高額な退去費用の請求も…。賃貸に住む前に知っておきたい、東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」①

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後を絶たない賃貸契約を巡るトラブル


「アパートを退去したら高額な原状回復費用を請求された」。そんな賃貸契約を巡るトラブルが後を絶たない。PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク)に寄せられた賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブルに関する相談件数は、ここ数年1万4,000件前後で推移しており、今のところ減少する気配はない。最近の事例にはこのようなものがある。
「2年間居住した賃貸アパートを退去した。当初から傷が付いていた扉の修理代を敷金から差し引かれ不満だ。返金してほしい」
「半年で賃貸アパートを退去したら畳と襖の修理代を強引に請求された。汚していないのに修理費用を請求するのはおかしい。返金してほしい」
「賃貸マンションの退去時、口頭で原状回復費の額について説明を受けたが、後日届いた明細書の額と異なっていた。納得いかない」

東京都では、このような賃貸住宅のトラブルを防ぐために『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』を作成している。そこで今回はその概要を2回に分けて紹介する。


PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク)に寄せられる賃貸契約に関する相談件数は、<BR />毎年1万4,000件前後で推移し、減少する気配はない



東京都が作成した『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』


東京都には約600万世帯が居住しているが、そのなかで4割弱の220万世帯が民間の賃貸住宅だ。同住宅に関する相談は東京都にも日々寄せられており、都ではトラブルの発生防止のために2004年に「賃貸住宅紛争防止条例」を制定した。

この条例では、物件を仲介する不動産会社に対して、賃貸住宅を借りる人に原状回復の基本的な考え方や契約書に記載している借主の負担の内容などを書面を交付して説明するように義務付けている。説明しなかった場合、知事は指導・勧告を行うことができる、また、それに従わなかった場合は、会社名や代表者名などを公表することができる。

ところが、この条例の制定後も依然として多くの相談が寄せられていた。このような経緯で作成されたのが『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』だ。同ガイドラインでは、契約時の注意点から退去後のトラブルの対処法まで約70ページに渡って詳細に解説している。その構成は大きく4つに分かれている。

1.「トラブル防止と東京都の条例」
賃貸住宅紛争防止条例が制定された背景と内容を紹介。

2.賃貸住宅トラブルガイドライン
条例で説明を義務付けた、退去時の復旧と入居中の修繕の貸主・借主の費用負担などの基本的な考え方などを解説。

3.賃貸住宅の契約と住み方の注意事項
賃貸住宅の契約と住み方で注意すべきことを説明。

4.トラブルになってしまったら
東京都の相談窓口や司法手続きの内容などを解説。

そこで今回はその内容を基に契約から入居までの注意点を考えてみよう。


東京都『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』の表紙



借主の故意・過失などによる原状回復は借主の負担


■原状回復等の原則を理解する
退去時の原状回復について考える際に大事なことは、まず、退去するまでの間に建物価値がどれくらい減少したか、どうして減少したかを整理することである。ガイドラインではこの建物価値の減少について、次の3つに区分している。

1)経年劣化:建物・設備等の自然的な劣化、損耗等
 例:日光によるフローリングや畳の色あせ、壁紙の日焼け
2)通常損耗:借主の通常の使用により生ずる損耗等
 例:家具の設置による床やカーペットの凹みなど
3)1,2以外の理由による損耗等:借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等

このうち、1、2については、修繕費は家賃に含まれているとされており、借主には"原状回復義務はない"とするのが原則である。次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直しなどのリフォーム、退去後に貸主の都合で行うグレードアップについても、貸主が負担するのが原則としている。

こうした建物価値の減少の基本的な原則について理解した上で、改めて「原状回復」の意味をガイドラインで確認してみる。
ガイドラインによれば、一般的な建物賃貸借契約書には、「借主は契約終了時には本物件を原状に復して明け渡さなければならない」といった定めがあるが、この場合の「原状回復」とは、借りていた物件を契約締結時とまったく同じ状態にするということではない、としている。

つまり、建物賃貸借契約における「原状回復」とは、
・経年変化や通常の使用による損耗等の復旧は「貸主の負担」
・借主の故意、過失や通常の使用方法に反するなど、借主の責任によって生じた住宅の損耗やキズ等の復旧は「借主の負担」
ということになる。

■事前説明は理解できるまで確認する
不動産会社の仲介・代理によって契約を締結する場合は、事前に宅地建物取引法に基づく重要事項説明と東京都賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明(東京都の場合)を受けることになる。これらの説明を聞いても理解できない場合は、遠慮することなく何度でも確認するべきだ。それでも理解できなければ契約を保留して時間をかけて検討する、または消費生活センターなどに相談するといった方法がある。


原則として建物や設備の自然損耗に対する原状回復は貸主の負担となる<BR />(出典:賃貸住宅紛争防止条例&賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(リーフレット))



原則に基づかない「特約」の内容にも注意を


賃貸借契約を交わす上で特に注意したいのが、原則に基づかない負担などが記載されている場合のある特約事項(特約)である。これは、貸主と借主の合意によって原則と異なることを定めることができ、たとえ借主に不利なものでも基本的には有効となってしまう。

ガイドラインでは、特約が成立する要件として、以下の3点が記載されている。
1)特約の必要があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2)借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3)借主が特約による義務負担の意思表示をしていること

疑問に思うことがあれば署名・捺印をする前に納得できるまで説明を求め、必要ならば内容を変更してもらう。また、交渉によって変更したことは口約束にせず、必ず契約書に記入してもらうようにしたい。

その他、入居前に行っておきたい点としては、入居前から存在する傷や汚れの確認だ。入居時と退去時の状況を比較できるように、貸主と借主の立ち会いの上でキズや汚れがどこにどの程度あるか確認する。その際、あやふやにならないよう、証拠として写真も撮っておき、「入居時の物件状況確認書」などの書面も作成しておくと良いだろう。ガイドブックには、この確認書の記載例も掲載されているので、併せて確認して欲しい。

次回は、「入居中から退去後の注意点」を紹介する。

賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(改訂版)~概要~


「入居時の物件状況確認書」の記載例(出典:『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン』)



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