水道料金は継続的な値上げも?水道事業を取り巻く状況 ~厚生労働省「水道料金の適正化について」

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水道料金が30年後には1.6倍に?


私たちの生活に欠かせない電気、ガス、水道などの公共サービス。電気は、2016年4月に電力小売自由化、2017年4月にはガス小売自由化が開始されるなど、価格競争に向けた動きがある中で、水道事業については、今後大きな収入増が見込めず、老朽化した施設を維持するための資金確保が困難になっている点が指摘されている。

総務省が2014年に公表した「地方公営企業年間」を見てみると、国内にある水道事業者のうち、給水原価が供給単価を上回る水道事業者は全体の約51%を占めている。また、将来の施設更新等に充当するための費用を料金収入で確保できていないと思われる水道事業者は全体の約52%を占めており、中長期の財政収支を見通せば、水道料金の値上げは免れない状況である。
さらに、日本政策投資銀行が2017年4月に発表した「水道事業の将来予測と経営改革」の中でも、これまで同様に水道を使い続けるには、以降30年間で6割の水道料金の引き上げが避けられない、と試算されており、社会インフラの中でも特に重要な存在である水道設備の維持するための早急な対策が急がれている。


給水に係る費用が、給水収益でどの程度賄えているかの指標である料金回収率。<BR />全体(1279事業体)の内、約52%(659事業体)で料金回収率が100%を下回っている状況<BR />出典:「2014年地方公営企業年間」(総務省)



給水人口の減少と、老朽化した水道設備の維持への投資という課題


資金確保を難しくしている理由の一つが、人口減少による徴収額の減少だ。同調査によれば、水道を通じて給水を受けている"給水人口"は、人口減少に伴い2010年の1億2,494万人をピークに2014年には1億2,443万人まで減少、今後もこの減少傾向が続く可能性は高い。また、一人あたりの水の使用量も、節水型の家電などの普及によって2004年には年間325リットルだった使用量が、2014年には約1割減の298リットルに減少しており、水道事業者の徴収額の減少につながっている。財政状況を見てみても、水道事業者の有利子負債の合計は、2014年度で約7兆9,000億円と、同年度の料金収入約2兆6,500億円に対して約3倍に達している。

また、老朽化した水道設備の更新や、耐震化に伴うコスト増も差し迫った問題の一つである。
厚生労働省の調査によれば、水道管路の耐用年数である40年をむかえた水道管の更新率は、0.77%と1%にも満たない状態で、その更新にかかる投資額のピークが2020年以降におとずれることも懸念材料の一つである。同省は、仮にすべての設備を更新する場合には130年を要し、水道投資額約1兆円(2013年度)に対し、2046年度~2050年度は水道設備の維持、更新にかかる投資額のみで1兆4,143億円に達すると試算している。


給水人口と一人あたりの水使用量の推移<BR />出典:「水道料金の適正化について」(厚生労働省)



事業者間料金格差は10倍近くに


これらの課題解消に向け、厚生労働省では「水道ビジョン(2004年)」、「新水道ビジョン(2013年)」において、「水道の広域化」を推めている。
水道の広域化とは、各地域の実情に応じて事業統合や共同経営だけでなく、管理の一体化などを推進するものだ。2004年の水道ビジョンでは、主に全国に約1,300ある水道事業者の事業統合の推進を目的にしていたが、2013年の新水道ビジョンでは、事業統合に加えて設備・管理の一体化や、浄水場、緊急時の連絡管などの施設の共同化も進めることで、将来的な水道料金値上げ幅を最小限に留めつつ、安定的な水道の持続を目指すとしている。

しかし、この水道広域化の実施件数は、2013年時点で28件となかなか進んでいない。その理由の一つが「事業者間の水道料金の格差」だ。
水道事業は、水道法に基づき、主に地方自治体の水道局や水道部によって運営されている。その事業者の数は、2014年末の時点で1,348事業者があり、ガスや電気の事業者数と比べて多いのが特徴だ。水道料金は、こうした各事業者毎のコスト見合いで決定される独立採算を前提に決定されている。例えば、採水地までの距離や地形の形状による水道管の長短の違い、ポンプによる汲み上げ設備など、水源確保への設備投資が水道料金に反映されるのだ。

2015年4月時点で最も料金が安いのは兵庫県赤穂市で10m3あたり367円。水源である千種川は町の中心を流れているため市街地までの水道管も短く済むことや、水が良質であることで薬剤の費用が低く抑えられることなどが低料金である理由だ。一方、群馬県長野原町では10m3あたり3,510円と、赤穂市に比べて10倍近い料金格差が生じている。これは、八ツ場ダムの建設費用や関連する水道管の設置、管理費用などが、一人当たりの水道コストに反映されているためだ。


水道料金の高い自治体と低い自治体の比較<BR />出典:厚生労働省「水道料金の適正化について」を元に作成



水道設備の広域化、官民連携によるコスト削減に向けた動き


こうした課題に対処するためには、水道事業者はこれまで以上に組織体制の見直しや業務・設備の効率化、適正な料金体系の設定による事業運営が求められる。
実際に、料金引き上げに踏み切る自治体も出始めている。静岡県三島市は2017年10月から35年ぶりに平均で34%の値上げを実施。また福井県福井市でも2019年を目処に、1995年以来となる約20%の値上げを実施予定だという。

政府は、新水道ビジョンの策定後、厚生労働省は新水道ビジョン推進協議会を立ち上げ、水道関連の各種団体とともに、ロードマップを作成して取り組みを強化している。水道事業の広域化をより推し進めるために、水道法の改正案を2017年3月提出、都道府県毎の再編計画の提出を求めると共に、助成も用意する方針だという。

水道水を安心して飲める国は、世界でも数少ないと言われている。その数少ない国のひとつである日本の水道を、どのように次の世代に引き継ぐか。
まずは我々が、水道事業の現状について理解することが重要だと思う。


水道事業における業務範囲と民間活用に係る連携形態との関係図<BR />『水道事業における官民連携に関する手引き』(厚生労働省)



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