配達員にも「神アプリ」? 「人に優しく」再配達ゼロへ、AIで挑戦

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インターネット通販がますます便利になり、社会問題になっているのが宅配荷物の「再配達」。最近は負荷に耐えかねたクロネコヤマトがAmazonの当日便から撤退を始め、消費者が不安を感じることも増えた。

ユーザーはますます自由度の高い受け取り方法を求めている。しかしその負担はこれまで、配達業者にのしかかっていた。受け取り手にも、配達員にも優しい解決方法はないのだろうか。AIを活用した自動架電サービスや住戸専用宅配ボックスなど、再配達問題の改善に取り組む企業を取材した。

「不在なら、行かない」 宅配員にも「神アプリ」登場

荷物を受け取る側は意識していなくても、宅配便の配達員は大変な重労働。目的地に向かい、駐車場を探して、荷物を降ろして、台車で運んで、いざピンポンを押したら「いない……」の繰り返しでは心も折れてしまいそうだ。そんな重労働を減らすべく、配達員にも優しい宅配システムを――。と開発されたのが、株式会社トレイルの自動架電サービスだ。

【画像1】トレイルが開発したシステムの仕組み

【画像1】トレイルが開発したシステムの仕組み ※自動音声に対する返答方法はプッシュボタンによる番号選択式から音声による「はい」「いいえ」に変更予定(画像提供/トレイル)

トレイルのソリューションは、配達員のトラックにGPSのついたスマートフォンを積み、配達先に近づくと、クラウド上の架電サーバーから自動で電話をかけて配達先の在宅・不在を知ることができるというもの。配達システムから電話を取った人には以下のようなアナウンスが流れる。

「こちらは、XX配達センターです。これからお届けする荷物がございます。お届けのお時間は、13時から15時の間になる予定です。このままお受け取りいただける方は、『はい』と言ってください。ご不在予定の方は、『いいえ』と言ってください。ピッ」

不在予定の人は、そのまま再配達日時を言うこともできる。入力された情報は、リアルタイムで配達員のスマートフォンに届く。

トレイルの代表取締役で、このシステムの開発者でもある奥野栄倫さんは
「ドライバーさんに言わせると『神』みたいなアプリなんです」
と話す。

しかも、このシステムは自動で電話をかけるだけではなく、受けることもできる。配達先が初回の着信に気付かなくても折り返し電話をくれればその電話を受け、ドライバーの位置と配達先の距離に応じて応答内容を変えていくのだ。もし近くにいれば配達予定の音声を流し、すでに遠くまで来てしまった場合は再配達の受け付けや配達先の変更を受け付ける。その際、音声をAIで自動認識するため、荷物の受け取り手も、配達員も、プッシュボタンで操作する必要がない。

写真/PIXTA

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「不在通知を受け取った人の50%はドライバーに直接電話をかけるといいます。18時以降、鳴り止まないらしいですね。仕事から帰って来て、不在通知を見た人から『持って来て』の一斉コールがかかる(笑)。宅配便のドライバーは運転マナーを徹底的に教育されているので、そのたびにトラックを止めて電話に出て……。それで配達が遅くなればなったで、怒られる。本当に大変です」(奥野さん、以下同)

「これも自動音声で行けば、『(配達先が)帰って来たよ』と端末に出てくるので運転しながら『次はここへ行こう』と行き先を変えることができます。要は、ドライバーの横にアシスタントがいて『僕が確認しますから』って電話をかけたり受けたりするシステムですね」

宅配便も「UberEATS化」!?

実用化されれば、ドライバー不足の問題も解決することができる。

宅配便は「一つ配達完了したら、数百円」という世界。配達先の不在が多い昨今では、担当エリアを決められた時間内に配りきるのは至難の業だという。熟練のドライバーはどのマンションのどの住人は何曜日の何時ごろなら在宅している可能性が高いか、までをあらかじめ把握しており、日々エリア内のマンションを回る順番も考えながら配達に出かける。

こうした「職人技」は一日二日で習得できるものではないため、宅配業界のドライバー不足に拍車をかけてしまっているそうだ。

写真/PIXTA

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トレイルのシステムを使えば確実に届けられる確率が高くなるため、主婦が平日の午前中に配ったり、学生が学校終わりに配達したり、アルバイトやパートタイム化も可能になるかもしれない。実際、米シアトルでは2015年から、一般人が隙間時間にAmazonの荷物を配達する「Amazon Flex」が始まっている。日本では類似のサービスとして、一般人が配達員となって、アプリから注文された料理をレストランに受け取りに行き、注文先に届ける「UberEATS」が好評だ(2017年9月現在、東京23区内のみ)。

「日本でも、宅配便の『UberEATS 化』が現実的になってきます」と奥野さんは話す。

「WebやLINEでできる再配達も便利ですが、お年寄りなど、使いこなすのが難しい人もいる。電話は昔ながらのシステムですが、自動音声認識技術なども活用して、『みんなに優しく』再配達問題の解決に取り組んでいきたい」

2017年9月ごろから、宅配業者との実証実験を予定している。

マンションの宅配ボックスも「1人1個」に

定番と思われる、集合住宅の「宅配ボックス」も進化している。とても便利な宅配ボックスだが、荷物量が激増した近年では常にいっぱいで、配達員が自分の荷物を入れられないこともある。

ならば、部屋ごとに専用の宅配ボックスを、と開発されたのが、「ライオンズマイボックス」だ。開発したのは、ライオンズマンションを展開する株式会社大京と、35年前に宅配ボックスを初めて開発した株式会社フルタイムシステム。

【画像2】一住戸専用の宅配ボックス「ライオンズマイボックス」

【画像2】一住戸専用の宅配ボックス「ライオンズマイボックス」(画像提供/フルタイムシステム)

ライオンズマイボックスの最大の特徴は、マンションなどの集合住宅で各室に専用の宅配ボックスがついていることだ。専用ボックスのサイズは縦210cm、横270cm、奥行き420cmほど。

宅配サービス会社に実施したヒアリングで、宅配される荷物のサイズは「80サイズ(3辺の合計が80cmまでの荷物)」が最も多いことからこの規格を決めた。専用ボックスに入らない荷物用に、全共用の大型宅配ボックスも全戸数の15%以下の割合の戸数で設置されている。

住戸専用ボックスによって可能になるのが、1つのボックスに複数の宅配業者の荷物を入れられることだ。例えば201号室の住戸専用ボックスであれば、先にクロネコヤマトが配達した後に、容量さえいっぱいでなければ、佐川急便と日本郵便も荷物を入れることができる(※2017年9月時点ではヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の3社に限定)。荷物の受け取り手はもちろん、配達員にとってもうれしい設備だ。

荷物の盗難などを防止するためセキュリティ対策のため、宅配業者にセキュリティカードを持ってもらい、どの業者がいつ、どの部屋のボックスを開け閉めしたのか、という履歴もデータでしっかり残していく。

これはコントロールシステムを持つフルタイムシステムだからこそ、可能な仕組みだ。1983年、マンション用の宅配ロッカーが誕生した年に、コントロールサービスも開始した。故障や障害時にロッカーから警報を受信して対応したり、現地ロッカーの収納物、リーダーなどの情報を把握したりすることもできる。このコントロールセンターは、直営で24時間、365日稼働している。

【画像3】「ライオンズマイボックス」から荷物の出し入れをする様子。

【画像3】「ライオンズマイボックス」から荷物の出し入れをする様子(画像提供/フルタイムシステム)

フルタイムシステム代表取締役副社長の原周平さんは、「まず(宅配)ボックスありき、ではなかった」と創業のプロセスを振り返る。

「(ユーザーや配達業者のニーズに応えるために)24時間365日の管理人サービスを構築したかった。その手段が宅配ボックスだったのです」(原さん)

今はその「管理人役」をITがサポートしている形になるだろうか。

ライオンズマイボックスはスペースをとるため、既存の物件に設置するには設置スペースを検討する必要がある。2018年3月に完成竣工する「ライオンズ東綾瀬公園グランフォート」をはじめ、17年度中に5棟、来年度には10棟のマンションに導入を考えている。

写真/PIXTA

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取材を始めてから、街で宅配業者を見かけると無意識に目で追ってしまうようになった。猛暑の最中、額に大粒の汗を浮かべ、大きな台車を押している。ネットで何でも買えるようになり便利になったけれど、その分の負担をすべて、配達業者が受けている。筆者自身、都合が合わず何度も再配達してもらったこともある。誰かが「便利」を享受するとき、どこかにしわ寄せがいってしまう。しかし今回取材したサービスは、配達員にも、受け取り手にも、両方に優しいシステムが実現できるのではないかと思う。その視点こそ、再配達問題のカギになるのではないかと感じた。

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