「日野町」事件・決定要旨

時事通信社

 日野町事件の第2次再審請求審で、再審開始を認めた大津地裁決定の要旨は次の通り。

 金庫投棄実験の報告書などの新証拠を踏まえると、犯人は別の場所で金庫を開けた後、工事道から投げ下ろしたと推認でき、これは自白の内容と異なる。さらに金庫発見場所まで阪原元受刑者が案内した引き当て捜査において、復路に写真撮影がされ、これが往路で撮影した写真として調書が作成されたことを示すネガの分析報告書や、引き当て捜査担当警察官の証言などの新証拠を踏まえると、警察官による直接的な誘導はなかったものの、正解である金庫発見場所にたどり着けることを強く期待していた警察官が、鉄塔などがあることを示唆する意図的な断片情報の提供を行い、また警察官と元受刑者との間で正解到達に向かう無意識的な相互作用を生じさせた結果、案内できた可能性があると認められる。

 遺体発見場所について、元受刑者が事前に報道でおおまかな情報を得ていた可能性や、断片情報の提供と無意識的な相互作用があった可能性がある。元受刑者が遺体発見場所で、犯人ならではと思われる「草が伸びて変わっているな、山肌の欠けたこの木に見覚えがあります」との発言をしたという認定も、相当に疑わしくなった。

 指紋に関する専門家の意見書などの新証拠を踏まえると、丸鏡から検出された元受刑者の指紋は、事件とは別の機会に付着した可能性がある。

 元受刑者による犯行再現時のネガの分析報告書などの新証拠を踏まえると、被害者の手首が結束された方法と、元受刑者が勤務歴のある精肉店で肉を包む際の結束方法などが類似していない疑いが生じた。のみならず、犯行再現において結束方法を再現できなかった疑いさえ生じた。

 医師の鑑定書などの新証拠を踏まえると、自白のうち、左手を首の後ろに当てていたとする点は、遺体の損傷状況と整合しない。左手の位置およびそれに伴う体勢は殺害態様の重要部分であり、無我夢中だったという点や記憶の欠落では説明がつかない。

 元受刑者が事件当夜、知人方に立ち寄り酒席に加わり、眠り込んでしまい宿泊したというアリバイ主張について、知人からの聴取結果に関する新証拠を踏まえると、知人の供述を根拠にアリバイ主張は虚偽だとした一審判決などの判断は大きく揺らぎ、アリバイが虚偽でない疑いが生じた。

 新旧証拠を総合すれば、自白は(1)殺害態様(2)金庫の強取(3)遺体の遺棄(4)被害者方での物色-といういずれも重要な部分において、事実認定の基礎とし得るほどの信用性を認めることはできない。

 多くの重要な点で客観的状況と矛盾する自白をしている点に加え、捜査段階から警察官の暴行や脅迫的言動を受け自白したと述べていたことなどからすると、長時間の任意取り調べを受ける中で、顔を殴るなどの暴行を受け、娘の嫁ぎ先や親戚の所に行ってガタガタにするという趣旨の脅迫的文言を申し向けられた結果、自白した疑いが生じた。自白は任意にされたものではない合理的疑いがある。

 状況証拠を総合考慮しても、元受刑者が犯人であると推認することはできないし、状況証拠に犯人でなければ合理的に説明できないものは含まれていない。

 このように、一審判決や控訴審判決の判断は大いに疑わしくなった。新証拠が確定審の審理中に提出されていたならば、有罪と認定するには合理的疑いが生じたものと認められ、無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに該当する。 

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