JALパイロット「遅刻するかも…」→アプリで情報共有 開発者は副操縦士

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位置情報アプリ「Husky(ハスキー)」を開発した日本航空の林英市副操縦士

「ブリーフィングに間に合うかどうか心配です」。交通機関のダイヤ乱れが日常茶飯事の首都圏で、出勤時に頭を抱えるのは日本航空(JAL)の運航乗務員も例外でない。決められた時間までに空港に到着できなければ飛行機の定時運航に支障をきたすだけに、同社には交通障害が発生した場合に役立つ社内アプリが存在する。

アプリの名称は「Husky(ハスキー)」。ボーイング787型機の副操縦士、林英市さん(35)が開発した。電車の遅延や運転見合わせ、道路渋滞などで遅れそうな時にアプリ内のスイッチを入れると全地球測位システム(GPS)で地図上に現在位置が表示され、空港にいる運航サポート部門の担当者と情報共有ができる仕組みだ。

当日乗務する運航乗務員は路線によって「出発時刻の1時間45分前」といった具合に空港へショーアップ(出頭)する時間が決まっている。交通手段は電車やバス、マイカーなど様々で、神奈川県内から成田へ、千葉県内から羽田へなどと、自宅から空港まで長距離を移動することも多い。

出勤途中で交通障害が発生した場合、運航サポート部門に電話連絡したうえで位置情報のスイッチを入れる。同部門の担当者は他の交通手段を提案したり、間に合わない場合に備えて交代要員を手配したりと、地図上の現在位置を確認しながら対策を講じることができる。アプリ内には「このルートだと成田まで何分かかった」と通勤者同士で情報交換ができる掲示板も設けた。

運用の現場でも好評だ。成田乗員サポートグループの責任者、安藤健一さんは「何時頃に到着するのか、分かるのと分からないのでは対応に大きな差が出る。電話しづらい電車内とも互いに掲示板でやり取りができる」と話す。今後は「より効率的な活用法を考えていく」という。

アプリをインストールするかどうかは各運航乗務員の判断に任されており、主に首都圏に自宅がある同社の機長・副操縦士約2000人のうち、ほぼ半数が活用している。プライバシーに配慮して「GPSの精度はわざと落としてある」(林さん)といい、位置情報もアプリのスイッチを入れない限りは発信されない。

林さんがアプリを開発するきっかけとなったのが2014年2月に首都圏を襲った大雪。成田空港は周辺の交通手段が寸断されて「陸の孤島」となり、乗務員の手配ができず多くの同社便が遅延・欠航した。後日、社内で再発防止策が検討されるなか、上司から「アプリで何かできないか」と持ち掛けられた。アプリの名称は雪に強いハスキー犬に由来する。

林さんは航空大学校を経て07年4月にJALへ入社。「もともとIT(情報技術)に詳しくはなかった」というが、13年10月に同社が全運航乗務員への「iPad」の配布を始めた際、「業務に役立つアプリを作ってみたい」との思いが湧いた。

交代で乗務するフライトの休憩時間中や、ステイ先のホテルで空き時間を見つけてはプログラミングの勉強に取り組んだ。苦心して最初に開発したのは「フライト・タイム・ディバイダー(FTD)」というアプリ。画面の縦横に数字が並び、一体何に役立つのか分からないが、林さんは「実は大ヒット商品」と胸を張る。

2人の機長と副操縦士が交代で操縦席に座る長距離路線などは、乗務後に記入する「フライトログ」に自分が担当した分を割り算して書く必要がある。このアプリに全体の飛行時間を入力するだけで「3分の1はキャプテン(機長)タイム」「6分の1はコーパイ(副操縦士)タイム」といった数字が一目で分かる。FTDは「アップストア」から誰でも無料でダウンロードすることができるため、JALに限らず、世界中の航空会社のパイロットに重宝されそうだ。

林さんはハスキーを開発した功績が評価され、16年7月に運航本部長表彰を受けた。大雪の苦い経験を糧に現場の副操縦士が生み出したアプリは、世界の航空会社のなかでも定評がある同社の定時運航に一役買っている。


実際のハスキーの画面。「8」はボーイング787型機の担当、数字の下の3本線は副操縦士、4本線は機長を意味する




林さんが開発した「フライト・タイム・ディバイダー(FTD)」の画面

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