相続登記未了の土地が中小都市・中山間地域で3割弱~法務省 不動産登記簿における相続登記未了土地調査~

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法務省初となる相続登記未了土地に関する実態調査


法務省は2017年6月6日、不動産登記簿の相続登記未了土地に関して同省初となる実態調査の結果を公表した。同調査によれば、最後に登記されてから50年以上変更がなく、所有者が不明の可能性がある土地は、中小都市・中山間地域が26.6%、大都市で6.6%存在しており、今後も増加する見込みだという。
なお、調査は2017年1~5月、神戸市など都市部の3市区と、高知県大豊町など地方の7市町の計10市区町を対象としており、11万8,346人が所有する土地を抽出し、最後の登記からの経過年数を調べている。

土地の所有者が死亡後も長期間にわたり相続登記がされなかったり、相続人の所在が把握が困難な「所有者不明土地」については、所有者の承諾なく土地の利用ができないために、公共事業や復興の事業がストップしたり空き家の取り壊しが進まないなど問題が顕在化している。


法務省『不動産登記簿における相続登記未了土地調査』を元に作成



都市部に比べて地方に多い相続登記未了土地


所有者不明になっている可能性がある土地のうち、最後の登記から50年以上が経過している内訳をそれぞれ見てみると、大都市では宅地が950個(5.4%)、田・畑が313個(14.8%)、山林が161個(8.9%)となっている一方で、中小都市・中山間地域では、宅地が1,857個(10.5%)、田・畑が5,918個(23.4%)、山林が11,458個(32.4%)と、都市部に比べて50年以上の長期間、登記の変更がされていない土地が多い結果となっている。

土地の所有には資産価値の有無に関わらず、固定資産税や登録免許税などが生じる。土地を所有することで生じるコストが土地の資産価値を上回ることも少なくなく、法定相続人が誰も相続登記せずに長年放置されてしまうことも多い。また、子どもや孫の代に至ってしまうと法定相続人の数は増え続け、相続も売却も困難な土地が生じることになる。


<BR />主な地目別に見た場合の経過年数の状況<BR />法務省『不動産登記簿における相続登記未了土地調査』を元に作成



農水省の調査では、全農地の2割が相続未登記農地


法務省の調査では、宅地に比べて田・畑、山林に相続登記未了土地が多い結果が出ているが、参考として平成28年12月に公表された農林水産省による全農地における「相続未登記農地等の実態調査」の結果も併せて見ていこう。
本調査では、全国1,718市町村のうち災害等により調査ができなかったものを除く全1,695の市町村において、全農地の相続未登記の状況を調査している。
調査の結果は、登記名義人が死亡していることが確認された農地である「相続未登記農地」の面積が約47.7万ha、登記名義人が市町村外に転出していたり、すでに死亡している可能性があるなど相続未登記のおそれのある農地の面積については約45.8万ha存在することが確認されている。これらを合計すると、93.4万haと全農地面積447万haの約2割を占めており、このうち、現に耕作されておらず引き続き耕作されないと見込まれる「遊休農地」は5.4万haにのぼり、相続未登記農地等の6%を占めている。

国内の農地については、今後、多数の高齢農業者のリタイアが見込まれる中、所有者が分散している農地を集積して管理の効率化を図る「農地集積」が進められている。しかし、こうした農地の一部においては、事実上の管理者はいるものの、権利関係が複雑になっており、農地の集積・集約化を加速化させる上での妨げになっているという。
また、同省が平成29年3月に公表した調査結果によれば、これらの農地は登記されていないだけで事実上の管理者が自分の農地と考えている傾向が強いものの、管理者は高齢である場合が多く、将来的に相続未登記の土地が遊休不動産になる恐れが大きいとしている。

(参照)
平成28年12月発表 農林水産省『相続未登記農地等の実態調査の結果について
平成29年3月発表 農林水産省『農地集積の加速化と森林施業の集約化


左:相続未登記農地の実態 右:相続未登記農地における固定資産税の夫婦状況<BR />参照:農林水産省『農地集約の加速化と森林施業の集約化』を元に作成



相続時の負担を軽減する「法定相続情報証明制度」が開始


これらの問題を解決する一つの方法として法務省は、2017年5月28日から不動産や預金などの遺産相続の手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」をスタートさせた。
これまで、相続が発生すると被相続人の戸籍謄本や除籍謄本に加えて、相続人全員の戸籍謄本などの膨大な書類を提出する必要があり、自宅以外の不動産を所有していた場合には、その数だけ戸籍謄本等の一式を揃える必要があった。また、相続の発生時には、金融機関の解約など並行して行わなければならない手続き等もあり、こうした負担の大きさが、相続登記の手続きが進みにくい要因の一つにもなっていた。

今回始まった「法定相続情報証明制度」を利用すれば、いずれかの相続人が相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続き柄、法定相続分などを記した「法定相続一覧図」をつくり、相続人全員分の現在の戸籍と、被相続人の出生時から死亡時までの戸籍と共に法務局に提出する。法務局は内容を確認したうえ、無料で公的な証明書として保管し、写しを発行する。それを法務局のほか、銀行や証券会社などでも利用できることになる。
つまり、制度スタート後は一度各機関に書類を提出してしまえば、その後は発行される証明書1通で済ますことができる。


法務省が発行している法定相続情報証明制度サービス開始の告知パンフレット



人口減少時代に改めて考えたい土地のあり方とは


所有者不明土地に関する全国の自治体へのアンケート結果を公表した東京財団の吉原祥子氏は、2017年4月17日の経済財政諮問会議に提出した資料中に、

「土地の所有者不明化の問題は、公共的な課題でありながら個人の権利に属する部分が大きく、行政が積極的に動きにくい、しかも個人の権利(土地制度)を個人が十分理解していない等、どこから手をつけていいのかわからない問題」

という自治体関係者の声を取り上げている。

人口減少時代における土地制度の大きな課題が表面化している中、将来の世代に土地を適切に引き継いでいくために何をすべきなのだろうか。
問題の解決に向けては、各省庁連携による実態把握や権利の継承に関する法整備に加えて、まずは国民の一人ひとりの、限られた国土をいかに有効に活用していくかという公共性に対する理解がより一層求められているように思う。

<調査概要>
2017年1~5月、神戸市など都市部の3市区と高知県大豊町など地方の7市町の計10市区町を対象
11万8,346人が所有する土地を抽出して調査を実施


法務省は不動産登記簿の相続登記未了土地に関して同省初となる実態調査の結果を公表した。同調査によれば、最後に登記されてから50年以上変更がなく、所有者が不明の可能性がある土地は、中小都市・中山間地域に多く、今後も増加する見込みだという。



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