「ホットスポット」で話題になった千葉県柏市が人口爆発のナゾ = (古谷経衡のコンシューヨンダ! 第35回)

雑誌ネット

「ホットスポット」で話題になった千葉県柏市が人口爆発のナゾ = (古谷経衡のコンシューヨンダ! 第35回)の記事画像

●騒がれた「ホットスポット」

 3月である。「3.11」からもう4年以上が経過した。11日には、テレビ、新聞、ラジオ、週刊誌等で追悼の特集番組や記事が組まれたことは、読者諸兄も知ると居ころだろうと思う。

 さて、あの地震と原発事故から4年が過ぎ、いろいろな事例が、整理され見直されようとしている。その一例が、「3.11」直後、福島第一原発事故を切っ掛けに、放射能汚染が局所的に高い水準で観測される地域を示す「ホットスポット」という概念だ。

 福島第一原発から大気中に放出された放射性プルーム(雲)は、主に原発から北西の方角を高濃度に汚染したが、それより低濃度ながらも、風に乗って局所的に高濃度に放射線が降り注いだのが、「ホットスポット」である。

 首都圏において、この「ホットスポット」として話題になったのは、千葉県西部、茨城県南部、東京都東部の帯状の地帯で、その中でも最も顕著な空間線量が計測されたのが千葉県柏市であった。

 柏市は、JR常磐線沿線にある千葉有数のベッドタウンで、大手町など都心まで直通40分以内の好立地と、「千葉の渋谷」と称される駅前商業地帯の開発と若者への訴求のイメージから、伝統的に人気のある新興住宅都市として知られる。

●「ホットスポット」で地価下落と人口流出に見舞われる

 ところが、「ホットスポット」騒動が週刊誌を筆頭に、各メディアで騒がれ、また2011年から文部科学省が空間線量とセシウムの土壌蓄積度合いを航空調査の結果として公開すると、周辺より高いセシウムの沈着度合いと空間線量(といっても、当時最大で0.4マイクロシーベルト=平時の4~6倍程度)が明らかになり、住宅価格に影響が出た。

 原発事故後、千葉県内の地価は、液状化現象で甚大な被害を受けた同県浦安市と並び、柏市の下落率が最も高かった。特に、当時高い線量と騒がれた柏市北部の柏の葉キャンパス付近の下落率は大きく、新築・中古、戸建・マンションに関わらず、住宅価格が値崩れする現象が起こった。

 人口流出も、顕著に見られた。原発事故直前の2011年3月には約40万6千人だった同市の人口は、同年秋から毎月数百人単位で減少が続き、2012年春には40万4千人台と短期間で2千人近くも減った。「ホットスポット」を逆手に取った「Hot☆Spots」というご当地アイドルユニットも話題になったほどだ(結局、結成には至らなかった)。

●震災後2年弱でV字回復「3つの理由」

 しかし、「ホットスポット」の逆風で、すわ「40万人の大台割れ」も噂された柏市の人口は、早くも2012年後半からは回復の傾向を見せ始める。2013年夏には、震災前の水準を回復。その後も転入超過状態が続き、2015年3月の最新データによれば、同市の人口は40万9000人と、41万人を伺う勢いで、過去最高水準を堂々更新しているのである。全国的に人口が減少する中で、柏市の勢いはとどまるところを知らない。

 一時期「ホットスポット」と騒がれた柏市の、その後の「人口爆発」には、どのような理由があるのだろうか。以下、主要なものを3つ上げる。

1)懸念された放射線による健康被害が観られなかった

 原発事故当初、懸念された放射線による健康被害は、事故後数年を経ても、「ホットスポット地域」で顕著に観られるという医学的調査が全く存在していない。更に自治体、国による除染も実施された。

 それ以上に、当初騒がれた「ホットスポット」と呼ばれる柏市の土壌汚染は、前提的にそれほど深刻なものではなく、放射線核種崩壊による自然減衰と、風雨による飛散により、当初降り積もったセシウムなどが大きく減少したことが分かった。現在、柏市の多くの地点で、空間線量は0.05マイクロシーベルトから、高くても0.15マイクロシーベルト程度と、原発事故以前の水準をほぼ回復している。

2)安心感と底値感が広がった

 このような「懸念していた放射線による健康被害」がいまのところ無いという見方が優勢になると、一時期下落した柏市の不動産価格に底値感が広がり、転入者が続出した。元来、述べたとおり常磐線沿線で最も人気のある住宅都市の一つでイメージも良いことから、値頃感が大きく広がった。

3)上野・東京ライン開通を見越した動き

 2015年3月14日には、上野・東京ラインが品川まで延伸され、常磐線沿線の柏、松戸、流山、我孫子、取手などの通勤圏が一挙に東京の西部にまで拡大した。この、上野・東京ラインの品川延伸は従前からデベロッパーなどが積極的にアナウンスしていたので、これを見越して買いが広がった。常磐線が東京西部を開拓するとすれば、総武線の沿線である市川・船橋と同等となる。しかし、この2市よりも元々地価評価が低いため、将来期待を含めてお得感が広がった。

●流山市も「人口爆発」

 このような理由から、震災までの水準を完全に回復し、更に上昇を続ける柏市のような現象は、常磐線沿線の地域に広く観られる現象だ。

 柏と同じく、「ホットスポット」として騒がれ、同じように地価下落と一時的な人口流失があった流山市も、すぐに震災前の水準を回復した。併せて「子育て・育児に優しいまち」を前面に押し出した市のイメージ戦略が奏功し、2014年には史上初めて総人口が17万人を突破、市内に田園が多く残り、未だ開発余地が多いことから急速に宅地化が進み、同じく「人口爆発」と呼べる状況が続いている。

 これからマイホームを購入する、或いは子育てを始める予定の若いファミリー層向けに手頃な、2000万円代後半から3000万円台前半で購入可能な車庫付き新築一戸建てがごろごろ存在する柏や流山、我孫子、松戸は、都心通勤者の定住選択の重要な候補として、ますます注目されることが予想される。

古谷経衡(ふるや つねひら)
評論家 1982年札幌市生まれ。
主な活動:インターネットとネット保守、マスコミ問題、若者論などについての執筆・評論活動など。著書:『欲望のすすめ』(ベスト新書)、『知られざる台湾の反韓』(PHP)、『もう、無韓心でいい』(WAC)、『若者は本当に右傾化しているのか』(アスペクト))、『反日メディアの正体』(KKベストセラーズ)、『クールジャパンの嘘』『ネット右翼の逆襲』(ともに総和社)など多数。



関連
汚れた日本も好きでいて (第34回)
所謂「イスラム国」の壊滅は案外早いかもしれない (第33回)
「小学校授業で遺体画像」は勇気ある教育だ (第32回)
エヴァ・イヤーがやってくる! (第31回)
非モテの地獄「日本型クリスマス」は是か非か (第30回)

出発:

到着:

日付:

時間:

test