sankakuの開設に結び付いていく。

細川さんも高島さんも、記者クラブでなく、その名の通りまちづくりの只中に拠点を置くことで一層早くまちの変化やまちに関わる企業の動きを捉えられるようになったという。些細な変化にも気づき、ごく初期から継続して追いかけるケースも増えた。


付近の商店街は空き店舗や老朽化した店舗が目立つ。訪ねた日は休日だったが人影はまばら



飲食+コワーキングスペースで情報共有を


企画班が立ち上がった当初、記者たちは福井の豊かな「食」を通じてまちづくりに関わろうと試みた。まずは、食を楽しむイベント「フードキャラバン」を県内各所で不定期に開催していたが、同時に、そうした一過性のものではなく継続的にまちと関われる場を持ちたいと考えていたという。その結果たどりついたのが、空きビルのリノベーションであり、1階が飲食、3階がコワーキングスペースという計画だ。さまざまな職種の若手が食や仕事をきっかけに集まり、1階と3階を行き来しながら、アイディアをシェアしたり、コラボレーションして新たな仕事を立ち上げていく。そんな場をイメージした。
「まちに賑わいを取り戻すには、若い世代のやる気を生かすことが重要です。若者が積極的に創業できるようなまちになってほしい。sankakuをはじめ、これからビルにいらっしゃるみなさんの事業立ち上げをサポートするような“まちづくりファンド”を創設したい」(加藤さん)

一方、新聞記者がまちづくりの現場に関わっていることで、同新聞のイメージが変わったという若い世代の読者もいるようだ。
「福井新聞は面白いことをするね、と言われることもあります」と、細川さんは嬉しそうに語った。


1階のカフェ、su_muの様子。20~30代の来客が多いという。この日はアフタヌーンティ-がテーマのイベント中



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