慶應評議員選挙 1回生国会議員が異例の立候補
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スルガ銀元会長やリニア談合「大林組」会長の名も

長谷川 量一 (ジャーナリスト)(News Socra)

スルガ銀元会長やリニア談合「大林組」会長の名もの記事画像

Reuters

 オリンピックではないが、関係者には4年に1度のビッグイベントなのだ。慶応義塾の最高意思決定機関「評議員会」のメンバーである評議員約100人の3割、30人の「卒業生」枠の選挙のこと。56人の候補者が「名誉」を賭けた票の争奪戦を繰り広げている。とはいえ、基本的に立候補者は理事会推薦で、落選者の「敗者復活」の道もあり、最終的にほぼ全員が評議員になる仕組みで、「出来レース」の声も出る。ただ、今回は理事会推薦なしに推薦人100人以上を集めて若手国会議員が立ち、ちょっとした波風が立っている。

 同選挙の有権者は塾員(慶応OB)で、同窓会である「三田会」の会員約35万人のうち住所不明の人などを除き、30万人近くになるというから、ちょっとした市議選並みの〝大型選挙〟だ。6月末に候補者推薦締め切り、8月中に自宅に投票用紙が郵送され、はがきの投票用紙に投票する候補者名のほか、自筆署名をして返送する仕組み。10月1日締め切りで、同31日に新評議員が発表される。

 ただし、単純に選挙だけで決まるわけではない。慶応の評議員の選出の仕組みを説明すると、評議員は95人以上101人以内で、4種類ある。

1)教職員評議員(15人以上16人以内、義塾内の各組織から選出)
2)卒業生評議員(28人以上30人以内、塾員による投票により選出)
3)推薦評議員(24人以上25人以内、前期の評議員会により選出)
4)塾員評議員(28人以上30人以内、(2)(3)の評議員が「有為の人物」を選出)
今回の選挙は(2)を選ぶもので、当選枠は30人。ただ、落選者も(4)の枠で救済される。立候補56人のうち30人の当選枠に入れない26人も、(4)の28~30人に収まるので、全員が評議員になる可能性は十分。ちなみに、(3)は財界人らが名を連ねるが、(2)で当選を重ねた人の中から、無投票に〝昇格〟するケースが多く、今回も岩佐弘道(三井不動産)、上原明(大正製薬)、大橋洋治(ANA)、岡素之(住友商事)、加賀見俊夫(オリエンタルランド)、高木茂(三菱地所)、茂木友三郎(キッコーマン)、渡辺捷昭(トヨタ自動車)、渡文明(JXTG)の各氏ら大企業トップ経験者がズラリ並ぶ。

 投票結果(当選者)は一般には発表されず、新たな全評議員をネット上で公表するだけ。ただ、学内には掲示されるという。落選しても「敗者復活」があり、実質的に無競争当選に近いが、選挙での当選が名誉。当選ラインは定かではないが、「3000票が最低ライン」と見る向きが多く、「1000票ないと、さすがに敗者復活もない」とささやかれる。かつて、企業ぐるみ選挙が話題になっただけに、慶應の選挙案内文書やホームページには「お願い」として、「卒業生評議員選挙における行き過ぎた集票行為に対して,品位を欠くものであるというご批判を頂戴しております。塾員のみなさまにおかれましては,投票用紙の譲渡は禁止されているということをあらためてご確認ください」との注意書きもあるほど。このため、表立っての派手な運動は影を潜めたようだが、総務部などが投票用紙を集める企業はいまもある。

 ちなみに、大企業では社内に「三田会」が組織されており、候補と社内三田会の会員数を見ると、例えば東京海上日動・永野毅氏・1500人▽三菱UFJ銀行・沖原隆宗氏・1000人▽丸紅・浅田照男氏・675人▽味の素・伊藤雅俊氏・269人、中部電力・勝野哲氏・230人といった具合(数字は連合三田会ホームページ)。いわば、基礎票ともいえるものだ。

 また、過去、不祥事を起こした企業トップの動向が話題になった。古くは1982年9月、「三越事件」で社長を解任され「なぜだ」の一言が有名になった故・岡田茂氏が解任翌月の評議員選挙で落選した(岡田氏はその後、特別背任などで逮捕され有罪)。また、前回2014年は福島第1原発事故時に東京電力の社長だった清水正孝氏が立候補し、ネット上で話題になったが、再任されなかった。選挙結果は不明だが、最終的に本人が辞退したといわれる。

 今回の候補者には、スルガ銀行の岡野光喜会長(73)がいる。創業家の出身として30年以上もトップに君臨するが、不適切融資問題で批判を浴び、引責辞任の意向と報じられている。もう一人、大林組の大林剛郎会長(64)も、大林組がリニア談合に連座し、事件の公判が続いている。社内三田会はスルガ銀53人、大林組118人と、基礎票は厚くはない。選挙での当落はもちろん、「塾員評議員」に推されるか、また推された場合も就任を辞退するか否か、関係者は注視する。

 さらに、今回の選挙では、特に注目を集めるのが高村正大衆院議員(山口1区)だ。2017年秋の総選挙で、父の高村正彦自民党副総裁の後を継いで初当選を果たしたばかりの1回生で、年齢も47歳と若い。評議員候補は、理事会が「50名以上60名以下の範囲内で推薦する」ほか、「塾員100名以上150名以下」の推薦人を集めれば立候補可能だが、現実にはほとんど例はない。それが今回、高村氏は134人の推薦人を集め、ただ一人、理事会の推薦なしで立候補した。国会議員で慶応OBといえば大島理森衆院議長(71)以下、そうそうたる顔ぶれがおり、かつて、綿貫民輔元衆院議長が評議員を務めた。そこに、1回生議員が立候補したとあって、永田町でもちょっとした話題になっている。大島氏から思いとどまるよう説得しようという話もあったというが、止められなかった。

ちなみに、高村氏の地元の山口からは斎藤宗房・山口トヨタ自動車社長が立っていて、地元の三田会は斎藤氏一本で選挙戦を戦うという。高村氏が当選するか、また、落選した場合でも「塾員評議員」に推されるか、こちらも注目だ。

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