不動産証券化の対象取得額が2年連続の減少。地方都市ではストック活用の手段として期待も ~平成28年度 不動産証券化の実態調査

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平成28年度の証券化対象不動産の取得額は約4.8兆円で2年連続の減少に


国土交通省は、2017年年5月31日に「不動産証券化の実態調査」を公表した。
「不動産証券化」は、価格が高額で流動性(換金のしやすさ)が低い投資商品である不動産を、有価証券として小口化することで、流動性の高い金融商品に変える手法の一つである。不動産証券化によって、大きな資金がなければできなかった不動産への投資が、一般の消費者にもしやすくなり、また不動産が証券化されることでより売買しやすくするというメリットも生まれた。

内閣府が公表した資料によれば、これまでに証券化された不動産は約33兆円にのぼる。証券化の対象となる賃貸オフィスや賃貸商業施設などの収益不動産は現在約200兆円以上あり、今後、空港や地下鉄などの公的な資産も民営化が進む方向にあることなどからも、今後、市場の拡大が期待されている。

しかし、平成28年度に不動産証券化を目的に取得された不動産、または信託受益権(不動産を信託してその不動産から得られる利益を受け取る権利)の資産額は、約4.8兆円と前年度の約5.4兆円から-10.0%と、平成26年から2年連続の減少している。このうち、資産と投資家とを結ぶ機能を担うビークル等からの取得額は約2.7兆円で、証券化ビークル等が譲渡した資産額は約5.0兆円であった。(※)
取得額が減少したのは、対象となる不動産の価格が上昇し取得のハードルが上がったこと、J-REITの新規上場における公募割れが相次ぎ、相場にやや不透明感が漂い始めたことなどが主な要因だ。
ただし、不動産証券化市場は、平成18年~19年に年間約8~9兆円の不動産が証券化されており、平成20年のリーマンショック後に約2兆円弱まで規模が縮小したものの、平成24年以降は約4兆円以上と回復しており、市場全体としては縮小する傾向にはなく、安定拡大していると見ることができる。
国土交通省では、不動産証券化の全体的なボリュームを把握するため、年度内に不動産証券化の対象として取得された不動産、または信託受益権の資産額を調査して公表している。

※ビークル…資産の証券化をする際に、資産と投資家とを結ぶ機能を担う組織体を指す。実物の資産ではなく資産の価値を保有し、リスクを資産の範囲に限定する「倒産隔離機能」と、利益に対する二重課税の回避が主な役割である。

■参考:内閣府「不動産・インフラ投資市場活性化方策に関する有識者会議 第1回(2012年11月)資料


証券化の対象不動産の取得・譲渡実績の推移<BR />参照:国土交通省『平成28年度 「不動産証券化の実態調査」 の結果 』



取得された不動産のうちの48%を占めるリート


不動産証券化のスキームは、ビークル(特別目的事業体)別に、主に4種類に分類することができる。

1)GK-TK
ビークルとして主に合同会社(GK)を使い、不動産を実物ではなく、"不動産信託受益権"の形で購入し、匿名組合(TK)を設立、そこへ投資家から出資をしてもらう仕組み。既存の制度の組み合わせであるため柔軟性があるが、特別法に基づくものではないため法的な安定性はTMKに劣る。

2)TMK
ビークルとして特定目的会社(TMK)を使い、資産流動化法に基づくスキームで、実物の不動産や不動産信託受益権、不動産ローンなどの財産権一般に投資をすることができる仕組み。資産流動化計画の提出など一定の要件をクリアすれば、税務上の利益から配当金を損金として控除できるため、実質的に法人税がかからないメリットがある。

3)Jリート
ビークルとして投資信託及び投資法人に関する法律に規定されている投資法人を使う、「日本版不動産投資信託」である。一般的な会社の"株式"にあたる「投資口」を発行し、その投資口を上場させて資金を調達する仕組みで、GK-TLやTMKが限定的な投資家から資金調達するのに対し、Jリートは不特定多数の投資家から「公募」で調達することができる。2017年7月4日には、三菱UFJフィナンシャル・グループが、傘下銀行のJリート向け融資債権の信用リスクを証券化して地方銀行や信用金庫などへ販売を開始、年1000億円の販売を検討という報道がされた。

4)不動産特定共同事業
不動産会社等の許可を受けた業者が事業主体となって、投資家から出資を受けて実物不動産の取引を行い、その収益を投資家に分配するスキーム。登録免許税その他の取引コストが軽減されている。

平成28年度に取得された資産をスキーム別に見ると、リート(上場・非上場)が 約2.32 兆円で全体の約48.0%を占めており、次いでTMKが約1.25兆円(25.9%)、GK-TKスキーム等が約1.10兆円(22.8%)、不動産特定共同事業が約0.16兆円(3.3%)となった。
平成27年度と比較すると、リートが約2.07兆円から約2.32兆円と+0.25兆円の増加しており、GK-TKスキーム等が約2.05兆円から約1.10兆円と1兆円近く減少している。


スキーム別 証券化の対象となる不動産の取得・譲渡実績の推移<BR />参照:国土交通省『平成28年度 「不動産証券化の実態調査」 の結果 』



用途別ではオフィスが36.7%、商業施設が16.8%


では、証券化の対象となる不動産は、どのような用途に投資されているのだろうか。対前年比と共に見てみる。
取得実績を見てみると、オフィスが36.7%(+1.1%)、商業施設16.8%(+1.6%)、倉庫15.7%(+0.5%)、住宅が13.0%(+0.9%)、ホテル・旅館 11.3%(-1.8%)となっており、平成24年度以降に増加が目立っていた「ホテル・旅館」の割合は、昨年から-0.2兆円と4年ぶりに減少に転じている。

また、平成24年度以降は、新しい用途として「ヘルスケア」や「複合施設」が登場し、投資の対象の選択肢が増えていることがわかる。不動産証券化で日本よりも先行している米国のリート(US-REIT)では、投資額の約半分が「住宅」、「オフィス」、「商業・小売」が占めているものの、残りの半分は、介護サービスなどの「ヘルスケア」や「森林」、「ホテル・リゾート」など投資対象が多岐に渡っている。


用途別 証券化の対象となる不動産の取得実績の推移<BR />参照:国土交通省『平成28年度 「不動産証券化の実態調査」 の結果 』



取得実績のうちの約半分を占める東京と大阪


平成28年度に取得された資産を対前年比で所在地別に見てみると、東京都が382件(+21件)、大阪府が130件(▲18件)、神奈川県が79件(▲11件)、愛知県が69件(+15件)、千葉県68件(+8件)、北海道47件(+4件)、その他の地域が197件(▲73件)となっており、東京都と大阪府が全取得件数の約半分を占めている。

しかし、同省の『不動産投資市場の成長に向けた課題について』によれば、J-REITによる不動産の取得は、東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)、大阪圏(大阪府、京都市、神戸市)、名古屋圏(名古屋市)の三大都市圏以外の地方都市にも広がりを見せている。平成13年9月のJ-REIT市場創設時の16都道府県から、平成27年3月末には44都道府県に拡大しており、平成22年度に8%だった全取引に占める地方圏の割合は、平成26年度には23%まで増加した。

過疎化や高齢化が特に進む地方都市においては、不動産ストックを地域資源としていかに再生、活用していくかが活性化を図る上での課題の一つである。
土地の有効活用を促し、地方自治体の財政負担の軽減が期待される不動産証券化が、今後、地方都市を再生する手段の一つとしてさらに普及していくことを期待したい。


都道府県別の取得実績の推移<BR />参照:国土交通省『平成28年度 「不動産証券化の実態調査」 の結果 』



調査概要


<集計方法>
証券化の対象となる不動産の取得・譲渡実績(フローベース)
リート、不動産特定共同事業、TMK(一部推計)の実績に、信託銀行が把握する不動産信託受益権の取得・譲渡実績を加えた
・ リート ・・・不動産市場整備課調べ
・ 不動産特定共同事業 ・・・不動産市場整備課調べ
・ TMK ・・・不動産市場整備課調べ(一部推計)-「資産流動化計画」及び「金融庁の一年」(金融庁)を基に推計
・ GK-TK スキーム等 ・・・不動産市場整備課調べ


国土交通省は、2017年年5月31日に「不動産証券化の実態調査」を公表した。「不動産証券化」は、価格が高額で流動性(換金のしやすさ)が低い投資商品である不動産を、有価証券として小口化することで、流動性の高い金融商品に変える手法の一つである。



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