同性カップルの部屋探しを応援。「LGBTフレンドリー」な不動産会社の取り組みを聞いてきた

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口コミで話題に。福岡・三好不動産のLGBT対応窓口


「LGBT」や「セクシュアルマイノリティ(性的少数者)」という言葉を聞いたことがない人は、もはやほとんどいないのではないだろうか。
LGBTとは、セクシュアルマイノリティのうちの
[L]レズビアン……女性同性愛者
[G]ゲイ……男性同性愛者
[B]バイセクシュアル……両性愛者
[T]トランスジェンダー……出生時に割り当てられた性別ではない性別で生きようとしている人達
の頭文字をとったものだ。他にも上記のセクシュアルマイノリティに当てはまらない方達も存在する。日本ではセクシュアルマイノリティとLGBTは同じ意味で表現されることも多いよう。本文でも便宜上、以下LGBTと表記する。

近年、LGBTが差別や偏見を受けずに生きられる社会を作ろうと、さまざまな方面で取り組みが行われている。2015年に東京都渋谷区では同性パートナーシップ条例が成立し、ここ2年で急速に社会的認知が高まってきているが、まだ多くの課題は残っている。不動産の世界でもなお、不動産会社や家賃保証会社、大家の偏見から、同性カップルの部屋探しが難航するケースが後を絶たないそう。

そのような状況を変えたいと、福岡市の三好不動産では昨年11月から同性カップルへの賃貸物件の仲介の取り組みを始めた。SNSでLGBTの部屋探しを支援していることを発信し、口コミや紹介から問合せが増えているという。同社でLGBTの部屋探しを担当する原麻衣さんを訪ねた。


LGBTの部屋探しを担当する原麻衣さん。原さんが在籍するスマイルプラザ博多駅前店では、入り口に性の多様性のシンボルであるレインボーステッカーを掲示している。(撮影:山口)



来店そのものが怖い…同性カップルの部屋探しの現状


同性カップルの住まい探しは予想以上に困難だ。
一緒に暮らす部屋を探そうとすると、店頭で「あなたたちに紹介できる物件はない!」と追い返されてしまったり、2人の関係を訝しんで根ほり葉ほり聞かれたり、担当者が終始薄ら笑いを浮かべていたりと、当事者は少なからず嫌な思いをしているという。
そのハードルをクリアしても、次は家賃保証や管理会社、大家の壁が待ち構えている。
例えばパートナーが同性であることを家族に言えず、保証人がいないことは多い。連帯保証人が必須の契約はできないことになる。
また、気に入った物件を見つけて申込んでも、なぜか後から申込んだはずの異性カップルやファミリーが優先されてしまう。男性2人の入居と伝えると犯罪に使われるのでは?と疑われ断られる…。そんな体験からか、1人暮らしだと偽って契約するケースもあるそう。だがそれは、多大なリスクを伴うことを一般的にもあまり理解されていない。万が一火災などの事故で怪我をした場合、契約者以外の住人に保険金は支払われない。また、届け出以外の住人がいることで、退去させられる可能性すらある。

原さんは、昨年の5月に行われた社員研修でこうした実態を知り、使命感に駆られたという。「自分しかいない!」と担当に手を挙げた。
自社の管理物件を紹介する場合は、顧客のプライバシーを守りながら、きちんと説明し大家の理解を得る。
「三好不動産はありがたいことに賃貸物件の管理戸数が福岡No.1です。それは、多くのオーナー様に説明して、理解していただける機会も多いということ。そんな当社だからできるとも感じました。」(原さん)
同社の管理物件を紹介する場合、多くは自社グループの家賃保証会社を利用する。連帯保証人不要の場合もあり、手続きもスムーズだという。
原さんは昨年11月からの10ヶ月間で、14件の同性カップルの賃貸契約を成立させてきた。契約が成立した人たちからは、原さんの対応への感謝の声が寄せられている。
しかし、自社の管理物件以外では、入居希望の2人の関係を事細かに聞かれ、手続きが進まず契約に至らないこともある。
また、過去に博多駅前店以外の店舗で、外見との違いから、申込み時に必要な身分証の提示を拒み、転居が叶わなかった人もいたという。原さんは「私が対応していれば…」と溢した。課題は残る。


TwitterやFacebookでLGBTの部屋探しに関する「よくある質問」を掲載している(資料:三好不動産フレンズLGBT)



賃貸物件の契約に性差で区別する事項はない


賃貸物件の場合、店舗に来店→内覧→申込→審査(家賃保証会社・管理会社・大家)→契約(入居)という流れが一般的。この過程で、対応する人の無理解や知識不足による偏見にさらされる、いわば「人」によって生じる問題がLGBTの住まいの確保の大きな壁となっている。
契約までの手続きや仕組みは、LGBTも通常の契約と何ら変わらない。
例えば、「2人入居可」の物件がある。この条件は夫婦やそれに近い関係(婚約中など)、兄弟姉妹などの入居が可能なことを意味している場合が多い。同じ2人入居であってもリスク(騒音や家賃滞納)を想定し、友人同士のルームシェアは「大勢が出入りする可能性があるのではないか」や、「片方が出ていった場合に家賃の支払いは大丈夫か」を懸念して断られることも少なくない。ならば、賃貸契約の名義人の収入が十分な場合や、2人で家賃を支払う同性カップルの絆が強い場合に、入居を断る理由はあるのだろうか。
「実際、契約に至る人たちは3年以上付き合っていたり、事実婚に近い関係の人たちです。」(原さん)
また、収入の面から単身用物件に2人で住むケースもある(福岡市に暮らす外国人にはこのケースも多い)。これも、担当者や大家の理解があれば可能だろう。

「本当は2人の関係性や収入の面からも1LDKが都合がいいのに、ルームシェアを装うために2LDKを希望せざるをえない人もいます。そうすると賃料が上がったり、希望するエリアから外れたり。顧客の本心を汲んで提案するのは、どのお客様に対しても同じです。」(原さん)

LGBTの当事者は、直接口に出して言える人も、言えない・明かしたくない人もいる。他の人の目が気になる人には、現地集合での内覧も促している。
原さんは決して必要以上の詮索をせず、顧客の心に寄り添うことに徹する。
「名刺にあるレインボーマークを見て、当事者が気づくこともありますね。それにみなさん、理解者かそうでないかは見分けるみたいで。雰囲気なのかもしれませんね。」(原さん)
当事者の生の声を聞きたいと、プライベートでも週に1度は女性専用バーに足を運んでいるそう。


スマイルプラザ博多駅前店の外観(左上)と、仕事中の原さん(左下)プロジェクトメンバーは、レインボーマークの入った名刺やバッジを持ち、LGBTへの理解があることを示している(右上)。写真右下は、原さんの持つLGBT用名刺(撮影:山口)



誰もがふつうに暮らしたいだけ。本当に大切なのは、意識の醸成


2015年の電通ダイバーシティ・ラボの調査によると、13人に1人はLGBTというデータが発表された。また、LGBT支援を掲げる自治体や企業が相次ぎ、同調査ではLGBT層のサービスの市場規模を5.9兆円と算出している。
三好不動産の取り組みも業界内外で注目されており、先日開かれた一般社団法人九州経済連合会ではセミナーに登壇した。11月には東京で開催の日管協フォーラム2017(主催:公益社団法人日本賃貸住宅管理協会)での講演を予定している。LGBT対応を掲げたことに対し、ビジネスへの取り入れの早さを称賛する声や、同業者から「空室対策ですか?」という率直な問いも寄せられたという。
しかし、そういった反応には少し違和感を覚えるそう。
「理想は、誰もが快適な住環境を手に入れられること。不動産会社は人々の生活基盤となる『住』を扱う業種です。だから私たちは常に問題意識を持っています。高齢者や障がい者、外国人、LGBTも、みんな『困っている』状況があった。そのニーズに応えていたら、結果、その先にビジネスがついてくることはあると思います。社員が、LGBTをビジネスターゲットだけの施策と認識しないように、勉強会等社内教育を続けていかなければなりません。」と、同席した同社執行役員の松本茂規氏は語る。

「仕組みを作るのは意外と簡単。でも人の意識はシステムのように構築することは難しい。じっくり醸成させていくしかありません。LGBTを特別視しない社会が本来は理想ですね。」(松本氏)
「みんな、普通に生活したいだけなんです。まずは賃貸から。次に売買にも波及させたいんです。特に女性同士のカップルの場合、将来が不安だから買っておきたい、40歳くらいでローンを組んでおきたいという声もあります。住宅ローン等、制度における難しさもありますが、少しずつ変えていきたいですね。」(原さん)
ライフスタイルの根幹に関わるからこそ、誰もが「普通に」住まいを手に入れられる社会でありたい。「LGBT対応窓口」がいつかいらなくなるように、原さんは今日もLGBTの住まいの確保に奔走する。

取材協力:三好不動産
三好不動産フレンズLGBT Twitter: https://twitter.com/mfriends344
Facebook: https://www.facebook.com/mfriends344/?ref=page_internal


11月に行われるレインボープライド2017では昨年に続き協賛企業となった。今年はお部屋探しの相談ブースも設け、ヒアリング等を行うそう(資料:「昨年のイベントの様子」三好不動産フレンズLGBT)



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