中露米は南北統一望まず、現状維持という現実直視を
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【舛添要一の僭越ですが(110)】南北首脳会談、文氏は米朝の仲介役をめざしたが

舛添 要一 (国際政治学者)(News Socra)

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Reuters

 9月18,19両日、平壌で南北首脳会談が開かれ、2日目の会談の後、共同声明が発表された。共同記者会見で、文在寅大統領は「南北は朝鮮半島の全地域で戦争を起こさせるあらゆる脅威をなくすことで合意した」と述べ、「朝鮮半島の完全な非核化は遠くない」と強調した。

 金正恩委員長は、「朝鮮半島を核の脅威のない平和の地にするために、積極的に努力することにした」と明言した。

 文在寅によれば、「南北は初めて非核化への方策で合意」し、「北は東倉里のミサイルエンジン実験場やミサイル発射台を関係国の参加の下で永久に閉鎖することにした」と説明した。さらには、「アメリカが相応の措置をとれば、寧辺核施設の永久廃棄のような追加措置も講じる」という。

 金正恩委員長は、首脳会談後の記者会見で、「早い時期にソウルを訪問することを約束した」と話している。2032年の夏季五輪を共同で誘致するために協力することも決められた。

 「平壌共同宣言」署名式に続いて、韓国の宋永武国防相と北朝鮮の努光鉄人民武力相が軍事的緊張緩和に向けた合意書(「歴史的な板門店宣言の履行のための軍事分野合意書」)に署名した。

 6月の歴史的な米朝首脳会談の後、世界が期待したような成果は現れていない。北朝鮮の非核化は進んでおらず、そのため北朝鮮に対する制裁解除も行われないままである。

 金正恩委員長は、確かにミサイル発射実験は行わなくなったが、アメリカが要求するCVID(完全、検証可能、非可逆的な非核化)は実現していない。これでは、制裁解除は不可能であり、アメリカは国連加盟国に制裁の継続を要請している。

 北朝鮮は、米朝首脳会談というカードを切ったのに、何らの見返りもなく、失望している。中国やロシアは、制裁を実質的に解除する動きを見せており、アメリカと対決する姿勢を示している。

 このような状況下に南北首脳会談が行われたのであり、文在寅大統領としては、アメリカと北朝鮮の仲介役を果たすことを狙ったのである。しかし、仲介役以前の問題として、南北間の約束もまだ履行できていない状況である。

 4月27日には第1回目の南北首脳会談が板門店で開催されており、そこで合意された板門店宣言には、朝鮮戦争の終戦宣言を年内に出すこと、北朝鮮の鉄道と道路の現代化を早期に実現させることが明記されている。

 文在寅大統領は、韓国の四大財閥首脳など17人の経済人を随行させており、制裁解除後の南北経済協力の準備を開始する姿勢を見せた。

 しかし、終戦宣言はアメリカが同意しなければ不可能であり、また経済支援は対北制裁に違反するとみなされるため、いずれも前に進んでいない。アメリカは、今のところ「相応の措置」、具体的には終戦宣言と制裁緩和を行う可能性は低く、文在寅大統領の仲介努力は実を結びそうにない。

 平壌では大量動員された市民が文在寅大統領夫妻を熱烈に歓迎し、統一旗を振り、「祖国統一」を叫んだ。民族統一を願う気持ちはよく分かるが、それは容易には実現しそうにない。

 朝鮮半島の分断は、ドイツ、ベトナムと同様に、東西冷戦の産物である。

 ドイツはヘルムート・コール首相が、ベルリンの壁崩壊という東西冷戦の終結を、最大限に使って実現させた。テルシーク首相補佐官と私は懇意にしていたが、ボンの首相官邸や自宅で会ったときに、モスクワに何度も行って統一の準備をしたことを教えてもらった。ドイツのケースは、ソ連邦の敗北がもたらしたものである。

 ベトナム統一は、逆に北ベトナムが南ベトナムとアメリカに勝利したことにより実現したものである。アメリカがベトナム戦争に疲れ切り、国内の厭戦気分もあって、ベトナムから手を引いたからである。

 朝鮮半島は、このいずれのケースとも異なっている。韓国の同盟国、アメリカは強力であり、また北朝鮮を支援する中国やロシアも弱体化するどころか強くなっている。

 中国は、GDPで世界第二の大国となり、いまや世界の覇権をアメリカと競っている。ロシアは、ソ連邦の崩壊から立ち直り、プーチン大統領の指導の下、クリミア併合に見られるように過去の大国を復興させる道を歩んでいる。

 しかも、この三つの大国のいずれも、現状では朝鮮半島の統一を望んではいない。アメリは韓国による統一、中露は北朝鮮による統一を望んでおり、その両者の妥協が困難である以上、現状維持というのがベストなのである。

 ナショナリズムや民族至上主義(エスノセントリズム)の呪縛を解いて、一民族が複数の国家を持つことが悪ではないことを冷静に認識したほうがよい。

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